絶海の孤島「南大東島」スペシャルレポートの続編。今度は在所集落を離れて南大東島を一周しながら見所を回っていく事にする。周囲21キロの島は高低差もあってチャリンコではちょっとキツい。大人しく泊まっていたホテルよしざとでレンタカーを借りる事にした。
集落を出てすぐの所、南大東中学校そばの公園に開拓者玉置半右衛門を称える「玉置半右衛門君記念碑」がある。読みづらい碑文に代わって傍らに書き写された看板があるのでそちらの方を読んでみると玉置半右衛門の離島開拓の華々しい半生が綴られていた。玉置氏が居なければ南大東島に人が住む事もなかった訳で、そういう意味ではヒーローなのかも知れないが、私企業の独占状態が続き自治権すらなく土地の所有すら許されなかった島民達は皮肉にも戦後アメリカの高等弁務官によって解放される事になるのだ。
さらにその近くにある「大東神社」。これも玉置半右衛門率いる開拓団が創建した神社である。沖縄県では琉球八社以外に神社というものが殆どない土地柄だが、大東諸島は八丈島民が開いた経緯もあって本土と同じように神社もあるし、毎年9月には豊年祭も行われ、神輿が担がれる土地柄なのである。
普段は島民がたまに参拝に訪れる程度でひっそりした大東神社の境内。地面を見ると危険動物であるアフリカマイマイとミヤコヒキガエルが大量にいて踏まないように気をつけなければならない。こいつらがどう危険動物なのかについては後述する。
絶海の孤島にある森の中の神社…というある意味非常にレアな風景。この先どれだけ時代が変わってもこの場所が変わるという事はまず無さそうだろうな。
鬱蒼とした森が形成されている大東神社は島の固有種である国指定天然記念物のダイトウオオコウモリが生息していて夜になるとこいつらが見られるらしいとの事で夜にまたここに来た訳だけど、結局真っ暗で訳も分からず見る事が出来なかった。コウモリ鑑賞は島のインストラクターにツアーを申し込んだ方が確実だと思う。
そして島の隠れた名物なのがこのヒキガエルならぬ「ヒカレガエル」の存在。大東諸島ではサトウキビの害虫対策としてミヤコヒキガエルが多数持ち込まれたものの天敵が居ない為に島中こいつらが大繁殖している。結果道端に車に轢かれて死んだカエルがあちらこちらにあるという珍風景。
こいつら、個体が結構でかいので轢死体もなかなかグロテスクな事になってやがります。死にたてホヤホヤのやつは大量にハエがたかっていて、何とも生々しい。
死んだヒキガエル達は南国のアスファルトの熱でたちまち乾燥して煎餅状に乾いてしまうのである。そもそも毒があるし他の生物に捕食される事もないんでしょうな。
昼間でも涼しそうな草むらに入るとミヤコヒキガエルの生体がアホほどいるのですぐ見つけられるが、皮膚から強い毒が出ているので不用意に素手で触ってはならん。見かけたとしても、ドントタッチミーです。でもこいつら、爬虫類マニアの間ではペットに珍重されてて、ネット上では生体が売買されていたりする。
ヒカレガエル以外にも島で大量繁殖しているものと言えばこのアフリカマイマイ。沖縄県全域で見かけるでかいカタツムリだが、広東住血線虫が寄生した個体に触ると好酸球性髄膜脳炎を引き起こし場合によっては死ぬ事もある危険なカタツムリだ。島の子供もこいつに触らないようによく教育されている。大東諸島の生き物は実におっかない奴らばかりだ。
それから大東諸島の固有種として知られるのが「大東犬」と呼ばれるもの。これは別に血統書がついてるようなものではなく単なる雑種に過ぎないのだが、狭い絶海の孤島で代々暮らしているうちに恐らく近親交配の影響で何故か短足になってしまった犬の事だ。民家の庭などで普通に飼われているが南大東島にいる大東犬の個体数はごく僅かなので集落をしつこく歩き回らないとなかなか見つけられない。
絶海の孤島・南大東島上陸記シリーズ
- 絶海の孤島・南大東島へフェリー「だいとう」に乗って行ってきた(全2ページ)
- 絶海の孤島・南大東島で観光客が寝食と足を確保する為のあれこれ(全2ページ)
- 絶海の孤島・南大東島唯一の集落「在所」で食べる幻の下痢魚インガンダルマの味 (全2ページ)
- 絶海の孤島・南大東島で見た開拓史と巨大鍾乳洞、そしてカエルの轢死体 (全5ページ)
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