九州新幹線全通によってこれまでよりググッと近くなった南九州。熊本や鹿児島方面は新幹線効果で観光客が増えているようで地元にとっては何よりな訳であるが当然表の観光名所もあれば裏もある。この街には裏名所としてあまりに有名な、全国の出張リーマン親父が足繁く通う「中央街」という場所がある。
中央街とは果たしてどんな場所なのか来てみれば分かるというので、その入口となるワシントンホテル前のワシントン通りにやってきた。ここは熊本の中心市街地にある下通商店街の目と鼻の先にあり、まさしく繁華街のど真ん中である。
ワシントン通りだなんて大それた名前がついた通りだからさぞかし一等地なのかと思ったら早速ド派手な外観の「楽園ビル」が姿を現した。所謂ヘルスビルというやつです。中洲やすすきの、横浜の曙町や埼玉の西川口とかにもありますよねこれ。
周囲のビルを見渡すと確かにそれっぽい建物が見られる。古いお風呂屋さんの看板が残っている。幸御殿と書かれているのが辛うじて読める。もう言うまでもないですね。中央街は熊本の裏名物、博多中洲と双璧を成す九州屈指の色街なのである。
下通商店街のアーケードを外れた東側一帯の「熊本市中央区中央街」は県内有数の特殊浴場営業許可地域。こうした店ばかりがここぞとばかりに密集している様子が分かる。なお熊本県内でのソッチ系店舗は中央街以外では元遊郭の二本木と八代市にそれぞれ一軒ずつしかない。
どの店も基本的に下品でドギツイ外観で遊客の目を引くべくアピールしまくっている。業態も店舗の幅も様々。すぐ傍らには商店街を闊歩する熊本市民の姿。彼らの視界にも入るであろうピンクゾーンは見て見ぬふりか。
中央街に入るとさっきまでの商店街の活気が嘘のように人通りが消えて、路上にいる人間は客引きのボーイばかり。早朝でも一部の店は開いていて油断はならない。獲物を狙う肉食獣のような目つきで「遊びませんか?」などとすぐに声を掛けてくる。
古き良き昭和を思わせる城郭風デコレーションが施された旧時代的趣きの店舗。改装されたとは言え悪趣味な蛍光色で瓦屋根が塗り替えられている光景はやはり異様。
そんな怪しすぎる街にはつきものの精力剤関連が充実してそうな老舗の薬局「大阪薬品」の建物。非常にそそられる。だって表の看板が「スキンレススキン」だもん。明らかに狙いすぎだろ。
大阪薬品の店舗横にある色褪せた「新グロモント」のレトロ広告看板。ガンバラナクッチャ!こんな場所で一体何を頑張るのだ?!
しかし中央街の中で最もコアな一画は銀座通り一本南側のこちら。ここは100%その手の店しか存在しない。女子供はすっこんでろエリアである。さすがに昼以降は客引きだらけでまともに風景写真も撮れやしないので頑張って朝5時半起きで行きましたよ。
熊本で特徴的な「空港系」と呼ばれる店の一つ。当方はソッチ方面の専門サイトではないので詳しい説明は省くが入浴料じゃなくて「御搭乗料」になってる所が笑える。
色んな店があって目移りしてしまいそうになるが熊本中央街の存在を日本中に轟かせている伝説的な店がこの通りにありまして…クラシックで豪華な佇まいは他店の存在を霞ませる。
この店の前だけは客引きの姿は皆無で、あまつさえ「完全予約制」と看板には書かれている。常連の紹介でしか入店出来ずサービスが物凄いだの何だので評判が高いらしい。貴方のお宅のお父さんも熊本出張の時にはこっそり通ってるかも知れませんよ。お気をつけ下さい。
なんで熊本の中央街がこんなエゲツナイ場所になっているかというとその歴史は戦前にまで遡る。ここら一帯は高田原(こうだばる)と呼ばれ江戸時代には熊本城下の武家屋敷があった一画だが大正時代に特飲街となっている。これらは戦災で壊滅、戦後の区画整理で中央街に改められ、やはり色街として栄える事になった。
駐車場だらけの歯抜け土地の一部に古い連れ込み旅館がまだ残っている。「内湯完備 旅館のんきや」の看板。多分見た目にはさっぱり営業してなさそうですが…現在の中央街はラブホ的な宿泊施設は皆無で、川向かいの九品寺にある程度固まった一画がある程度。
中央街に連なるお風呂屋さんの店舗群、日が暮れると本領発揮。ネオンサインもかなりド派手で素晴らしい。だんだん人通りも増え始めた。男ばっかりだけど。
現在も熊本中央街には50店舗程がひしめいていて、九州新幹線開通によりさらなる客の増加を見込んで強気の構えでいるようだ。熊本出張中のサラリーマンのお父様も夜は中央街に行って肥後もっこすでくまモンモン、でございます。益々の発展を心よりお祈り申し上げます。