JR仙台駅南西、南町通りと東二番丁通りの交差点南東角一帯に戦後のドサクサで作られたという飲食店街が残る場所がある。その名も「仙台銀座」。
仙台銀座と聞いてどんなきらびやかな夜の街なんだろうと期待を込めて行ってしまうとそのあまりの殺風景さに脱力してしまうこと必至。どう見ても歓迎ムードゼロな「歓迎 仙台銀座」のアーチを目にして思わず笑ってしまった。
仙台銀座の飲食店街は青葉区中央3丁目9~10のわずか50メートル四方の一角に十数店舗程度が固まっているのみ。
すぐ近くにある仙台朝市と同じく戦後の混乱期に飲食街が形成された名残りだそうだが、その後は国分町などに繁華街の中心がシフトしてしまい、まるでこの場所だけが昭和の残滓を引きずっているかのような街並みを見せる。
人通りが絶えない一番町や国分町とは打って変わって全く活気というものとは縁の無い場所となっているが、昔からの店が多く、店の数々は長年の常連客に支えられているとか。観光色の皆無な杜の都仙台の夜の素顔である。
中には、既に営業している様子もない店もちらほらとある。時代を感じさせる「とんかつ澤桜」の看板。
薄暗い飲食店街の建物と建物の間を見ると、人々の営みが繰り返され積もった澱のような空間が垣間見える。東北最大の巨大ターミナル仙台駅から徒歩5分、そこは決して日の当たらない都市の陰である。
国道4号沿いに建つオフィスビルの影に隠れて走るL字型の路地には若干趣きのある建物が残っている。そこには所謂「隠れ家的」な飲み屋が数軒。
建物脇にやけに小さく窮屈な勝手口の開き戸がある。特にこの辺は昭和の雰囲気が強い。もしかすると昔の一時期には色街として栄えた時期があったのかも知れない。
そんな直感を裏付けるように現れたのは、まるで東京・玉の井で見かけるような遊郭建築のそれと見紛うような造りの2階建て店舗。
その1階にはやけに可愛い系な絵が飾られた「ホルモン居酒屋ブータン」が入っている。怪しさよりもお洒落サブカル的な空気が先行する。
国道4号に出る側の路地に入るとかなり寂れた雰囲気が漂う。バーの隣は無残に空き地と化している。
さらにもう一軒、ちょっと洒落た感じの小料理屋が現れるがここも営業している様子はない。
変だと思って店の玄関口を見てみたらこんな張り紙が。店主が入院しちゃったらしい。個人事業主は大変なのだ。病気入院すると商売もあがったりで踏んだり蹴ったりだ。
しかし店の軒先に置かれた看板の上にこれ見よがしに放置されたこの本の存在は一体何なのだろうか。ついページを見開いてしまった取材班。銀座と名乗るにはいささか俗っぽさが強い仙台銀座の街並みでした。