かつての炭鉱の町・夕張市の中心市街地である本町界隈は明治時代から花街があった土地で、特に梅ヶ枝横丁あたりは炭鉱労働者の盛り場として沢山の置屋が立ち並びさぞかし栄えてきたそうだ。
本町商店街からの急坂の途中から見える巨大な三階建ての木造建築物、割烹料亭「美登利」の建物がつい最近まで残っていたが、我々取材班が訪れた直後の2011年10月に解体されてしまっている。
ホテルシューパロの裏手にあたるこの一帯も古びたスナックの建物が多数残っていて盛り場の風情を強く残していた。どの店もすっかり商売上がったりといった感じなんですが…
「美登利」の前にも廃墟と化した飲食店跡が何軒も連なっている。玄関周りの意匠がいかにも昭和の盛り場的でそそられる。窓ガラスが一部割れていて、どうやら近所の野良猫の棲家になっているようだ。
かつての店舗の玄関口は酷く荒れ果ててていた。開き戸は施錠されているが下半分の板張りが壊されている。中のカーテンが破けているのは多分野良猫のせいだろうか。まさかこんな場所にまでDQNが荒らしに来るとは考えが及ばない。
この向かいの建物に古びたテントで覆われたスナック「エリート」があった。火事でもあったのかと言う程黒く煤けてしまった玄関周り。廃墟物件の中では確かにエリート的存在かも知れない。
なんとなく2階部分を見上げたら確かに火事の跡があったようで取り外された窓の中から黒ずんだ壁が丸見えになっていた。
その横には廃業した割烹料亭「美登利」の玄関口。店の看板もそのままに放置されている。この右側に「エリート」「梵」とスナックが棟続きに2軒並んでいるが全て2011年10月に解体された同じ3階建ての巨大な木造建築物の一部に入居している形だ。つまりこれらの店舗も全て取り壊されて存在しないという事か。
(※現地情報が恐ろしく少ないのでその後夕張に訪問された方は情報タレコミ下さい)
梅ヶ枝横丁の北側にあるスナック街はほぼ全滅と言って良い程の状態になっていた。自虐ネタ満載な「夕張夫妻」のテーマソングそのまんまの風景となっている。そう、みんな街を出ていったのだ。
スナック脇から上に伸びる階段の路地もかなりの雰囲気。草ボーボーになっていて階段が半分以上隠れてしまっている。この調子じゃあと10年もすればジャングルになるだろうな。
これでもちらほら住人が残っていて、家の前の道路に路駐しまくっている。こんな場所では路駐してもいちいち取り締まるような野暮な警察もいない。むしろ土地が余り放題になっている。
梅ヶ枝横丁北側入口まで来ると、横丁にあるスナックや飲食店の名前が記された大看板がデデーンと立っている。いかにも前時代的なデザインの手書き看板は平成生まれにはとても表現出来ない質感。
もっともこれらの店の8割か9割が既に廃墟と化しているのだ。時代は既にこの街を置き去りにしたまま四半世紀が過ぎた。「アルティックでサウンドトリップ スナックバロン」だなんてフレーズ、平成生まれにはとても思いつかないセンスである。
梅ヶ枝横丁を出た先には一軒のプレハブ小屋のラーメン屋「のんきや」の店舗があった。戦後から続く老舗のラーメン屋で以前はバラックだったが最近改装された。先代の婆ちゃんが亡くなった後、3代目となる長女が嫁ぎ先から戻ってきて営業を続けているという。
さっさと街を捨てる者もいれば、街に戻る者もあり。残念ながら閉まっていたので話が聞けなかった。
梅ヶ枝横丁がある高台から北側を見渡すと人の消えた夕張の街に真新しい7階建ての団地が建っているのが見えた。ここから見た通りでは案の定空き家だらけのようだが…住民がかつての炭鉱労働者で占められた夕張市独特の事情で、市内の全世帯の半数近くが公営住宅の住人となっている。
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