昭和の時代にブームを巻き起こした高原リゾートの厳しい現実だヨ!山梨県北杜市「清里」のファンシーな廃墟を見てネ

山梨県

<1ページ目を読む

山梨県北杜市 清里

かつて清里がバブルに湧いた時代の面影は、清里駅前から西側、清泉寮方面に少し歩いた側にある土産物屋街の残骸に見られる。この一帯は1970年代に始まるマスメディア主導の「清里ブーム」に乗じて流行の最先端にある「高原の原宿」として持て囃されてきた。中でも昭和46(1971)年にアンアンやノンノといった女性誌でしきりに清里がトレンドとして取り上げられて以降、観光客が殺到する場所になった。

山梨県北杜市 清里

「清里ブーム」到来時に続々建設されたパステルカラーのメルヘンチックな洋館風土産物屋が建ち並ぶ街並みはそのままに、どれも廃業した店舗ばかりになっているというのが現状、こうした店舗は「お菓子の家」だとか呼ばれていたらしいですが…

山梨県北杜市 清里

中でも注目したいのが潰れたおみやげ店の軒先に「FANCY」「ファンシー」の文字が記されている事。昭和の女子がこよなく愛した時代遅れの「カワイイ」が詰まった、懐かしのファンシーグッズの数々、その流行の発信源がここ清里にあったという事だ。

山梨県北杜市 清里

ファンシーショップの残骸に寂しく佇む、ファンシーなデザインの牛さんキャラクターの置き物が何とも言えない哀愁を漂わせていた。モーたまりませんね!

山梨県北杜市 清里

昭和50~60年代と言えば、まだそれほど海外旅行も一般的ではなく、欧米文化もストレートに入らずに日本的に妙なフィルターが掛かってズレたセンスで受け入れられていた頃なので、ボーダーレスな現代人から見れば滑稽にも思えるだろう。ド派手な外壁のメルヘンハウスも喫茶店だったらしいけど開いてないし。

山梨県北杜市 清里

このファンシー土産物通りの並びにひときわ目立つ「ミルクポット」型の元喫茶店、その名も「MILK POT」。清里ブーム全盛期には記念撮影のメッカとなっていて、清里駅から延々とこの場所に向けて撮影待ちの長蛇の列ができていたというのが到底想像も及ばない。今では隣にある蕎麦屋やら何やらも含めてまとめて閉店したままになっている。夏限定営業かと思ってストリートビューでも確認したが、草ボーボーのままになっているし、やはり営業はしていないのか。

山梨県北杜市 清里

清里名物だったはずの「ミルクポット」も数年程前から営業を辞めてしまっているようであるが、80年代をリアルで体験している世代としてはこのミルクポットにもある種のデジャヴを覚えてしまうのである。実はこのミルクポット、鳥山明先生の漫画「Dr.スランプ」に出てくるポット型の喫茶店のモデルになった建物だという。地元の夏祭りの盆踊りで「アラレちゃん音頭」が掛かっていたり当時のアニメの再放送とかを見ていた世代の人はピンと来ませんかね。

山梨県北杜市 清里

テレビアニメ化された「Dr.スランプ アラレちゃん」が大ヒットした事で、このメルヘンでファンシーな流行の最先端であった「清里」もリアルペンギン村だとか呼ばれていた事もあった。今時「バイちゃ!」とか「おはこんばんちわ!」とか言おうものなら死語どころか普通に引かれるだけだよね。昭和は遠くなりにけり。

山梨県北杜市 清里

メインストリートから外れた所にも土産物屋の残骸があって、こちらも錆びついて屋根まで取れてしまった外階段が生々しい。とっくに廃墟なのは見ての通りだが、注目したいのは屋上に掲げられた看板だ。

山梨県北杜市 清里

「おみやげは…ぬいぐるみが一番ヨ!星の王子さま」

語尾がカタカナの「ヨ」である。これぞ最も昭和の言語感覚が見事に残された物証ナリ。語尾をカタカナにするだけでこんなに昭和臭が滲み出るのはなんででしょうネ。

山梨県北杜市 清里

三階建ての土産物店「星の王子さま」も外観はこの通り、荒れ放題で気の毒としか言えない状態になってますネ。ここで売ってたファンシーなぬいぐるみ達が飾られた部屋に住んでいた女の子も、思えば今では40代後半から50歳近くになっているのかと想像すると目頭が熱くなるヨ。

山梨県北杜市 清里

「Dr.スランプ」とあと一つ清里ブームに影響をもたらしたのが「恋のバイブル」とまで呼ばれていた吉田まゆみ氏の少女漫画「年下のあンちくしょう」(厳密には続・年下のあンちくしょう)に出てくる主人公と恋人の清里への旅行シーン。ユーミンの「中央フリーウェイ」の歌詞をバックに中央自動車道で清里に向けてかっ飛ばして、喫茶店「MILK」で一服して清泉寮に一泊するという流れで、これを真似するリア充カップルが当時続出したとか何とか。それも昭和52(1977)年に発売された漫画のお話で、そんな若い恋人達も今では50代後半から60代になっている。

山梨県北杜市 清里

当時の憧れだったはずの喫茶店MILKもとっくに現存せず(跡地は「パスタと肴 MoRimoTo」になっている)、ファンシーストリートは相変わらず潰れた土産物屋ばかりで泣けてくるのである。お父さんお母さん達のものとなっているだろう青春の一コマの残骸をひたすら見る羽目になるのだ…切ない…

山梨県北杜市 清里

唯一そんな寂しいファンシーストレートで営業している土産物屋「ピッコロ清里店」の軒先には「清里高原診断」なるものが…昔の観光地にこういう変なおみくじいっぱい無かったですか?血液型と性別、誕生月で細かく区切られた「くじ」を1枚100円で引いてみたが…あんまり当たってなかった…

山梨県北杜市 清里

それよりも土産物屋がエンドレスで流し続けている松任谷由実のベストアルバムのBGMがこの場所の哀愁を最大限に高めてくれる。ユーミンの何の曲かと思ったら「雪だより」(1980年)だった…この場所は、清里が「高原の原宿」として栄華を極めた80年代から止まったままになっているのだ。

山梨県北杜市 清里

栄枯盛衰の「枯」と「衰」しか見られない若い世代にとっては滑稽で時代遅れなメルヘンの聖地にしか見えない場所だが、現役を知る40代以上の中年世代にとっては想い出の場所でもある。これでも80年代あたりは休日にやってくると人混みで溢れかえるような状態だったというのだ。

山梨県北杜市 清里

昔も今もブームはメディアによって作られる。アンアンやノンノなどの女性誌で取り上げられ、メディアが主導するブームに乗ったバブルに湧いた時代の遺物…1990年代以降はじわじわと衰退が進み、2010年頃になるとこうした廃業店舗だらけになったようだ。そしてここにも「ファンシーショップ」の看板が。昔も今もブームはメディアによって作られる。

山梨県北杜市 清里

しつこく言うけど、別に冬季休業中だから閑散としている訳ではないんですよ。夏場もさほど状況的には寂れっぷりは変わらない、という証言を地元の方からわざわざ聴きました。清里駅前に広がるファンシー王国の復権は叶うのか…

>3ページ目を読む


タイトルとURLをコピーしました