大津波にも負けない宮城県石巻市・猫だらけの島「田代島」上陸記 

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猫だらけの島「田代島」の中でも猫がとりわけ多いのは島の南側にある仁斗田集落だけである。島の北側の大泊集落は規模も小さく猫もあんまり居ないらしいのだが、この2つの集落を結ぶ唯一の生活道路が存在する。仁斗田集落からその道沿いに登っていくと途中に「阿部ツ商店」と書かれた食料品店の建物が現れる。これが恐らく田代島唯一の食料品店と思われる。

阿部商店でなくわざわざ「ツ」の一文字が入っているのは、やはり島民の苗字に阿部さんが多いからなのか。そもそも宮城県自体阿部姓が非常に多いのだが、とりわけ石巻周辺は阿部だらけ。

…で、この阿部ツ商店の前が田代島で最も猫出没ポイントとなっている場所。やっぱり食い物ある場所に猫はいるもんだ。絶えず店の前に5匹くらい猫がたむろってます。ゴロニャ~ン。

阿部ツ商店の前に人が寄り付くといつの間にやら猫の集団に取り囲まれる事となる。10匹以上になる事もザラ。たちまちネコちゃんのハーレムと化す。ウハウハですなお父さん。たまりまへんな!

猫がいくら可愛かろうが間違っても無断で勝手に餌付けしてはならない。猫の食事は島民がきちんとコントロールしているからだ。猫の為を思えば一緒にじゃれるくらいに留めておこう。

中にはこんなチビ猫もいる。猫は島内で勝手に繁殖していくので、この度の震災で一時的に減っていようともすぐ元に戻るだろう。

「人の道も行いも神は見ている 聖書」ってキリスト看板にも書かれてるし。人間は傲慢な生き物である事を自覚しておこう。っていうかこんな離島にまでキリスト看板が貼り付けられてるなんて一体…

それはそうと「ネコと和解せよ」と改変されてるキリスト看板がネット上に出回ってるよな。実にどうでもいいが。

阿部ツ商店の前を離れて島の高台にある猫神社に向かおうとするも後から後から猫はついてくる。おいお前ら、いくら懐いても餌はやらんぞ。

そして猫の集団が現れるとドサクサ紛れに現れるのが真っ黒なカラスどもだ。こいつらは猫の餌を横取りするばかりか弱い子猫やさらに身体の弱った成猫をも食い殺す。田代島の猫達も野生に生きてるんだからそれも宿命。

田代島の猫は特に避妊していないそうだがそれでも個体数が増えたりしないのはカラスが天敵となっているからだろう。

山道を登り仁斗田の集落を外れる。その先には島で唯一の小学校だった石巻市立田代小学校の建物が残っている。この学校は1989年に島の人口減少の為廃校となってしまった。建物も取り壊されず20年以上放置されている模様。

草木にびっしり覆われた田代小学校の敷地内。中は荒れ放題になっている。何よりも田代島には子供の姿が全くない。もし子供が居ても小学校に行く時点で船に乗って他の島か石巻市街地に出る事になるのだろうか。ともかく限界集落の現実を見せつけられた。

小学校の建物は一部が石巻市の田代島自然教育センターという施設に転用されている。石巻の街から小学生が島に渡ってきて林間学校やらレクリエーションをやるために使っていた場所らしいがここも老朽化により廃止されているそうだ。一応ここが島民の緊急避難場所に指定されている。

小学校の廃墟を後にした、島の北側の大泊集落寄りの場所に「猫神社」がある。一応このへんが島で一番標高の高い場所(海抜96メートル)らしい。

何より田代島が猫の島となっているのは猫が「猫神様」として祀られているからである。肝心の猫神社自体もそれこそ猫の額のように小さい神社でうっかり見過ごしてしまいそうな程だ。

神社の傍らに猫神社の由来が書かれた案内板が設置されている。

大謀網漁が盛んだったこの島では島民が大漁か不漁かを猫の行動の違いで判断していたらしく猫が珍重されていた。大謀網作りが始まる毎年春先頃は島外からも漁師が駆けつけ島の各所に番屋が置かれそこに漁師が住み込むと食事のおこぼれを貰う猫も集まるようになり、猫と人間の関係が深くなる。

ところがある日、島の漁師が大謀網の重しとして使う岩を砕いている最中に崩れた岩に猫が当たって死んでしまう。それに心を痛めた網元は死んだ猫を悼み丁重に葬ったところそれ以後海難事故も起きなくなった。その猫がやがて猫神様として祀られるようになった。

今でも毎年3月15日に行われる祭事では猫神様にマグロを備えるという神事が続いているそうだ。

そんな訳で今も島の守り神になっている田代島の猫神様だが現在は猫好きな島外の観光客が置いた猫の置物だらけとなっていて肝心の島民は猫嫌いが多いという変な状況になっているようだ。

限界集落と化すこの島もそのうち猫しか住まない島になってしまいそうな勢いだが、震災にも負けず観光客の受け入れもじわじわ始まっているので機会があれば訪れて欲しい。


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新日本DEEP案内およびDEEP案内シリーズ管理人兼編集長。2007年「大阪DEEP案内」開設、2008年「東京DEEP案内」開設、2009年「日本DEEP案内」開設、2010年「世界DEEP案内」開設、2013年「新日本DEEP案内」開設。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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