地図から消えた人口1万3千人の街、幻のゴールドラッシュ…紋別市「鴻之舞鉱山」を訪ねる 

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紋別市 鴻之舞

人の生活の匂いが何も無くなったかつての鉱山町の道沿いを走っていると突如道路を横切る橋。「五号杭橋」というもので、鴻紋軌道の遺構の中で最も大きなものだ。これは現在も導水管が通されており使用されている。

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昭和48(1973)年に閉山した鴻之舞鉱山だが、現在もこの一帯の土地は採掘を行っていた住友の所有地となっている。「住友金属鉱山株式会社 鴻之舞採石所」と看板を掲げた同社の敷地も見える。まだ鉱毒を沈める為の沈殿池のみが稼働中で、作業服を着た係員の人が常駐している。足尾銅山もそうだがこうした廃鉱山において鉱毒処理は半永久的に続けられる。富を求めて自然環境に手を出した人類に課せられた開発のツケである。

紋別市 鴻之舞

そんな住友の名残があちらこちらに残っているので探し回る事にする。廃村と言えば廃屋にワクテカ状態になりがちだが、まず木造建築物は雪の重みで潰れて自然倒壊して森に還っているので、まずそういった廃屋を探す事は難しい。殆ど原っぱしか残っていないが、よく見ると奥の方にやけに立派な石造りの蔵が建っているのが見えるだろう。

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現役当時はさぞかし大事な物を守っていたに違いない石蔵。書庫だったという話もあるが、ここも大煙突と同じく、経年劣化による損傷が遠目には全く見当たらない。住友グループの所有物である事を示す井桁マークが刻み込まれていた。住友金属鉱山と言えば愛媛県新居浜市の別子銅山が有名だが、鴻之舞鉱山が戦時体制で休山となると朝鮮人労働者の多くも別子行きとなったそうだ。

紋別市 鴻之舞

そしてこれが住友金属鉱山が所有していたかつての鉱員住宅跡である。門柱だけが残されているが、その他はほぼ自然に還ってしまっていた。この一帯の鉱員住宅などは殆どが住友の所有物だったので閉山後はおおむね解体されてしまっている。そういう事情がもし無ければ、この土地にもしかすると長崎の軍艦島のような光景が残されていたかも知れない。

紋別市 鴻之舞

しかし一部には住宅跡がそのまま残された一画がある。もう殆ど森の中に飲み込まれてしまって立入禁止区画になっているので外側の道路際からしか見る事しか出来ないのだが、コンクリート団地の遺構が眺められる。ここは住友の所有ではなく紋別市営住宅として建てられたものらしく解体を免れている。40年前までは人の暮らしがあった場所だが、今となっては風貌は遺跡そのものである。

紋別市 鴻之舞

紋別市立鴻之舞小学校跡。最盛期で人口13000人が居た街の小学校もそれなりに生徒が沢山居たのだろう。まあ今見ると完全に雑木林にしか思えないのだけども、40年の歳月がもたらす自然の力は強い。そのうち夕張とかの炭鉱町もこんな風になるのか。

紋別市 鴻之舞

ルパン三世の作者であるモンキー・パンチ氏は幼少期の一時期をこの鴻之舞で過ごしていたという。もしかするとこの小学校に在籍していたのかも知れんが…意外な場所に意外な有名人っているもんですね。

紋別市 鴻之舞

無人の鴻之舞地区にはかつての町名が書かれた看板がいくつも掲げられているのが見える。「紋別鴻友会」と看板にある通り、鴻之舞出身者が街の記憶を留める為にこの看板を設置している。元町が一応かつての街の中心で、最も川上側にあった「金竜町」「泉町」に朝鮮人労働者が沢山住んでいて、そこから街外れに出ると「昭和区」という遊郭があったそうだ。昭和区に向かう街外れには見張り所があって出入りする人間を見張っていた為、誰が遊びに来ていたか常に把握されていたらしい。なお遊郭は戦時体制に入った昭和16(1941)年に消滅している。

紋別市 鴻之舞

「喜楽町」という地名を名付けるセンスが乙であります。冬は極寒の地となる鴻之舞での暮らしは決して楽なものではなかっただろう。しかしこの地にはかつて1万3千人の住民の生活があり、銭湯や大衆食堂があり、スナックやパチンコ屋もあり、恩栄館と呼ばれる当時では北海道一の大映画館もあり、この最果ての山中がゴールドラッシュに湧いていた歴史が確かにあったのだ。そんな遠い昔の出来事ではない。40年前、僅か一世代前でしかないのだ。また、当時の住民によると人口は1万3千どころか、2万人近くは居たのではないかという話もある。

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新日本DEEP案内およびDEEP案内シリーズ管理人兼編集長。2007年「大阪DEEP案内」開設、2008年「東京DEEP案内」開設、2009年「日本DEEP案内」開設、2010年「世界DEEP案内」開設、2013年「新日本DEEP案内」開設。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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