熱海市中央町、温泉街の赤線跡を歩く

熱海市中央町にはかつて大規模な遊郭(赤線)があり、現在も多くの遊郭建築が残る飲食店街の風情は全国的にも珍しいと言える。表向きに、温泉街の熱海は日本有数の芸者街として知られるのだが、熱海だけでも100軒もの置屋があり、現役の芸妓も250名ほど在籍していると言われている。中央町の初川沿いに「熱海芸妓見番歌舞練場」があり、ここで毎年4月下旬に催される芸妓達の晴れ舞台「熱海をどり」の存在は有名だ。

京都の祇園にも通じる芸者遊びの文化は、祇園あれば五条楽園もあるように、熱海にも裏の顔がある。それが熱海の赤線の存在だった。中央町の各所にある遊郭建築の一つである「千笑」の屋号が入った建物。赤線時代の趣きを色濃く残す代表的な建築物であるが、現在は普通の住居兼店舗として使われているのみだ。

コンクリート壁に刻まれた屋号のレリーフが生々しい。現役時代の様子を半世紀過ぎた現在になって思い浮かべようにも難しいが、遊郭だった建物をそのまま何もせず屋号も隠さずそのまま使っているという所が素晴らしい。

建物の横面にももう一つ屋号の看板がある。

目の前の路地を見ると、本当にごく普通のありふれた住宅街の一部になっているところにギャップの大きさを感じる。コンクリートの地面には子供が遊んだチョークの跡がそのまま残っていた。

他にも残る遊郭建築の数々。この建物、見た目はボロアパートでも、富士形の屋根や窓の欄干など至る所に遊郭建築の特徴を見いだすことができる。

熱海街道沿いの遊郭建築「熱海第一交通」前の路地を入ったところ。場末のスナック街に混じって民家や床屋などがあって生活の臭いを漂わせる。

店舗兼住宅に使われている建物も、ピンクと空色が市松模様に入ったタイル貼りの壁を見る事ができる。

もう一つ特徴的な遊郭建築を残す建物が「スナック亜」に使われている「つたや」の屋号が入った建物。屋根部分の装飾と角の曲線がたまらなくレトロだ。

「スナック亜」の緑色のテント看板は字が色褪せて脱落しかけている。

この建物も横面に「つたや」の屋号がくっきり記されているので、一目見て「元赤線」だという事が判断できる。かなり現役の建物が多いので驚いてしまった。

遊郭建築が残る場所で有名な所としては東京ではせいぜい洲崎か玉の井止まりだが、さすが熱海まで来ると違うね。

「つたや」の2軒隣の不動産屋の建物も見逃してはならない。2階部分の壁に装飾がある。

1階が「スナック千夜」に使われているこの建物。2階部分に描かれた鷹の装飾が美しい。

かつては花街だった建物も経年劣化による傷みは隠しきれない。裏側に回ると崩壊状態の階段が見えた。

確かに熱海の遊郭建築のいずれも古い建物だが、この付近は昭和25年の熱海大火により焼失しているので、建物自体はそれ以降に建設されたものだそうだ。

かの熱海大火では市街地の4分の1を焼き尽くすという信じられない火災に見舞われたのだ。

観光客も寄り付かない、ほったらかし状態の元赤線の街並みの中で威勢が良かったのは巨大な花を咲かせるアロエの木だけでした。


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新日本DEEP案内およびDEEP案内シリーズ管理人兼編集長。2007年「大阪DEEP案内」開設、2008年「東京DEEP案内」開設、2009年「日本DEEP案内」開設、2010年「世界DEEP案内」開設、2013年「新日本DEEP案内」開設。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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