北海道という土地を一度訪れたなら、最北端の宗谷岬と最東端の納沙布岬という2つの日本の最果てを目指すのは必然の事…という訳でやってきたのは日本最東端の街、北海道根室市。北方領土にも近い国境の街である。札幌から片道450キロあるんですが北海道って本当に広いですね。
根室市街地から車で10分程度の場所に日本屈指の水揚げ量を誇る花咲港があるので、納沙布岬灯台で日の出を観た後に立ち寄る事にした。まだ朝6時とかなんですが、この辺は夏場午前3時半くらいから明るくなります。日本で最も日の出が早い場所。その代わり冬至の時期には午後4時前には日が暮れて、日本で最も日の入りが早い場所でもある。
花咲港は北方領土に住むロシア人とのビザ無し交流や北方領土への墓参りを行う元島民関係者が乗る船が発着している国境の港でもある。港の目立つ場所にロシア国旗と同じ三色の看板が置かれているがしっかり「北方領土は日本固有の領土です」と三ヶ国語表記で主張してある。日本側として立場を伝えるのは重要な事だが、この問題は一向に解決される兆しがない。
花咲港にはロシア人を対象としたらしいインフォメーションセンターを名乗る建物がある。ロシア人向けに観光案内や日本の生活習慣などの情報を聞けたりできるそうで。しかしまだ朝の6時。当然開いてません。
インフォメーションセンターに掲げられた看板。外国船員の皆さんへ、と書かれてるけどどう見てもロシア人向け。まあ基本的な注意事項ですよね。
港付近はとにかくロシア語看板が溢れていて全く何が書いてあるのかチンプンカンプンなのだが花咲港の住民から見ればこれが日常風景なのである。花咲港を含めた根室港全体のロシアからの年間入港隻数は約500隻程度あるらしく、これは稚内港と並ぶ多さだ。
ラーメンと焼肉の「美味苑」。ラーメン屋にまでロシア語看板併記という徹底ぶりが国境の街らしい特殊事情であります。やっぱりロシア人の客もズルズル豪快にラーメン啜ったりしてるんでしょうか。
ロシア語看板は根室の街中でも当たり前のようにあるので、恐らく根室育ちで特にロシア人相手に商売をしている人はロシア語がかなり理解できるのではないかと思われる。
花咲港周辺はほんの気持ち程度に商店が立ち並んでいる。リサイクルショップやら日用品店なんかがあってロシア船員の客も当て込んでいるのだろうが、かなり寂れている。
この街では零細の個人商店まで看板にロシア語併記が当たり前だ。「магазин(マガジーン)」ってのはそのまんま「商店」という意味ですが。
そんな商店街には花咲港金刀比羅神社もある。最果ての地ながらも立派な鳥居がそびえていた。北海道の神社の鳥居はだいたい金属製なのが特徴。
あと花咲港には「ホームランやき」なる老舗の名物店もあったりして、これは野球ボール型のお焼きにあんこが詰まったもので、激しい肉体労働で疲れた船員が糖分補給の為に50個くらいまとめて買っていってみんなで食べられていたとか。半世紀近く店をやっているようだが港が寂れてしまっていつ閉めるか分からない状態らしい。朝6時という事でこの店も閉まってました。うーん。