鳥羽遊郭跡に残る廃墟妓楼に潜入!鳥羽みなとまち文学館と待合津の國

三重県

鳥羽市鳥羽二丁目には「鳥羽みなとまち文学館」という施設がある。画家であり風俗研究家でもある岩田準一(1900-1945)がここの出身で江戸川乱歩や竹久夢二とも親交があった何気にドエライ大物の生家があるのだが、そんな岩田邸を改装して作られた素敵な文学館。まずはここを訪れる事を強くお勧めしたい。

鳥羽みなとまち文学館の入口。ここでは岩田準一と江戸川乱歩に関する資料が見られる。開館時間は平日午後3時、土日祝日は4時半までだが入場は一切無料と随分太っ腹。これは入らない訳にはいかないでしょう。

中庭の一角には岩田準一の書斎を再現した部屋があった。岩田準一は男色文献研究に加えて志摩の風俗に関する研究を行なってきた。著書には鳥羽や渡鹿野島の舟娼について触れられた「志摩のはしりかね」などがある。他にも竹久夢二に弟子入りし「日本一の夢二通」と本人から評された程の関係でもある。

現代より次元違いに封建的な昭和初期にそんな研究をしていたというだけでもぶっ飛んでるけど高度な文学はそういうぶっ飛んだ世界から生まれるんでしょうな。

みなとまち文学館の館内は大里通りと本町通りの間の中庭を通って開館時間中は二つの通りの間を自由に行き来できる。通路の途中は擬似レトロ風味の演出が施されていて結構本格的。

中庭には映画「潮騒」の手描き看板がドーンと掲げられている。この映画も舞台は鳥羽の沖合にある神島のお話ですな。

実はこのみなとまち文学館、岩田準一の実孫にあたる岩田準子氏が館長で、親交があった江戸川乱歩と祖父である岩田準一とのアブない関係を描いた小説「二青年図」で作家デビューもしている。先祖がバイセクシャルでしかも江戸川乱歩と関係があったとか実の孫が書いているとはある意味衝撃的だが、我々取材班はそんなぶっ飛んでる人が大好きです。

しかし「みなとまち文学館」の見所はそれだけでは終わらない。文学館の斜向かいに朱塗りの壁が際立つ立派な遊郭建築がそのまんま残されているのだ。

この建物は「待合津の國」という。江戸時代末期建築の妓楼で戦後の売防法施行で営業休止、その後新聞記者であった宮瀬規矩の親族が住んでいたが空き家となり20年以上放置されて老朽化が激しかった所を2009年に地元の鳥羽商工会議所が200万円掛けて外観を修復したという経歴を持っている。

この待合津の國は「自己責任という事で了解頂ければ」の条件付きで内部を見学させてもらえる事が出来る。奇才・岩田準一の孫である準子氏に直接お願いして扉の鍵を開けてもらった。感謝感激。ちなみに宮瀬規矩という人物は岩田準一の兄でもある。

…で、中に入ってみたらこんなんだった。壮絶。20年廃墟状態だったので内部は至る所が崩落していて、慎重に進まなければ怪我をするだろう。館長さんに玄関先から見守られながら奥へ。どうやら階段も登って構わないらしい。

建物は雨水が入った所から急激に腐っていく。床板が抜けてしまっていて先に入れない箇所が多数。真っ暗だから写真撮影もフラッシュを焚いてやるしかない。さすがに商工会議所も中の改装までは資金の余裕がないのかも知れん。

途中の階段も踏み抜きそうになるので怖い。デブは注意するべき。なるべく階段の端っこを選んで進もう。

恐る恐る階段を踏みしめて2階に上がったが割とこっちの方が丈夫だった。かつての家人の生活物資が結構そのまま残されていて生々しい。

恐らく家人が居なくなるまでこの部屋が寝室に使われていたに違いない。布団の類がそのまま置いてあった。

豪華絢爛だったはずの遊郭建築も今や散りゆく徒花である。障子も破れ放題。多分近所の猫か何かが荒らしたのだろう。

引き戸の傾き具合から天井がかなりたわんできているのが分かる。次に地震が来たらアウトである。っていうかこの建物の中に居る時に地震に襲われたら生きて帰れません。廃墟探索はあくまで自己責任です。

ゴミやガラクタに混じって何故か聖教新聞が捨てられていた。新聞一面を飾る名誉会長は黒髪が多かった。何十年前のやつか知らんけど内容全然変わらんなあこの新聞は。

立派な外観の妓楼だが中も相当広かったようだ。部屋の向こうにさらに中庭があって、奥に通路が伸びている。しかしこれ以上は危険過ぎて何も準備なしに中に入るのはちょっと…

この廃墟遊郭もとい宮瀬邸の中から竹久夢二の自作の歌が刻まれた短冊が発見されている。竹久夢二自身も1915年に岩田準一邸を訪問していて、親交の程が伺える。

大阪飛田新地の鯛よし百番が国の登録有形文化財として認められた事を契機に、遊郭という負の要素が強いものであっても歴史的な価値を持つ建物を壊さずにいられればと、地元も「待合津の國」を文化財として保存したい意向でいるそうだ。崩落する前に何とかなればいいんだけどな。


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