都市計画道路に分断された昔の那覇の盛り場「桜坂社交街」を歩く

那覇市

沖縄には本土ではあまり使う事もない独特の言い回しがあれこれある。夜の街を「社交街」と呼ぶ言い回しもそうだ。那覇をはじめ沖縄の色んな街にはスナックが密集する社交街が点在している。その中でも那覇中心地のマチグヮーに隣接する「桜坂社交街」は戦後から夜の街の代名詞として有名な場所だった。

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アーケード街が連なる平和通りのマチグヮーから外れた所に桜坂社交街へと続く桜坂通りの入口がある。地名の通りにいきなり結構な上り坂が控えている訳だが桜の木はどこにも見当たらない。

戦後近い1952年に桜坂劇場の前身となる桜坂琉映(珊瑚座)の当時の館長が劇場の前に桜の木を植えた事が桜坂の地名の由来になっているらしいが、その名残りはどこにも見られない。

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とはいえ今訪れても盛り場といった雰囲気は皆無で、人通りも少ないうらびれた場所となっている。桜坂通りが夜の街として栄えたのは1960~70年代だったらしい。戦後の那覇の盛り場は神里原社交街に始まり、次いで桜坂や栄町、波の上や泊(前島)などが栄えていった。

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桜坂通りの坂道を登りながら周囲の街並みを見ると、気持ち程度にスナックやら飲食店らしきものが点在している。それにしても多いのが自販機の数々。500ミリ缶「霧の紅茶」を大量に揃えたUCCの自販機が多いのは沖縄独特だ。

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街角にひょんに置かれた看板もいちいち個性を放つのが沖縄の街歩きの面白い所。個人経営のファッション系の専門学校ですかね。無料講習会で作る服がかりゆしウェアというのがまた沖縄臭全開。

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街角の何気ない電柱の一つ一つまで気になるのが沖縄の街歩きの奥深い所。3LDKの駅前マンションが1800万円というのが沖縄価格。土地の値段はとっても安いさ~。

その下には謎の落書き「中傷クズゴミデッチアゲ」。沖縄本島各所でかなり以前から電柱にこうした落書きが多数目撃されているらしい(→詳細)。マスコミ批判の意思ではないかと色々と説があるが意味不明。

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桜坂では近年夜の街というよりも若者向けな感じの店が増えたり桜坂劇場自体も随分綺麗になって様変わりしたようだが、坂の途中にある平識商店は50年来の老舗で桜坂が戦後の盛り場だった当時から唯一残っている店。街の生き字引たるおばぁが切り盛りしているそうだが、残念ながら店が閉まっていた。それにしても自販機だらけだなあ。

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平識商店の少し先、坂を登り切った所に随分オシャレな外観と化した桜坂劇場の建物がそびえている。

戦後の盛り場の風景を象徴していた当時の桜坂琉映館(後にシネコン琉映)が2005年に閉館、その後に今の建物に建て替えられ、ミニシアター中心の映画館だけでなく沖縄文化発信基地的な意味合いで若者が集まる感じの場所に生まれ変わっている。

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桜坂劇場の先が、かつての盛り場の中心だったはずの桜坂中通り。今来るととんでもなく残念な光景に変わっていた。怪しげなスナックだらけの横丁は片側がごっそり削られていて新しい道路が絶賛建設中。完成の暁には万年渋滞道路の国際通りから壺屋方面のアクセスが改善される見込みだ。

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残念な感じの桜坂中通りを跨いだ先には、戦後の米軍統治時代の名残りを思わせるクラブと思しき建物の廃墟がデーンとそびえていた。かつて夜の街を彩っていたネオンサインの看板の跡がくっきりと残る。

こう見えても桜坂界隈は米軍統治時代最大の繁華街で、数百軒のスナックやキャバレーが密集していて国際通り以上に栄えていたのだ。

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隣接するライブハウス「桜坂セントラル」は昔のキャバレーセントラル跡地を改装して最近になって出来たらしい。桜坂劇場の存在といい廃れていく一方だった桜坂に新たな風が吹き込んでいるような印象を抱かせる。

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桜坂も一時期は寂れに寂れて場末感が凄まじかったらしいが、国際通りに近いという立地条件も幸いして壊滅を免れた格好だ。東京で言う所の新宿ゴールデン街、大阪で言う所の中崎町あたりの立ち位置にある。

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桜坂セントラルの向かいにはいかにもな沖縄居酒屋が一軒。小料理モアイ…

沖縄の言葉で「モアイ」というのはイースター島の石像じゃなくて、個人や組織の人間同士でお金を出し合い順番に貸し付ける「模合」なる相互扶助システムを意味する。

月に一回模合のために知り合い同士が集まりこういう酒場で飲み会を開いたりコミュニケーションの意味も兼ねている。飲み会の口実にしたい人もいるが、ゆいまーるの精神だと言う人もいる。内地ではあまり考えられない沖縄ならではの習慣。文房具屋には「模合帳」なるノートまで売られていたりするくらい、こっちでは一般的な習慣なのだ。

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ぽつぽつ居酒屋やスナックがあるだけで、いつの間にか桜坂社交街のゲートを潜って外に出てきてしまった。このゲートも最近老朽化で素っ気ないものに掛け替えられてしまっている。

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