限界マイホーム・新宿まで中央線で片道80分通勤…山梨都民ベッドタウン「コモアしおつ」 

山梨県

神奈川都民、埼玉都民、千葉都民というのは東京都内に通勤する近郊の他県民を指して使われる言葉だが、世の中には山梨都民というのが居るらしい。

東京の大動脈、JR中央線に乗って都心から約1時間、高尾駅を境に中央線は山岳地帯に突入し、相模湖、藤野という神奈川県の奥座敷を抜けて、3つ目の上野原駅でもう山梨県に突入してしまう。

山梨県東部の上野原市大月市などは県都甲府市より遠く離れ、甲府盆地とは何の縁もない地域で、都心から鉄道で1時間少々で出られるベッドタウンとして、主にバブル期で都心部の土地高騰を迎えた1980年代後期からニュータウンが次々建設された。

「山梨都民」としての象徴的な存在が上野原駅の一つ先、四方津(しおつ)駅を降り立った真ん前に広がっている。高尾駅からだとわずか20分少々で来られる山梨県。同じ中央線でもこちらは「中央本線」、ラインカラーもオレンジではなくブルー。

それが四方津駅前から山の上に伸びる異様な通路が目をひくニュータウン「コモアしおつ」の存在だ。

約80ヘクタールの土地に1610戸、約6000人の人口を計画して、積水ハウスにより1987年から造成され、1991年から分譲開始されている。紛れも無くバブル期の地価高騰で少しでも安く広い土地に住もうとする住宅需要を見込んで建設されたニュータウンの一つだ。

やってくる電車も旧国鉄時代のオンボロ車両。白地に水色の山梨仕様は八王子市民くらいしか馴染みがなかろう。朝の通勤時間帯には東京駅直通の河口湖や大月発の通勤電車「特別快速」が走っているので、それに乗れば運が良ければ新宿駅までは最速1時間5分で到着する事もあるらしいが、通勤ラッシュ時は電車が詰まるので実際はもっと遅くなる。

完全に田舎の駅の佇まいを見せる四方津駅の改札はsuica対応の簡易改札になっている。

山梨県とは言え、距離的には八王子のすぐ向こうというような場所だ。近距離切符運賃表に表示されている範囲は首都圏の主要地域をほぼ網羅している。運賃は八王子までが480円、新宿までが1110円、東京駅までが1280円。八王子や立川あたりに職場があるのなら現実的には通勤可能だが、やっぱり新宿まで行くのは大変ですよ?

駅舎の外に出ると、タクシーが数台止まれるロータリーがある程度で、コンビニの一軒すらない。田舎だもの、しょうがない。

青少年の健全な育成を考えてエロ本追放白ポストも置かれています。さぞかし教育的な上野原市民ですこと。

駅前を見ると地元民の原付バイクが数台止まっている他には上野原市の案内図、「お買物は地元の商店で」と書かれた看板がある割には店の一軒もないという典型的な田舎町の風情が漂うのみ。

そんな駅前の脇から山の上のニュータウン「コモアしおつ」に続く連絡路が用意されている。その名も「コモアブリッジ」。

先を見ると結構長い歩道橋の階段の上にまだまだ連絡路が続いているようだ。やはりニュータウンがあるからか、ちょくちょくと歩道橋を行き来する人の姿がある。昼間は30分に一本しか電車が来ない田舎なので、時刻表をちゃんと見て、タイミングを測って来ている。

山の上のニュータウンとは一応エスカレーターや斜行エレベーターで結ばれているが、その手前の歩道橋はどうしてもこの階段を登る必要があるようだ。

歩道橋を登り切ると、四方津駅の全景と広大な前道志の山々が眼前に広がる。都心から1時間ちょいなのにこの大自然は素晴らしい。だがここは山梨県だ。

ようやくここで一軒の店らしきものが現れた。しかしそれは店ではなく公文の教室。山梨都民の生活の場は、やはり山を登ったニュータウンの中にあるようだ。

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