小高い山の上に蕪嶋神社が建つ、その周囲ではウミネコの大群が我が物顔で島を占拠しているのである。この光景が見られるのはウミネコが繁殖のシーズンを迎える2月下旬から8月くらいまでと言われている。
鳥の大群が居ると、脊髄反射のように「ヒッチコックの鳥だ!」と言う人がいるが、今どき「鳥」が映画で、ヒッチコックが映画監督だと知らない世代も居たりして。
金網越しにすぐ向こうではウミネコさんが毎日の生活を送っていらっしゃいます。目の前に人が居ても我関せずといった態度である。
ウミネコが人前に出てきても全く警戒せずにのほほーんとして居られるのは、島全体が鳥獣保護区になっていてウミネコを優しく護ってあげているからだ。鳥もちゃんと学習能力があるわけで、蕪島なら安心して子育て出来るよとみんな知っているのである。
建前上エサを与えるなと注意書きがされているが、近くの観光遊覧船や土産物屋では「ウミネコはかっぱえびせんが好物だ」と言う事で平然とおやつが与えられていたりする。
我々の足元真ん前まで近づいても警戒する素振りもなくニャーニャー鳴くウミネコさん。近くに寄ると結構でかい鳥だという事が分かる。
そろそろ蕪嶋神社の方へ向かおうと階段を登り始める。訪れたのが午前5時半とかなり時間も早かったので、我々以外に参拝客の姿はなくウミネコの声だけがうるさく響いている。
蕪嶋神社の境内に入るという事はウミネコ達のテリトリーに入るという事を意味する。とにかくウンコを落とされないように常に気をつけていなければならない。鳥の糞ではなく「うみねこバクダン」ですか。
階段の上にもあちらこちらにウミネコの姿が。蕪島ではウミネコは神の使いであるそうだ。
人間にはほとほと慣れきった様子のウミネコ達だが、人間以外の動物は苦手である。ウミネコを恐がらせない為に犬猫は島内に入れてはならない。
元々から商売繁盛のご利益がある蕪嶋神社はウミネコ神社としてだけではなく、「蕪」と「株」を掛けて株価上昇のご利益授かろうという参拝者ににわかに知られている存在で、神社では「かぶあがりひょうたん御守」というえらい俗っぽいお守りが売られている。
神社参道の階段中程に蕪島ウミネコ繁殖地についての説明板が置かれている。ウミネコのいる場所に魚群の存在あり、昔からウミネコと漁師は共存共栄してきたのだ。
階段を登りきると、その先には2羽のウミネコさんが上下になってパタパタとせわしない。もしかして「お取り込み中」だったのか。大胆ですこと。