北九州市第二の都会だった「黒崎」の商店街を歩く (1)

福岡県下第二の都市である北九州市は元々が別の街であった5つの市(門司・小倉・戸畑・八幡・若松)が合併して生まれた都市で、一応ながら小倉が都心扱いにはなっているが、街はかつて存在した5つの市の中心のまま分散している。

小倉から博多方面のJR鹿児島本線の電車で約15分の所にある「黒崎」は北九州市西部の中心地で小倉と肩を並べる副都心の一つだった場所。街の玄関口であるJR黒崎駅からは直方方面に出る筑豊電気鉄道の始発駅があり筑豊への入口にもあたる駅となる。



立派なペデストリアンデッキのある黒崎駅前に降り立つと線路を挟んで北側は工業地帯、南側が商業地とはっきり分かれている。駅の東側にはいかにも前時代的な外観のデパート井筒屋黒崎店。

駅前のペデストリアンデッキを降りるとその南側には綺麗に放射状に整備された街路に沿って「新天街」「カムズ黒崎」と2つのアーケード商店街の入口が連なっている。

今回この街に立ち寄ったのは駅前の商店街が寂れまくっていてヤバイという話を聞いての事だった。全国的に工業都市というのは寂れ気味なのだが北九州市みたいなモロな場所ではとりわけその傾向が顕著となる。黒崎も例外ではない。

魚町銀天街を抱える小倉はともかく第二の都心とまで言われた黒崎では中心市街地の空洞化が進みシャッター街にパチンコ屋だらけという状況。というかパチンコ屋以外に人の流れがない。まったくもって酷い。

そして駅前一等地の雑居ビルはものの見事にサラ金だらけという見事なまでのド底辺っぷりを晒している。まさしく地方都市の悲哀である。

それでも立派なアーケード街を抱えるカムズ黒崎商店街。駅前の放射状道路を南東方面に約350メートル、さらにその途中から栄町通り、熊手通りと別のアーケード街もありかなり大規模。

しかし商店街の店舗ビルを見てみると悲惨極まりない。黒崎のビジネス会館もこの通りアウト・オブ・ビジネスでございます。三台並んだ自販機はせめてもの埋め合わせか。

一方の新天街。カムズとは違ってなんだか古いままの錆びたアーケードだ。ロゴのデザインも昭和臭プンプン。

商店街の雰囲気的にはこっちの方が味わいありますよね。中華街と言う訳でもないのに中華風の赤提灯がぶら下がっているのだが、良いアクセントになっている。買い物客という訳でもないがそれなりに通行人の姿はある。

相変わらず店舗構成はパチンコ屋、質屋、立ち呑みと負け組オヤジ以外に用事のなさそうな店ばかりです。そもそも北九州市自体こんなもんか。

やさぐれたオッサンの溜まり場になってそうな立ち呑み屋とラーメン屋。さぞかし今日は勝った負けたという会話が繰り返されているのであろう。

まあこちら新天街も廃墟っぷりが容赦なく物凄い訳であるが、これだけ空き店舗だらけなのは街全体の地盤沈下に加えて街の郊外化もあるに違いない。

しかし車も金もないガキの溜まり場たるゲームセンターですらこの有様というのはさすがに深刻な気がしますよ。この街からは育ち盛りの子供も居なくなってしまったんでしょうか。

ゲーセンに留まらずプリクラパラダイスも廃業。こんなプリクラ専門店を見るとなんだか90年代の香りがしますね。多分この商店街は90年代くらいまでで時代が終わってる気がする。

あまりにシャッター通りとなっていてさすがに歩いていて陰鬱になってきたぞ。こういう時に味わいのあるレトロな喫茶店やら変に行列しているラーメン屋の一つでもやっていれば心が安らぐものだが…そんな気休めすら無いようだ。

ちょいちょい商店街を外れた路地の先なんかに申し訳程度に飲食店はあるのだが、休業日だったりそもそも市民の姿が見当たらないという。小倉の商店街は人だらけだったのにこの落差は何なのだろう。

そんな路地の片隅に目をやると立小便に怒り狂うどこかの家主の張り紙がベッタリ貼り付けられていた。「毎日ここで立ち小便をしている者 匂いと掃除でどれだけ迷惑しているか…二度とするな!!」だそうです。

昭和30年代の福岡
昭和30年代の福岡

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写真/香山 義憲/北島 寛/栗原 隆司/椎野 実/薗部 澄/平田 稔博
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