日本三大都市の一つらしい名古屋の玄関・名古屋駅太閤通口に残る「笹島ドヤ街」の痕跡を求めて

東京、大阪に次ぐ日本第三の都市圏と常々言われる割には観光客にあんまり相手にされないのが名古屋という街だが、その玄関口となる一大ターミナル駅「名古屋駅」の中でも「駅西」とも呼ばれる太閤通口一帯がすこぶる怪しい。

名古屋市 名古屋

十年一昔の東海地方におけるプチバブル到来、2005年開催の愛知万博も昔の話、せいぜい名古屋めしを食う為に立ち寄るばかりで観光客は素通り気味の名古屋の玄関口「名古屋駅」の新幹線乗り場に近い側の太閤通口(西口)。都会としての洗練さの微塵もない駅前風景。池袋の西口にもちょっと似てますね。

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「駅裏」と呼ぶに相応しい街並みが揃っていて一歩路地に入れば如何わしいネオンサインが輝く暗黒街、それが名古屋駅太閤通口。JRセントラルタワーズやトヨタビルなど愛知万博前後で急激な変化を見せた名古屋駅だが、名古屋の街の発展は名古屋駅を境に完全に東側に偏っており、こちら反対側はまるで裏町そのもの。そして戦後は闇市でも栄えていた。

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駅西には「あかひげ薬局」までありますし、駅裏の如何わしさ役満状態でたまりまへんな…そんな破廉恥タウン名古屋らしいゲスっぷりが容赦無いのが気に入っているのだが、今回お送りしたいのは「笹島」と呼ばれたドヤ街がこの駅裏一帯に存在していたという話。当方は2008年頃からこの名古屋駅裏一帯に広がるドヤ街の見物を始めているが、その経過も含めて付近一帯の事をまとめてみたい。

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大阪では西成釜ヶ崎、東京では山谷、横浜では寿町とあるように、名古屋の「駅西」一帯はドヤ街として発展してきた「笹島」と呼ばれていた土地。現在この界隈の地名は名古屋市中村区椿町、竹橋町及び太閤で、笹島という地名は正式な地名には使用されなくなっているが、名古屋駅南側のレジャービル名鉄レジャックがある「笹島交差点」もしくはあおなみ線の「ささしまライブ」駅に名残りを留めている。

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駅前一等地とは思えない廃れた風景を見せている潰れた大衆食堂「てるてる食堂」のイカす筆書き立て看板が壮絶。これは紛う事ない「笹島ドヤ街」の痕跡の一つであったが、長年の放置プレイの後、2013年頃には建物ごと解体されて無くなってしまった。

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ちなみにどうでもいい続報ですが「てるてる食堂」跡地はリフレ併設型メイドカフェとお下品度の高いラグジュアリー系ガールズ居酒屋の巨大広告看板スペースになってしまい萌え萌えキュン化しとるのであります。これがイマドキの名古屋嬢だがや!

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注意深く周辺のビル街を眺めると、駅裏にありがちな河合塾だの何だの専門学校だらけの予備校銀座状態になっているのはともかく「宿泊2100円」と書かれたネオンサインの付いたペンシルビルも混じっている。価格帯から見ても簡易宿泊所であるには違いない。

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簡易宿泊所は老朽化やドヤ街としての衰退もあって減少傾向だが、この辺の旅館「大松」あたりはモロに簡易宿泊所である。笹島ドヤ街の特徴として、こうした簡易宿泊所の看板に「サラリーマン旅館」とか「サラリーマンホテル」と書かれている事が多い。

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簡易宿泊所に限らず、昭和の煤けた佇まいのビジネスホテルも多いのが「駅西」の特徴。名古屋駅太閤通口周辺に複数店舗構える「スターナゴヤ」。施設は古いが宿代は5千円台とお安い。

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明治期から戦前まで木賃宿が密集していた「水車地区」と呼ばれるスラムがあったのがこのドヤ街の前身。しかし戦災で水車地区のスラムは壊滅。戦後の昭和23(1948)年に名古屋中公共職業安定所笹島労働出張所が開設され、高度経済成長期に向けて東海地方を代表するドヤ街として発展を遂げた、というのがこの地区のあらすじである。

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いきなりスプレーで街の広報板に「○す」などと落書きされているようなオッカネー場所柄なのが地味に怖い笹島地区なのであるが、しかも「殺」の字まで間違える日本語力の弱さに愛知の底知らずの底辺社会を測り知る事ができよう。愛知の底辺はマジで怖い。

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そしてこの「駅西」、戦後の闇市の時代から続く隠れた名古屋のコリアタウンでもあった。名古屋駅の南側を東西に走る太閤通沿いの名駅中駒ビルにはイオ信用組合という元朝銀系在日コリアン金融機関も入居していた。(現在は移転。とらのあなが入居)その名残りとしてホテルスターナゴヤ付近に「ナリタ」「西原商会」といった韓国食材店がある。

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太閤通の笈瀬通交差点付近にも「サラリーマンホテル」の看板を掲げる「ニュー松竹梅」「第3松竹梅」の二軒のビル型簡易宿泊所が並んでいる。ここも一泊2000円からの低価格路線。名古屋駅まで徒歩5分の立地である。

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隣が平面駐車場になっているために建物の横っ面が剥き出しになっている「第3松竹梅」。各階毎の客室の窓の間隔がものすごく密になっているあたりがいかにもドヤドヤしさを放っていて素晴らしい。こっちは一室1500円から。西成のドヤといい勝負である。

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現在の「駅西」では日雇い労働者や高齢者が大勢住み着いているような、玄関の前に自転車がズラリと並んでいるような簡易宿泊所がどんどん減ってきた。例えばこちらの「ビジネス旅館福屋」。2008年当時の写真ではこの通りのドヤドヤしい佇まいだが、現在は外国人バックパッカー向けの安宿に転身して、全然雰囲気が変わってしまっている。

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「駅西」は昔からそういった場所だったので、勿論ホームレス風の人々の姿も多く、椿神明社の境内にまでこんな注意書きが見られる程のものでもあったが、ここ最近は急激に「浄化」が進んでいるようで、大勢居たはずのホームレスや高齢者が居なくなった代わりに西成同様外国人バックパッカー向けの安宿街に変わりつつあるのが現状のようだ。もはや笹島のドヤ街は、ドヤ街である事すら忘れ去られそうな程に原型を無くしかけていると言っても過言ではない。


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