ドキッ!廃墟だらけの熱海温泉・2010 お宮の松と廃墟ホテル群

静岡県

<注意>このレポートは熱海温泉が寂れまくっていた2010年頃の訪問記です。現在は外国人観光客のインバウンド需要でかなり盛り返しているらしいですが…

明治時代の小説家・尾崎紅葉の代表作「金色夜叉」の舞台で、有名なワンシーンとして刻まれた貫一とお宮の銅像が建つ海岸沿いを訪れた。

貫一の許嫁であったお宮が勝手に富豪の男に嫁いだ事に激怒した貫一が、問い詰めた上でお宮を足蹴にする図。金に目が眩んだお宮は富豪の男と結婚しても幸せにはなれず。いつの時代にもクソビッチはいるもんだな。

明治30年から6年間、読売新聞に連載されていた小説「金色夜叉」のヒットが熱海を観光地として有名にしたと言われ、最初の熱海ブームが到来したそうだ。ちなみに、この小説には実在のモデルが居たんだそうだ。

貫一お宮の銅像とともに置かれる「初代お宮の松」は薄い一枚の切株だけが残されている。江戸時代後期に植えられた松の木は、最初は「羽衣の松」と呼ばれていたが、小説「金色夜叉」のヒットで観光客に自然とそう呼ばれるようになったらしい。

現在植えられている「お宮の松」は二代目。

初代は交通量の多い幹線道路沿いにあるため排気ガスで樹勢が衰えて枯れてしまっていたのだ。その後の道路拡張工事の影響もあって、二代目は場所も移されている。

お宮の松の前は片側二車線の広い道路になっている。熱海駅から海岸に降りて市街地を行き来するメインストリートになっている。整備された人工砂浜「サンビーチ」の一角にあり、ヤシの木が並んでいる光景がいかにもリゾート地らしい。

その道路沿いに何軒もの高級リゾートマンションが並ぶ中で、お宮の松の真正面には巨大なリゾートホテルが建設されようとしている…と思ったがどうも様子がおかしい。

調べてみると、ここに熱海最大級のホテルを建設しようとしていた不動産開発会社「ゼファー」がアメリカ発のサブプライムローン問題に端を発する資金繰りの悪化で2008年7月に経営破綻(→詳細)。そのせいで工事がストップしているようなのだ。

リゾート不動産開発で沖縄など全国各地でイケイケドンドンだった会社で、このホテルの上の土地にも同社が建てたリゾートマンション「ゼファー熱海シーヒルズ」があるのだが、このホテルの建設計画でマンションからの眺望が台無しになると住民とトラブルを起こしている(→詳細

この手の業者には本当にろくなものがいない…

お宮の松の正面は、工事中断状態の豪華巨大ホテルに隣接して、広大な土地が廃墟と空き地だらけのまま放置されている。これは酷い。

海岸からかなり上の部分までが広範囲に廃墟になっているわけだが、この敷地もゼファーがホテル用地として買収していた部分となっていたようだ。もともとこの敷地には廃墟ホテルがずらりと並んでいて、まさにゴーストタウンそのものとなっていた所を再開発する事になっていた。そんな中での突然の倒産劇。

結果残ったのが中途半端に壊された廃墟ホテルの残骸。

建物が綺麗に壊されていない部分が残っているために見た目には紛争地帯の様相を呈している。言うなれば、イスラエル軍に爆撃されたガザ地区、もしくは地震で被災したハイチ。

かつては熱海隆盛のシンボルだったお宮の松と貫一お宮像もこんな廃墟群と正面に向き合うなんて気の毒で仕方がない。

廃墟ホテルの玄関口にあった階段だけが辛うじて残されているが、見た感じそんなに古くもない。

ここから山を登ったすぐ先に熱海駅などがある。駅から近い場所には近年建設された温泉付きリゾートマンションが廃墟ホテルに代わって乱立しているが、その中には破綻したゼファーの物件もいくつかある。

廃墟群を横目に駅方面に登る階段。一段が結構急なので、登ると疲れる。

その途中には廃墟ホテルの看板が捨てられたままになっているのだ。

昔はこの階段沿いにも情緒ある温泉街の風情があったのかも知れない。

駅へと至る階段はまだまだ続く。海岸から駅まではかなりの高低差であることがわかる。この付近は廃墟ホテルと空き地ばかりで、熱海市街をうろついてきた中では最もヤバイ状態のエリアだ。

熱海ならではの温泉マークのマンホール。市街地の至る所に温泉が流れているので時折路上から湯けむりが上がっているくらいなのだが、この辺の温泉は廃墟を通り過ぎて海に流れて行くだけなのだろう。

当然夜になると真っ暗になってしまう。またしても廃墟状態の屋敷が残っていて不気味さに拍車が掛かる。やはりこの廃墟群の姿が温泉街・熱海に突きつけられた最もシリアスな現実である。


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