夜が明けてから再び辻を訪れた。じっくりと街歩きするがためである。観光産業に依存する沖縄ならではの事情が雇用の水商売率を高めている。酒場も多いがソッチ関係の店も多いのだ。
夜になるとあれだけギラギラしていた無料案内所などの店舗も、お天道様のいるうちは静かなものである。沖縄独特の穴あきブロックを多用したコンクリート製マンションの1階にそうした店が入居している。
普通のマンションなどに紛れて路地に並ぶは窓ガラスが全部赤い紙で塞がれたなんとも怪しいベタな風俗マンション。マンマン沖縄だって。満足マンションってことでしょうか。ラムサール条約湿地の漫湖はここではありません。
相変わらずソッチ系の店が容赦なく立ち並ぶ光景。
この界隈まで来るとコンクリート壁ペンキ直塗りの場末ホテルがやたら目立ってくる。既に異国情緒すら漂わせる「ホテル大幸」の穴あきブロックだらけの建物は印象的だ。
料亭左馬の建物を過ぎて路地を東側に戻ると再び場末ホテルだらけの光景となる。やはり西成あたりのドヤ街とそう変わらない趣き。きっと宿泊料金もお値打ちのはず…と勝手に決め付ける。
そのまま道なりに行くとオールピンクな外壁のドデカイ看板の店が一軒。店の前にタオルを干しまくっていて洗濯係のオバハンが忙しなさそうに作業していた。早朝のピンクゾーンは色気も糞もない。どこか寝ぼけた表情だ。
店の玄関口には「沖縄県辻特浴協会」の加盟店である旨を示すプレートが掲げられていた。こういう協会があるのは恐らく沖縄でもこの手の店舗の殆どが密集している辻だけか。あとはスナックとかの「社交街」だからな。
この付近は無駄にピンク多用系のケバめの店舗が多い。文字通りのピンクゾーンである。
メイドさんがご奉仕してくれるのだろうか、ご主人様お帰りなさいませ、な「ヌルヌル波の萌え倶楽部」の看板に笑ってしまった。琉球王朝時代から続く伝統的遊郭の今は沖縄最強のピンクゾーンとしてキョーレツな存在感を放っていた。沖縄旅行に「辻」参りは是非とも欠かせない。
旧料亭松乃下の脇から北側の路地へ入ると街並みはだんだんとホテル街の様相を呈してくる。辻は波の上ビーチのある隣の若狭地区と連なる那覇最大のラブホ密集地帯でもあるのだ。カップル旅行で泊まる場所には困らない。
この一帯はマジでその手の店しか見当たらない。なんとも如何わしい界隈だ。ただこれだけソッチ系の店が揃っている割に人通りは少ない。みんな車で来るからだろうな。
看板だけは派手だが建物自体は地味な感じの店が多い。やはりそのへんは住宅地が混在している地域事情を鑑みているのか、それは定かではないが。早朝に行ったので開いている店が少なかったが、普段は店の前に客引きのボーイが椅子に座って通行人をマークしているので、気が休まらない。
しかも見た目も近いので「泊まる」方か「お風呂屋さん」なのか、どっちの店やら分別が付かない時もある。沖縄らしいコンクリート剥き出しにペンキ塗り塗りのビルにそういう店が続々と入っている。
なんか竜宮城まであったりするし至れり尽くせりな男の盛り場です。もう沖縄から帰りたくなくなりますね。
ストリートビューなんぞで少し昔の写真と見比べたりするのだが、これらの店舗は頻繁に店名や看板が変わったりしている。経営者もコロコロ変わるのか、もしくは警察屋さん対策なのか、それもよく分からないが。
ちなみに辻の特殊浴場街では2007年に18歳未満の少女を雇っていた店舗がタバコの不始末で火災を起こして従業員や店長ら3人が死亡する事件もあった。従業員の一人は20歳以上を偽って働いていた17歳の少女だった。今も昔も遊女の人生は薄幸なり。
相変わらず無料案内所の店舗も多い。碁盤の目状の路地の隅々までこうした店で埋め尽くされているのが凄い。辻は紛れもなく沖縄オンリーワンでナンバーワンだという事が実感できよう。
惜しげもなくド派手な料金案内の看板が並べられた店先を通る。掲示された料金相場は本土の人間から見るとお値打ち価格。どんなお嬢が出てくるか分からんがな。
こっちはホテルだった。ホテルウェーブ。屋上に荒波をモチーフにした間抜けなオブジェが乗っている。波の上ビーチに近いから、こういうデザインにしちゃったのかしら。
いかにもなラブホもあればまるで西成のドヤ街にでもありそうなレトロな外観の穴あきブロック多用系コンクリート建築のものもあって多彩だ。沖縄なのにホテルヨコスカ。
その向かいの旅館「楽園館」もおおよそ楽園からはかけ離れた外観をしている連れ込み旅館風の宿だ。こういう感じの場末感全開の宿は波の上ビーチ周辺にも広範囲に点在している。