八戸から下北半島方面に車を走らせると、その途中に上北郡六ヶ所村がある。その村の名前は青森を知らない人でも一度くらいはニュースでも耳にした事があるはずだ。日本で唯一核燃料サイクル施設が存在し、核のゴミが捨てられていると言われている場所だ。
6つの集落が合わさった事から六ヶ所村の地名が付いているが、その中心は核燃料サイクル施設が間近に広がる尾駮沼東側にある尾駮(おぶち)集落である。
尾駮地区の入口のコンビニに車を止めると、そこには案内図の看板が置かれていた。この一帯は「尾駮レイクタウン」と称され、日本原燃や関連企業の職員が生活する住宅や商業施設、体育館などが整備されていて、傍から見ると郊外型ニュータウン的な街が作られている。
高度経済成長期にむつ小川原開発計画という国策がきっかけで作られた街であり、同じレイクタウンでも越谷レイクタウンとは大違いである。
このニュータウンも国家プロジェクト「むつ小川原開発地区」の一部であり、核燃料サイクル施設や国家石油備蓄基地などのエネルギー関連施設が密集する六ヶ所村の財政は原燃の莫大な固定資産税などで非常に恵まれている。尾駮レイクタウンをはじめ村内公共施設は他の村と比べるとかなり立派だ。
尾駮沼の北側に日本原燃の「六ケ所原燃PRセンター」が建っている。見ての通りお子様にも分かりやすく核燃料サイクル施設について理解を深める為の施設だ。
原燃PRセンターの玄関。既に親子連れでいっぱいになっている。
日本各地の原子力発電所のそばにもよくこの手のPRセンターがある。そしてこういう場所は例に漏れず入場無料である。
玄関脇に注意書きが示されている。さすがに場所柄という事だろうか。「集会、ビラ配布、またはゼッケンを着装するなど」の行為はお断り。こんな場所まで遠路はるばるプロ市民の皆様がお越しになられるようだ。
日本の国策によって作られたある意味象徴的な場所だからか、プロ市民にも縁の深い場所が六ヶ所村なのである。
PRセンター内はいかにもな作りの子供向け科学館的なアトラクションになっている。ビジュアル的に分かりやすく核燃料サイクル施設について学習できます。
六ヶ所村には日本全国の原子力発電所から持ち込まれる放射能を含んだゴミなどの低レベル放射性廃棄物と、使用済み核燃料である高レベル放射性廃棄物の二種類の放射性廃棄物がそれぞれ違った方法で貯蔵されている。
平たく言えば核のゴミ捨て場になっているという事だ。
現在こうした施設があるのは六ヶ所村のみとなっているが、日本全国財政難に喘いでいる自治体が、補助金目当てに核廃棄物処分場の誘致合戦を行っているという話も聞く。
PRセンターの3階にある展望台から、六ヶ所村の核燃料サイクル施設の数々を眺める事が出来る。施設の殆どは尾駮沼の西側一帯に集められていて、それらの位置関係が地図に示されている。
展望台からも核燃料サイクル施設の全貌が遠目に見渡せる。今では日本の総電力量の3割を原子力発電で賄っている。日本だけでなく諸外国でも同様の傾向だ。
つまり我々が毎日使っているパソコンも3割が原子力で動いている訳で、核エネルギーに反対のプロ市民の皆さんの暮らしの3割も原子力の世話になっているのだ。もうどうにも止まらない。
六ヶ所村をはじめ下北半島の中程では原子力だけでなく風力発電もかなり盛んで、展望台から数十基程の巨大な風車を目にすることが出来る。原発銀座ならぬ風力発電所銀座である。
展望台の西側を見ると大量に巨大タンクが並んでいるのが見える。むつ小川原国家石油備蓄基地である。石油資源を自給できず海外からの輸入に頼る日本が石油需給量の変化に備えるため日本全国に備蓄基地を置いているのだ。
六ヶ所村の備蓄基地にある石油は490万キロリットル。もし日本が一切石油の供給を打ち切られた場合、この備蓄基地の石油から賄える期間は、あれだけ大量に巨大タンクが並んでいるのに、わずか1週間分。かなり愕然としちゃう。
水と平和はタダだなんてクソ呑気に暮らしている平和ボケの日本人ではあるが、平時においても国家的な現実に気付かされる貴重な場所が六ヶ所村なのだ。青森旅行に来たら一度くらいは見に来ておいて損はないだろう。