【那覇市】いつの間にか中国人観光客しか居なくなった「第一牧志公設市場」が閉鎖されたようです

「沖縄の戦後」の匂いをキョーレツに現代に残してきた、那覇市中心部の“マチグヮー”における二大スポット、そのうちの一つ「農連市場」がごっそり消えてしまった話題に次いで、2019年中にこちらの場所も姿を消すようになったようです。

マチグヮーの中心エリアに鎮座する「那覇市第一牧志公設市場」…ここも戦後の闇市が発祥で、昭和26(1951)年に開設されて以来の歴史を誇る、那覇市を代表する市場の一つ。今の建物は沖縄が本土復帰を果たした昭和47(1972)年に建てられたもので、老朽化が理由で今年6月16日に閉鎖されることになった。

農連市場同様、戦後のドサクサから始まった「第一牧志公設市場」

未だによくこの場所を挙げて「沖縄の台所」だなんて言われる事が多いのだが、実際そうだったのははるか昔の話だ。沖縄サミットやNHK朝ドラ「ちゅらさん」放送による沖縄ブームが起きた2000年代以降、市場にある個人商店は観光客に特化した商売にシフトしだし、元々の買い物客はゴチャゴチャした中心市街地を避けて便利な郊外のマックスバリュだのサンエーだのに行くようになった。

ウミヘビ(イラブー)の燻製が何の気なしに店先に吊るされていたり、豚の頭や山羊の足が唐突に置かれていたり、夜光貝だの変な色の巨大伊勢海老だの、そういうのを見ながら「日本語の通じる外国・沖縄」の“異国情緒”を手軽に満喫する場所、それが第一牧志公設市場である。

ちなみにここの移転先で仮設市場のある「旧にぎわい広場」に2001年まで「第二牧志公設市場」があったらしい。“第二”が無くなって久しいのに、いつまでも“第一”の二文字が残っている。

築50年近くも経ったレトロ感漂う第一牧志公設市場の構内は、かつての築地市場にも似た風情がある。しかし移転先は西に100メートルほどズレた、かつての第二牧志公設市場の跡地である事から「潰れた市場の跡に移転するのか」と反発する業者も少なくなかったようだ。築地市場同様、長年の営業で衛生上の問題もあるわけで、渋々合意形成が成されたのだろう。

完全に沖縄だけでしか見られない「山羊肉専門店」まである第一牧志公設市場。もっとも当地はガーブ川の浸水問題がある上に地主による土地返還要求があった事から、1960年代より市場の移転話が起きていて、先立って昭和44(1969)年 に「第二牧志公設市場」が開かれたものの、業者の移転が進まずに、そのままこの市場が残ったという経緯がある。

ちなみに元々の建物は第二牧志公設市場が開設された年に起きた“不審火”で大半が丸焼けになってしまった後、建て替えられたという話だ。ええ、不審火ねえ…誰が火を付けたのか知りませんけども…

で、この市場が閉鎖される直前に「見納め」に訪れた我々だが、既にあちこちの店舗が“店じまい”して、寂しい佇まいになっているのが見られた。しかしその一方で、昔っからこの市場で商売を続けているような土着のオバーが置物のように鎮座する一角も。

第一牧志公設市場にいるのは中国人観光客ばかりです

だが近年の第一牧志公設市場は様子がかなり変わってきている。買い物客がほとんど中国人観光客ばかりなのだ。あちらこちらで飛び交うのは日本語ではなく中国語。翁長前知事が那覇市長時代にデデーンと龍柱立てちゃったくらいですからね。そりゃあ“熱烈歓迎”ぶりが極まっておりますね。

とりわけ中国人観光客がお目当てなのが、第一牧志公設市場に多数存在する鮮魚店である。彼らが親類一同で沖縄にやってきて、この場所で結構お高い伊勢海老だとか何だとかを糸目を付けずに“爆買い”しまくっては二階の食堂で豪勢な舟盛りにして食いまくっている。数万どころか数十万円が一気に飛ぶらしい。

