近頃アニメ聖地巡礼云々が食傷気味な今日この頃だが、特定地域を舞台とした映画や漫画を見て、実際にその場所に行ってみたいという衝動にかられる事は我々取材班でなくとも誰しも一度くらいはあったのではなかろうか(と勝手に決めつけているが)
突然だが沖田×華さんの漫画「蜃気楼家族」を読んで無性に富山県魚津市という街を見たくなった。主に幼少期の実家の家族や魚津の街の事を書いているエッセイ漫画だが描写がやけにリアル過ぎてドツボにはまってしまったのだ。気がつけば東京から関越道・上信越道・北陸道を乗り継ぎ400キロ超、富山市から北東20キロの位置にある魚津の街にやってきていた。
魚津は蜃気楼の見える日本海側の街として知られホタルイカと埋没林といった幻想的なものばかりが有名だ。太平洋側住民である我々取材班からするとちょっとしたファンタジーの世界である。しかし「蜃気楼家族」に描かれる魚津の街は救いようもないほど現実的で煤けている。99・5%実話と自称するこの漫画の通りの町並みなのか、一目見ておきたかったのだ。
まずは漫画の舞台ともなっているJR魚津駅前の盛り場へ向かう為に駅前までやってきた。魚津駅はJRと富山地鉄の駅舎があり、特急はくたか号で富山・金沢・東京方面へ行くか地鉄で宇奈月温泉方面へ乗り換える客がいる、ちょっとした交通の要衝。駅前ロータリー中央には魚津の祭に使われる「たてもん」が飾られている。
駅前には片貝川の伏流水から引いてきたという湧き水が飲めるスペースがあり山の恵みを実感する事ができる。さすが富山という地名だけの事はある。これからに備えて「うまい水」で頭を冷やす。
問題の盛り場は探すまでもなくすぐに見つかった。魚津で盛り場と言ったら駅前の「柿の木割り飲食街」しかない訳だ。マジで分り易い。さらに言えばここを除けば夜はほぼ町中が真っ暗なので、なおさら分り易い。
魚津に実際来るまではしょぼくれてどうしようもなくなった田舎町だろうと思っていたが意外に夜の「柿の木割り」は物凄く賑わっていた。他に溜まる場所もなさそうな地元民の若者連中はどいつもこいつも酒の勢いでやけに元気だ。
柿の木割りという一見変わった地名の由来は元々の字名(村木字柿の木割)に関係しているらしい。富山県の主要歓楽街の一つで富山市の桜木町、高岡市の桐木町、そしてここ魚津市の柿の木割りと見事に「木」のついた地名で統一されている。
地方都市の盛り場だけあってそこらじゅう路駐天国になっているが取り締まりといったケチな事もしていないようだ。代行業者やタクシーの車も頻繁に通り過ぎていく。
柿の木割り自体は割とフツーの居酒屋や小料理屋がメインだがたまーに中国パブやフィリピンパブが混じっている。あと呼び込みのボーイがやたら多い。
気になるソッチ系店舗の類だが「柿の木割り」では2軒だけ目立った店舗が見られるだけで、それもピンサロやセクキャバ止まりといった所。それ以上のサービスは富山県ではあまり表立って存在しないらしい。
福井や石川(加賀温泉郷除く)にも言える事だが、富山もどうやら風俗不毛地帯の一つのようだ。こうした産業はあなたのココロのスキマお埋めします的な仕事に当たるが、北陸勢が県民幸せ度上位を占めるような土地柄と関係があるのだろうかね。
夜だと絵面が解りづらいので翌朝再訪。これが二軒あるうちの一つ「あいうえお」。控えめにピンクな感じであり看板は前時代的な香りがプンプン。
あともう一軒は線路沿いにあった「白雪姫&ポパイ」。富山県内ではこの店舗が主要グループとなっていて同じ名前の店舗が富山市の桜木町にもある。本当に富山のピンクスポットと言えばせいぜいこんなもんらしい。「蜃気楼家族」で扱われている店は恐らくここの事だ。
その店から線路沿いに100メートル程滑川方面に歩いた所にある中華料理屋「朱喜」(現在営業していない)が沖田×華さんのご実家のようです。だいたい漫画で暴露し過ぎで場所も分り易すぎなゆえに魚津の街ではあの漫画はかなり有名になってしまったらしい。人生まるごとネタに出来るにはなかなか素晴らしい環境だと思った。うん。