崩れ去る炭鉱町の栄華・夕張本町「梅ヶ枝横丁」 (1)

夕張市役所前から目の前の志幌加別川を渡った北側一帯が夕張本町の中で最も栄えていた一画で、そこに本町商店街がある。
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本町商店街は概ね古い商店が取り壊されてしまっていて「幸福の黄色いハンカチ」で見たような泥臭い炭鉱町の風情は損なわれている。割と新しい家ばかりが並んでいるのだがどうしてだろうか。


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そして商店街の駐車場あたりにも映画看板がずらりと並ぶ。本町商店街も寂れるあまり観光のテコ入れに「映画の街」を盛り上げようとばかりに「ゆうばりキネマ街道」だなんて名前をつけて映画看板を置きまくっているが、どこか場当たり的な感じも否めない。
2000年にキネマ街道事業として約100枚もの映画看板が市内各所に設置されたというのだからかなりの気合の入れようである。(現在は区画整理の関係などで展示数が減っている)
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その昔、隔絶された炭鉱町の中でやる事と言えば映画を観るくらいしか娯楽がなかった。最盛期には夕張市内には映画館が16館もあったそうだ。これらの看板は北海道で唯一残る札幌在住の映画看板業者が製作したものだという。こうした映画看板を町おこしのネタにする試みというのは東京の青梅でもやっている。
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そして本町商店街のど真ん中にあるのがこの急坂。商店街の中にあるのでそれらしくブロックで舗装されているのだが、見た目にもかなり勾配のキツそうな坂だ。
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その坂の入口にまたしても顔ハメ看板がある。今度は夕張夫妻じゃなくて「幸福の黄色いハンカチ」の夫妻だ。映画に出てきた夕張の風景は今と全く違っているが、映画が公開された昭和52(1977)年は奇しくも北炭夕張炭鉱が閉山した年である。この映画のヒットが「炭鉱から観光へ」街のベクトルを決定づけたのだろうか。
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どれだけ坂が急過ぎるのか、真横から見てみれば一目瞭然であろう。この急坂を登っていくと「梅ヶ枝横丁」という飲み屋街が広がっている。呑んだくれ連中は酔っ払ってこの坂を登り降りしていたのか。
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梅ヶ枝横丁界隈は厳密には公認された遊郭ではなかったが、炭鉱町として栄えていた頃は炭鉱労働者の慰安のための置屋が多数あって、酌婦達が夜の相手もしていたようだ。
唯一最後まで坂の途中に唯一残っていた蕎麦屋「藤の家」も近年閉鎖された。さらに坂のてっぺんにはなぜか大阪から分祀された石切神社があったのだが、現在は見るも無残に荒れ果てている。
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坂道から梅ヶ枝横丁に残る古い建築物を見る事が出来る。錆色のトタンで覆われた外壁が特徴的。しかも建物自体も結構デカイのだ。
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坂を登り切って梅ヶ枝横丁に辿り着く。「ホテルシューパロ」の裏手一帯が花街だったと聞いていたので、ちょうどこの辺りの事だろう。背後に見えるホテルがそうだ。
ちなみにホテルシューパロも第三セクター(石炭の歴史村観光:2006年破綻)運営のホテルだったが経営難で松下興産に売却するも、今度は松下興産が経営難に陥り再度夕張市に買い戻された挙句、別の三セク会社(夕張観光開発:2007年破綻)に経営を引き継ぎ、夕張市破綻後はマウントレースイと同じ指定管理者制度で受託した加森観光グループ傘下の夕張リゾート株式会社が経営を受け継いでいる。本当に話がややこしい。
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急坂の横から見える巨大な木造建築物はその存在感が異様である。普通の家でない事は明らかだが、ここは割烹料亭「美登利」の跡だったそうだ。戦後の昭和24(1949)年に大火があり、その後に建てられたものという。見た目にも相当荒れているのが分かる。
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「美登利」の建物はあちこち窓ガラスが割れていて内部が吹きっ晒しになってしまっている。都合よく野良猫の団地と化しているらしいが、これだけの立派な建物が廃墟のまま放置されているなんて勿体無い。
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「美登利」はホテルシューパロ別館として使われた時期もあったが、財政難のためか速攻で閉鎖されて放置プレイをかまされ、そのままの状態らしい。残念な事に2011年10月に建物は解体された。我々が訪れた直後の事だ。歴史の痕跡は惜しげも無くかき消されていく。

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