そりゃ魚屋だって商売相手のお得意様は中国人に決まっているわけである。陳列する魚の値札や張り紙の類も全て中国語。しまいにゃ店員まで中国人を雇っているところまである。「支付宝」(Alipay)、「微信支付」(WeChatPay)は使えてアタリマエアルヨ。

少なくとも、我々が以前見物に来た2011年の時点ではここまで魚屋の値札が中国語だらけで、中国語が至るところで飛び交っている状態は見受けられなかった。まあ、大阪の黒門市場みたいなもんですね。もはや日本人は相手にしてませんよって。

第一牧志公設市場でお馴染みの「持ち上げ」システム。一階で買った鮮魚を二階に持ち込んで料理代として魚の購入代金プラス1人500円を徴収する制度。1980年代から始まったらしいが、ケチな日本人観光客が少人数で、金を出し渋って数千円単位の食事をすると恐ろしくコスパが悪い。

それで、目の前のオンボロエスカレーターに乗って二階に上がってみれば飲食店はどうなっているかというと…完全に中国ですここ。日本人の客は一人もいないようです。ここまで露骨だと、さすがに引くわ…

二階にはこのような雑然とした佇まいの食い物屋が十数店舗営業しているが、開いている店舗はどこも満員。客も店員もほとんど中国人ばかりであり、もはや沖縄らしい情緒を求めるには完全に場違いである。

これまで魚を生で食べる習慣の無かった中国人も刺身の旨さに目覚め始めているようだが、中国だと水質の問題で生魚を食べる事は難しい。しかし日本に来れば刺身がたらふく食えるとあって、ここ第一牧志公設市場や大阪の黒門市場なんかに「中国人刺身観光バブル」が押し寄せているのだ。

そりゃ金払いのいい中国人観光客が殺到して景気が宜しくて結構な事であるが、今まで来ていたような日本人観光客はさっぱり来なくもなる。沖縄にはもっと新しくてシャレオツなスポットも、安くて美味い魚が食える店も他にごまんとある。

中国人観光客の“爆買いバブル”に頼らざるを得ない沖縄の悲哀

ここと同じく中国人観光客が殺到していた隣の韓国・ソウルも、2017年、中国政府が在韓米軍の最新鋭迎撃システム「THAAD」の配備に反発して、韓国への団体旅行商品の販売を禁止して以降、中国人観光客が激減したという。ソウルの名物観光地「鷺梁津水産市場」も第一牧志公設市場ばりに中国語だらけで、彼らの大好物であるサーモンばかりを陳列しまくっていたが、今ではどうなっているのだか。

中国人観光客による「爆買いバブル」なんて、所詮は中国政府の胸先三寸で全て決まってしまう。これが“チャイナリスク”だ。もし何らかの政治的問題がこじれて中国と関係悪化したらどうなるか、ウチナーの方々にも想像できますかね? …そういう事を考えながら二階のとある食い物屋の席に陣取る。ああ、落ち着かねぇ…

ケチ臭く千円の魚を注文すると、ほとんど可食部もない小さな白身魚が、頼みもしないのに中華風味のケチャップあんかけの唐揚げで盛られてきた。うーん、やっぱり少人数でケチ臭い注文をしてもダメですねここ。調理代500円が掛かることを念頭に置くと、そのへんで食ってる中国人と同じようにデカイ魚を注文しなければ値打ちはない。

第一牧志公設市場の魚屋のオヤジに「中国人観光客増えてますね」と訊いたところ、険しい表情をされて「そうしないと食べていけないんですよ」とつっけんどんに返されました。ジメジメとした亜熱帯の据えた空気に満ちた古臭い市場は、“沖縄の人間が陽気で明るい”というステレオタイプなイメージとは180度異なっている。そんな「第一牧志公設市場」は2022年を目処に、この場所に新しく建て直される予定だ。


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新日本DEEP案内およびDEEP案内シリーズ管理人兼編集長。2007年「大阪DEEP案内」開設、2008年「東京DEEP案内」開設、2009年「日本DEEP案内」開設、2010年「世界DEEP案内」開設、2013年「新日本DEEP案内」開設。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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