名古屋の都心に近いのに1両編成のディーゼル車が1時間に1本しか出ない「東海交通事業・城北線」が孤高すぎる件

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愛知県 春日井市 城北線

…と、ぶつくさ文句を言ってるうちに城北線のホームに着きました。1両編成のディーゼル車両なので、ホームの長さもどこぞの田舎のローカル鉄道と寸分違わずの様相です。しかも日中は1時間1本。通勤時間帯は1時間3本に増えるが、これだけでかなり実用性に欠ける。本当に大都会名古屋至近距離にある電車とは思えないテンション。

愛知県 春日井市 城北線

車両はJR東海の田舎電車ではおなじみ「キハ11形」の200番台車両。高山本線や太多線でも同型の100番台が使われている。同じ愛知県のJR系路線で唯一非電化路線だった武豊線は2015年に電化されるのが決まっているので、愛知県のJR系で非電化なのはここ城北線だけになるようです。もちろん堂々のワンマン運転である。

愛知県 春日井市 城北線

勝川駅の駅名表示板もJR東海仕様を少し弄っただけの東海交通事業仕様で、見た目にもさすがJR東海の完全子会社だなあといった印象。通勤客の利用も若干あるのだろうが、ここの沿線に住むならよほどの理由がない限りは自動車を使うだろうし、使う理由があるのって、せいぜい免停食らって車を転がせない人くらいですかね…

愛知県 春日井市 城北線

運賃を気にするボンビーな方は城北線ホリデーフリーきっぷというのも売られている(大人720円、子供360円)ので、土日祝日限定ですがこれを活用する手もあるっちゃある。沿線の観光資源もこれといったものが皆無なのがまた痛いところだが、二子山古墳だとか清洲城、問屋記念館だとか、なかなか乙なラインナップだ。

愛知県 城北線

早速城北線の車内に乗り込む。ワンマン運転の田舎電車にありがちな整理券発行機と料金箱がセッティングされている。高山本線とか太多線あたりなら田舎臭い学生がわんさか乗ってくるんだろうが、ここはそのような兆しは全くない。

愛知県 城北線

やはり高山本線とか太多線のそれと似た車内。手前にロングシート、真ん中がボックス席になっているが、せいぜい乗客は10人も居ればいいところ。とても黒字運営しているようには思えないのだが、開業から20年余りが過ぎた現在も廃止される噂はあれど、ずっと運行を続けている。

愛知県 城北線

車内に掲示された料金表。勝川から枇杷島まで通しで乗車した場合の料金は440円、所要時間は16分。初乗りが230円、それから310円、380円と上がっていく。ちなみに同区間をJRだけで名古屋経由で行くと片道30分程度掛かるが運賃が320円で、こっちの方が全然安いんですけど…

愛知県 城北線

いよいよ城北線の電車が発車し始めた。勝川から枇杷島まで、途中駅は味美、比良、小田井、尾張星の宮の4つ。味美と小田井は近くに乗り換え可能な鉄道駅がそれぞれあるが、特に味美は名鉄小牧線の同駅がかなり離れているので全体的に乗り換えの接続もあまり機能していない。

愛知県 城北線

城北線が走るルートはほぼ高架線で、名古屋第二環状自動車道(名二環、旧東名阪自動車道均一区間)とその下を走る国道302号とほぼ同じルートを通る。沿線の車窓の景色は殺風景もいいところで、名古屋の郊外の平凡な街並みが続く。この平凡さは埼京線あたりといい勝負だ。途中の小田井駅が名鉄と地下鉄鶴舞線が乗り入れる上小田井駅に比較的近いので、ここでごっそり客が降りた後、次の尾張星の宮で完全に客は当取材班一人だけとなった。乗務員だけじゃなくて客までワンマン運転かよ…

愛知県 城北線

そんな存在意義がよくわからないながらも運行が続いている城北線だが、最近は乗客誘致のためにイベントも積極的にやってるらしく、来る12月13日には完全予約制で「ジャズワイントレイン」と銘打って城北線を往復しながら電車の中でワインと料理を片手にジャズの生演奏が聞けるというイベント列車を走らせる予定らしい。

愛知県 清須市 城北線

で、終点の枇杷島駅で下車。勝川駅とは違ってこちらはJR東海道線の駅と同じ場所に到着するので乗り換えに困る事はない。運賃は整理券とともに料金箱に入れましょう。基本的には下車時精算となっているが、JR勝川駅と枇杷島駅では自動券売機で城北線の乗車券が購入可能らしい。ましてや初めて乗るのにそんな方法には気付かないだろうが。

愛知県 清須市 城北線

枇杷島駅で城北線から下車する場合は精算後にこの「降車証明書」を受け取らなければ駅の自動改札から出られなくなるので注意が必要。城北線の車内で乗務員から貰いましょう。

ところでそもそもこの中途半端でよく分からないローカル鉄道が名古屋近郊にある理由について。城北線も元は稲沢から勝川、高蔵寺から岡崎までの区間、東海道線と中央線とを結ぶ貨物中心の計画線「国鉄瀬戸線」の一部だったもので、着工が昭和51(1976)年から始まったものの、貨物列車の需要減少と国鉄の財政悪化で工事は途中で凍結された。

愛知県 豊田市 八草

その後高蔵寺から岡崎間は昭和63(1988)年に第三セクター「愛知環状鉄道」として開通、トヨタ自動車の地元豊田市を通る事もあって沿線人口も多く学生の通勤の足として、さらには愛知万博開催期間中には会場輸送手段として機能し、こちらは絶賛の黒字運営。しかし一方の城北線は見ての通りの放置プレイ状態。せっかく作りかけたものを無駄にするのもちょっと…という訳で、仕方なく1両編成のディーゼル車両を1時間おきに走らせてるらしいです…

これが人口の多い東京大阪だったら武蔵野線なりおおさか東線なりになって旅客列車の運営が成立するのだろうが、ここは自動車王国愛知県ですからね。

それからこの国鉄瀬戸線は当時の「日本鉄道建設公団」が建設したもので、後継の「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」から現在もJR側に貸与される形になっていて完全にJRのものではないので、当初の予定通り勝川駅で城北線を繋げてしまえば工事費も掛かるし毎年支払う賃借料も跳ね上がるしで良い事は一つもないと、JR側が意図的にこの状態で放置してるらしい。正直、鉄道網軽視の愛知県でしかこんな光景は見られません…


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新日本DEEP案内およびDEEP案内シリーズ管理人兼編集長。2007年「大阪DEEP案内」開設、2008年「東京DEEP案内」開設、2009年「日本DEEP案内」開設、2010年「世界DEEP案内」開設、2013年「新日本DEEP案内」開設。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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