熊本市の慈恵病院にある「赤ちゃんポスト」を見てきた

少子高齢化に晩婚非婚化などと言われている昨今ますます子供が街から消えていき地方には限界集落が増えていく一方の日本だが世の中には自分の生んだ子を育てる事なく捨ててしまう親がごまんといる。その一方で孤児院などの保護施設もあり、誰の目にも触れず子供をこっそり捨ててしまえる「赤ちゃんポスト」のようなものも日本にはある。別にその事について是非を問う訳ではない。ってかそういうジャンルのサイトじゃないし。

ただ単に我々は野次馬根性一心で熊本市にある「赤ちゃんポスト」の現物が見たくなって来ただけの事だ。その病院は熊本駅から北に2キロ程の場所にある「慈恵病院」。なんとなく予想はしていたが、キリスト教カトリック系の病院だ。

「こうのとりのゆりかご」という愛称が付けられた赤ちゃんポストは、2007年5月から運用を開始、2012年現在までに累計83人の新生児(幼児含む)が預けられている。ちなみにカトリックの教義では人工妊娠中絶を禁じていて、ポストの設置もそのへんの教義に基づいているのだろうか。…あれ、ここにポストがあったはずなのに、無くなってますよ。

ポスト設置当初から論議を呼んでいたのは承知の上だったが、まさか撤去されたのかと一瞬勘違いしそうになった。警備員に聞いたら「場所が変わった」だけのようだ。本館の向かいにどう見ても病棟と思えない洒落た洋風建築風味の産婦人科・小児科病棟「マリア館」が建っていた。どうやらこっちにあるらしい。

移転後の赤ちゃんポストの場所もやはり建物の脇の目立たない場所にこっそり入口が置かれていた。住宅街の路地に面しているので前よりはひと目につきやすくなった気がしなくもない。子を捨てる決断をした親がこの扉を開けて中に入る事になる。

一旦扉の内側に入ってしまえば後は茂みに隠れてしまうのでひと目につく事はない。随分メルヘンチックな佇まいの遊歩道が奥に続いている。

そして問題のポストが近づくにつれて、子を捨てる親に最後の決断を迫るかの如く相談窓口の案内看板が置かれていた。そりゃ腹を痛めて生んだ子だけの事はある、何も悩まずにポイポイ捨てる方がおかしい。ここが悩みぬいた挙句の決断の、その一歩手前の段階。

で、これが建物の奥まった一画に設置された赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」の現物。この扉の中に子供を預けたら最後、外からこの扉を開ける事は出来ない。ただ後日思い改まって捨てた子を引き取れる機会はあるが、それにはポストに子供を預ける前に相談窓口に問い合わせる必要がある。親の匿名性を重んじているので、ポストの監視カメラは赤ちゃんしか映らず、病院側からでは親が分からない仕組みになっているからだ。

預ける事が出来るのは生後2週間までの新生児に限られるが、それも子を捨てる側の判断に委ねられている。ちなみにポストに預けられた子供のうち6人が1歳以上の幼児で、捨てに来る親のうち所在が分かった例だけで県内よりも熊本以外の九州や関西、関東からわざわざ来るケースも多い。理由は様々だが「世間体」「未婚」「不倫」「生活困窮」が主なものとなる。

慈恵病院の赤ちゃんポストはカトリック教徒の多い「赤ちゃんポスト先進国」であるドイツを参考に設置されたもので、ドイツ国内では1999年以降約80ヶ所ものポストが設置されている。一方の日本では慈恵病院以外に一向に普及する動きがないのを見ると、やはり宗教的というか「子捨て」に対する倫理観念の違いが現れているのかも知れない。

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新日本DEEP案内およびDEEP案内シリーズ管理人兼編集長。2007年「大阪DEEP案内」開設、2008年「東京DEEP案内」開設、2009年「日本DEEP案内」開設、2010年「世界DEEP案内」開設、2013年「新日本DEEP案内」開設。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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