地図から消えた人口1万3千人の街、幻のゴールドラッシュ…紋別市「鴻之舞鉱山」を訪ねる 

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紋別市 鴻之舞

鴻之舞鉱山跡を訪ねたら、ここも忘れずに立ち寄って欲しい。鴻之舞地区から藻鼈川を下り紋別市街地方面に約9キロの位置にある「上藻別駅逓」だ。駅逓所というのは北海道独特の制度で作られた宿泊施設や郵便物の配達、人馬の貸出などをまとめて行っていた施設の事で、昔は道内くまなくあったそうだが、この駅逓の建物が現存しているのは10ヶ所くらいしか無く、うちの1ヶ所がこの上藻別駅逓になる。大正15(1926)年築の建物は国登録有形文化財の指定を受けている。

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上藻別駅逓は元鉱山関係者も含めた地元出身者の方々が共同管理されていて、積雪期を除いた4月から11月までは中に入る事が出来る。一時期民家や旅館として使われていた事もあるので、応接間なんかはやけに生活臭が漂っている。ここで泊まれたら面白そうだけど、そういうのはやってないみたい。

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なぜか韓国映画のロケ地に使われていた事があるらしく館内には黒板にハングルで記念カキコしてあったりしたが「オイシーマンという映画でメグミ旅館として使われていた」とかなんのこっちゃ。家に帰ってググってみるまでそれが何の映画なのか全然分からんかったですが、ヒロインは池脇千鶴らしい。

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まあ確かにこの建物、韓国人でも憧れを抱いてしまうのも無理もない北国情緒があります。あの半島で同緯度だともう北朝鮮しかないのでそりゃ北海道来ますわな。(※ちなみに紋別市の緯度は44.35度で北朝鮮の最北端よりまだ北にある)

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ちなみに元旅館時代の看板もしっかり残っている。「元官設上藻鼈驛逓所 高地旅館」と旧字体で筆書きされておりました。旅館として営業していたのは昭和24(1949)年まで。その後は住宅だった。

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まだそれだけではない。上藻別駅逓の中は「鴻之舞金山資料館」になっている。鴻之舞地区のジオラマ模型から住民が使っていた私物までありとあらゆるものがこの場所に展示されているのだ。これは見ない訳にはいかんだろうよ。

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現地でいくら見回しても9割方草っぱらしか見当たらなかったが、ここに来てジオラマ模型を見るとなるほど確かにこういう街があったのだなと再確認できる。藻鼈川に沿った狭い谷間に細長く街が形成されていたその様子が視覚的に理解できよう。

紋別市 鴻之舞

建物内に所狭しと並ぶ昭和の生活用具の数々…ちょうど居合わせた地元のおじさんが親切に説明してくれたお陰で色々知ったのだが、当時の鴻之舞地区は完全に住友の統制下にあって、気の荒い坑夫であっても下手なやんちゃはできず、治安がとても良かったそうです。

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隔絶山村にあり自由が効かなかったその分、福利厚生は充実していて好待遇だった事もあり、昭和28(1953)年の白黒テレビ放送開始から1ヶ月でほぼ全世帯にテレビが普及した程、裕福な生活をしていたというのだ。街頭テレビに大群を成していたのが当然な時代、力道山のカラテチョップをみんな自宅のテレビで見ていたという事になるのか。

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これらも当時の住民が使っていた家財道具の数々だろうか。どれも相当な年代物で、戦前の時代にタイムスリップしたかのようだ。しかし巨大な熊の毛皮があるというのが北海道らしい…

紋別市 鴻之舞

地元の学校のスポーツイベントがらみの優勝旗。その中に鴻之舞高等学校と書かれているものがある。この街には小中学校に留まらずなんと高校まであったらしい。本当にまるごと一つの「街」が消えてしまったと表現するべきだろうか。

紋別市 鴻之舞

テレビがカラー放送になって隅々まで庶民に普及した頃には3年B組金八先生が慕われていた時代もあったようだが鴻之舞では同じ金八でも芸者の「金八姐さん」が慕われていたのだ。丸瀬布側に抜ける金八峠の名はこの芸者の金八が由来となっている。鉱石搬出ルートをそれまでの紋別経由から丸瀬布経由に変える為に新道の建設を誘致する際に鴻之舞を訪れた調査官のお偉い方を大層もてなして道路の完成が実現したという功績の持ち主だそうで。今は金八トンネルが出来てさらに通りやすくなってますね。

紋別市 鴻之舞

そんな金八姐さんが活躍していた昭和の初期、この最北の鉱山町にはこれだけ立派な駅逓を建ててしまう程の経済力と華やかさがあったのだ。さすがに築80年ものだけあって一時期は荒廃していたそうだが、どうやら道産子企業の大手家具メーカー「ニトリ」の助成金を受けて修繕したんだそうだ。お値段異常ニトリも地元の為にいい仕事してますね。

紋別市 鴻之舞

この二階に上がる手摺の質感といい、さすが国登録有形文化財に指定されるだけの事はある。しかし入場無料というのがびっくり。ニトリの助成金だけで運営は大丈夫なのか気になるが…

紋別市 鴻之舞

駅逓の建物に隣接していかにも北海道らしいサイロが並んでいる。特に牛とかを飼っているだけでもないが、サイロ内が一部資料館に転用されている。

紋別市 鴻之舞

かつて鴻之舞の街を走り抜けていたトロッコ列車もここで現物展示されてます。ここにも住友の井桁マークがしっかり書かれているのであった。

紋別市 鴻之舞

忘れ去られたような土地になっている現在の鴻之舞鉱山。しかし日本屈指の金山としてこの国の土台を支えていた場所であった事は心に留めておきたい。確かに超不便な立地で行くのも大変だが、北海道を訪れた際はこの街の存在を頭の片隅に入れておいてもらいたい。



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新日本DEEP案内およびDEEP案内シリーズ管理人兼編集長。2007年「大阪DEEP案内」開設、2008年「東京DEEP案内」開設、2009年「日本DEEP案内」開設、2010年「世界DEEP案内」開設、2013年「新日本DEEP案内」開設。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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