「沖縄の動物園はちょっと違う」沖縄滞在中、そんな言葉を耳にしてから気になっていた場所がいくつかあったので寄ってみた。動物園とは言っても、ちゃんとやっているテーマパークや公営のそれとは違う。個人経営している、地元民くらいしか立ち寄る事もなさそうな所だ。
そのうちの一つが那覇市郊外、沖縄自動車道北中城IC近くにある「登又農園」(玉城商店)という店舗。ここも見た所、観葉植物類が店先に並べられていて個人経営のホームセンターか何かのような佇まいだ。こんな場所に観光客がやってくるとはとても思えない。しかしここにれっきとした「動物園」があるらしいんです。
そのまま店の中にお邪魔してみる。適当に食料品なども並べられた店内は雑多でまあなんとも沖縄らしい佇まいであるが、店の奥にも観葉植物が並べられたビニールハウスの売場が広がっている。いかにもな家族連れも見当たらないし客は老人ばかりだし、本当に動物園があるんですかね。
そう思っていたら天井から吊り下げられた案内看板が、この奥に動物園がある事を確かに示している。しかも随分バランスの悪い手書きの字が妙に気になる。こういう所もなんだか沖縄っぽい。
案内看板の通りに行くとまた屋外に出て敷地を歩いて行く事になる。駐車場側の入口は随分狭かったが、中に入ると敷地が妙に広い。どこまで続いてるんだよ。とりあえ不安になりながらも先へ進む。
道なりに行くと傍らの雑木林に積まれているのは物流倉庫でよく使われる運搬用パレットや謎の野菜型オブジェの数々。これは一体何を意味しているのか。飾りとして置いてあるにしろなんだか唐突である。意味が分からない。お伽話の世界を演出するにしては何とも中途半端で、却って怪しさ倍増である。
パレットの上にでかいリンゴのオブジェが乗っかっているが遊具という訳でもないし、ただ単に置かれているだけなのだ。この怪しいテンションからして、先に待ち受けている動物園がどんな感じなのか、かえって期待が高まる。
その先の大きめの鳥舎にクジャクが飼育されているのを発見。鳥舎は見た所トタンやら何やら適当に建築資材を組み合わせたDIYな感じがしてゆるい。そう言えば近年リゾートホテルや動物園で飼われていて脱走したクジャクが野生化・繁殖しているらしい。八重山諸島では普通に道端で見かけましたが。
店の売り場を出て敷地を200メートルくらい歩いた所でようやく「どうぶつえん入口」と書かれた所が姿を現す。周囲は郊外の農地といった感じの殺風景な場所で、動物園らしい和んだ雰囲気とは程遠い印象がある。
しかも動物園の入口自体もどこかの家のガレージかよと思うような佇まいで笑える。手書きの看板が哀愁漂わせてますね。入場無料との事で太っ腹で素晴らしい限りである。そんな登又農園Zooにお邪魔する事にしよう。
受付すらおらず勝手に入っても全然問題なさそうな感じなんですが、動物園というよりは牧場のそれですよね。大量に資材が積まれていて雑然としている。
そして足元にはニワトリが放し飼いにされている。コケッコケッとか呟きながらそのへんに散らばった飼料をついばんでいるのだが、あんまり近づくと人間様めがけて攻撃してくる。気の荒い奴である。
開きっぱなしになったトイレの扉からは和式便器がこんにちはしている。トイレも入り放題なんですがこの状態ではそこにいるニワトリさんがトイレの水を飲んでしまってそうです。別にどうってこと無さそうだけどね。
コンクリート壁に直書きされた注意書き。「保護者の責任で動物とあそばしてください。」とまたしてもバランスの悪い字体で書かれている。
「護」の字なんて完全にくさかんむりになってるし色々日本語が違っている気がするが別にここは沖縄だから細かい事は気にしないさあ。
おまけに、動物園で生まれた馬やら何やら家畜の名前や誕生日までコンクリートに直書きされている始末。テキトーでゆるゆるな感じですね本当。
動物園の奥のスペースに馬や山羊、それに豚など大型の家畜が十数頭くらい適当に飼われている。のっけから糞の匂いが漂いアグリカルチャーな気分が味わえる。山羊が多めなのがさすが沖縄らしい。山羊はミルクも絞れるし食肉にもなるし。
ちょうどエサの牧草を持った係員の兄さんがやってくると家畜達が一斉に色めき立つ。娯楽の少ない家畜にとっては一日のうちの貴重な楽しみですな。山羊が沖縄でヒージャーと呼ばれているのは周知の通りだが琉球方言で「髭があるもの」って意味だからなこれ。
そんな家畜とタダで戯れられる登又農園、地元の子供には人気のようで、後からずんずん子供達が割って入ってきたので我々は商店で適当に買い物を済ませて出てきた。観光地ではない沖縄独特の空気が流れる動物園、是非立ち寄ってみてはいかが。
さて動物園で山羊をしこたま可愛がってきたら、今度は山羊をしこたま食べてみよう、という事で近くの北中城村にある山羊料理店「南山」にお邪魔する。本島中部ではメジャーな存在で、多くの客で賑わっている。
メニューに書かれた「スラブ打ち」なる本土の人間にとっては聞き慣れない言葉。こうした沖縄の山羊料理店ではよく「スラブ打ち」と書かれているのだが、これは本土で言う所の棟上げ(上棟式)とほぼ同じ意味合いのもので、新築住宅を建てる時にコンクリートスラブを打った後、建築業者の兄ちゃん達に山羊汁や肉料理を振る舞うのが習わしとなっている。
「南山」の山羊定食(1600円)。中サイズだが大の男が食いきれないくらいあるのは胃袋が肉体労働者基準だからか。山羊汁に山羊刺し身、チーイリチーも付いているという山羊づくし状態。運が良ければ山羊の睾丸もあるので、食べたいならばダメモトで聞いてみると良い。食べるもよし愛でるもよしの山羊天国は沖縄でしか味わえない体験だ。
登又農園
営業時間 8:00~19:30 無休
沖縄県中頭郡中城村登又1261-2
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山羊料理 南山
営業時間 11:30~23:00 月曜定休
沖縄県中頭郡北中城村島袋1391-2
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