岩手県の県庁所在地、盛岡市にやってきました。あんまり来るようなきっかけに乏しい土地だけど本場の盛岡冷麺を食ったり八幡町の寂れた盛り場などを見ておきたかったのだ。昨年夏の北海道旅行からの帰り道、フェリーに車を積んで青森に渡り、そこから東北道で東京に帰る途中に寄ったという感じ。
盛岡には冷麺とビッグダディの整骨院以外に何があるのか土地勘もないのでさっぱりワケワカメだったが、地図とにらめっこしてみるとJR盛岡駅から徒歩15分あたりの所が中心市街地の模様。そこまで歩いてみると現れたのがこのボロい3階建てのビルディング。そそられますね。
盛岡バスセンターは昭和34(1959)年施行の自動車ターミナル法に基づいた全国初の適用第一号バスターミナルである。県土だけはやたらと広大な岩手県内の広域交通網をこの手狭なバスセンター一つで今もどっしりと支えている。県内からの買い物客(特に老人)が多く、バスセンターから徒歩圏内には県下を代表するアーケード街、肴町商店街などもある。
この前時代的なセンスのフォントも惹かれます。住所は盛岡市中ノ橋通一丁目。重文指定の旧盛岡銀行(岩手銀行中ノ橋支店)からもうちょっと先に行った所にある。
ビルの中に足を踏み入れる。そこはバスを待つ乗客の皆様方が各々寛いでいらっしゃる、想像通りの待合室。しかし客層の年齢高すぎ。若い人達はやっぱりみんな自家用車なんでしょうかね。
盛岡バスセンターの建物は昭和35(1960)年の開業時から全くリニューアルされる事もなく当時のままで残されている。昔も今も岩手県内の交通の要だ。寂れた印象はなく、待合室の客目当てに営業している飲食店や商店も非常に多い。
田舎のショッピングセンターとかにありがちなタコ焼き屋があったりして食欲を掻き立てる香ばしい匂いがバスセンター内に漂っている。タコ焼きだけじゃなくて大学芋とかも売ってる。
バスセンターで食えるのはタコ焼きだけやおまへんで。ラーメンにそば・うどんも頂けるのであります。「冷風麺」って書いてるのがあるけどこれは盛岡ローカルで単に冷やし中華の事を指す。盛岡冷麺と区別するためにそう呼ばれてるんでしょうか。他の地域では冷風麺なんて言葉は聞いた事もない。
この豊富過ぎる売店の数々を見よ。ここで1時間くらいバスを待たされても全然時間が潰せそうなほどのテンションです。
老婆がいかにも好みそうなお団子類がやたら豊富な売店。頭上にある看板群も昭和の時代から全く変わっていなさそうだ。
食い物系だけに留まらず時計屋まであるという充実ぶり。セイコーシチズン時計修理。あれ、「修理」の字だけ手書きで付け加えられてますよ。
そして売店の上の隙間も見逃してはならない。「週刊テレビ時代」…テレビに焦点を合わせた―デラックス週刊誌!!ってあるけどWikiで調べたら1960年創刊、日本初のテレビ雑誌だったがわずか5ヶ月で廃刊になったとある。するとこの広告は相当なレアものだな。
一方でこのように廃業してしまった店舗もちらほら。3階建ての2階と3階部分も一応テナントになってるんだけど2階は全く空きだらけで3階部分に音楽教室とか岩手県バス協会だとかが入ってる程度。
ここらの売店群、「フジワラショップ」という屋号が出ているけど運営会社はこの藤原養蜂場という所になっているようだ。売店の一角に一斉に蜂蜜が陳列されていた。
激渋レトロな売店が立ち並ぶ中、ポカリスエットの自販機の後ろに隠れたようになっているが、何とも味わい深い佇まいの喫茶スペースがあった。コーヒーとはちみつトーストが食えます。やっぱりここも藤原養蜂場系列なんですかねえ。
こんな渋すぎる喫茶スペースなんか目にして入らない訳にはいかないですよね。カウンターだけの小さな喫茶店、奥の食器棚には何故かカップラーメンが並んでいる。築50年超のバスセンターの中でいい具合に熟しきってます。コーヒー一杯230円、バタートーストは150円だ。激安。卓上にシロップと蜂蜜もある気の利きようが素敵です。
バスセンターの建物表側からは気づかなかったが、肝心のバス乗り場は待合室を出た反対側のところにある。一目見て「うわ、狭い」と驚嘆してしまう程だ。バス路線は県内に留まらず東京駅や仙台駅、八戸とかにも行ったりするものもある。
さすがモータリゼーション黎明期のビンテージ物件だけあって、やたら狭くて運転手もバスの出し入れが面倒臭そう。当然ながら建物がかなり老朽化してる事もあるので再開発計画も持ち上がっているのだが、レトロな佇まいの現バスセンターに対する県民の愛着も強いようで、未だ取り壊しの目処は付いていない模様。
時計屋のポスター、これいつの時代のものだよ。すこぶる昭和全開過ぎて素晴らしい。ともかくレトロ好きにはヨダレが止まらない物件であります。取り壊される前に盛岡まで見に行きましょう。