タコライス発祥の地!米軍基地キャンプハンセンの門前町、金武町新開地「パーラー千里」で食ってきた

本島北部

先日、沖縄県国頭郡金武町において「タコライス」の発案者でキングタコス創業者の儀保松三氏が逝去したとの一報を聞いた。タコミートを基本にチーズやレタスやトマト等タコスの具材を白米の上に載せサルサソースをぶっかけて食うスタイルのこの料理は、昭和59(1984)年に儀保松三氏が当時の円高傾向で外食を控えるようになった米兵向けに、安くて腹一杯食える料理をと考案されて作られたものだったという。

国頭郡 金武町

ともあれ、儀保松三氏の存在は金武町にとっては有名で、米軍基地キャンプハンセンの門前にある歓楽街「金武町新開地」には同氏が創業したキングタコス本店の他にも、「ゴールドホール」という同氏の元邸宅兼施設博物館なんかもあったりして、色々と面白い。今回は儀保氏追悼も兼ねて、金武町新開地あたりを改めてご紹介できればと思う。

そんな金武町なんですが、那覇市から車で1時間掛かる場所なので、レンタカーでも借りないとおいそれと来られる場所ではない。本島北部の東海岸、普天間基地の移設先として話題の名護市辺野古地区の15キロ程手前にある。

国頭郡 金武町

で、久しぶりにやってきた金武町新開地、その入口にはアメリカの星条旗と日本の日の丸が掲げられたアーチ看板があって、のっけから植民地感半端無かったりするんですが、1970年代のベトナム戦争の時代にわっさわさと米兵がやってきてはこの繁華街で飲んだくれていたような場所で、今はすっかり寂れてしまっている。

国頭郡 金武町

金武町新開地の入口付近には現在でも米兵や地元民が御用達の飲食店やらその他様々な店舗が軒を連ねているが、このへんの建物がすっかり古びてしまっているのも、1970年代からさほど変わっていない街並みである事を示している。

国頭郡 金武町

金武町新開地の中心にある広場の片隅に案内図が置かれているのだが、ここの右上にもタコライスの成り立ちについての説明が。タコライス自体の知名度も沖縄メシの中では割に主要な位置を占めている訳で、観光でわざわざ金武町までタコライスを食いに来る客もいる程だから、食文化として定着していると言っても良さそうだ。もう「なんでタコが入っとらんのにタコライス言うねん!おかしいやろ」とツッコミを入れる人も居ませんよね今どき…

国頭郡 金武町

ベトナム戦争時代に建てられたこれらの盛り場は、その後米兵の数が減少してゆくにつれ廃業を余儀なくされ、そこに代わりの店が出来る事も少なく、その当時のクラブやバーの艶かしい看板がそのまま残されているので非常に風情に満ちている。コザ辺りならまだ人口も多いので何とか持ちこたえているけど、金武町までやってくるとさすがに道行く人もまばらである。ちなみに辺野古はここからさらに奥地なので、もっと寂れてますよ。

国頭郡 金武町

しかし廃業した店ばかりかというと決してそういう訳ではない。現役営業中の米兵向けのバーやら何やらが結構あちらこちらに見られる。こちらのバー、営業時間は金土日の18時半から24時まで。近年は米兵による暴行事件なんかが明るみに出る度に門限が厳しくなるご時世なので、あんまり夜遅くまで商売できないらしい。

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それにしても見慣れたシルエットが気になる訳であって、こういう形式のお店って沖縄には多いですよね。さすが日本のアメリカ。

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そんな寂れ気味な元繁華街の至る所に米兵や地元民が買い食いできるテイクアウトコーナーを備えた飲食店が営業している。やきそばとかフライドポテトもあるけど、主役はタコスとかハンバーガーとかバーベキューライスとか、典型的なアメリカ飯である。寂れてても子供の姿がやたらと多いのも沖縄の特徴。少子化問題?なにそれ。

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これだけ田舎町なのにかなりの数の飲食店があるので未だに米兵の需要も高いのだろうが、ほぼ食えるものと言ったら肉とポテトとタコスしかないので、食文化的には完全にアメリカナイズされた感じと思えば良い。逆に言えば金武町新開地こそが「沖縄の中のアメリカ」を最も忠実に残している街であると言える。

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大体どのテイクアウト店も料金表を見ると日本語と英語、日本円と米ドルの両方が併記されているのが特徴的。ここはかなり前に廃業した店のものらしく、1ドル200円換算になっている。200円台だったのは1985年頃までの相場で、これ以後円相場は1ドル100円台から戻っていない。円高傾向を契機に考案されたというタコライス誕生もそのくらいの年代だ。

国頭郡 金武町

金武町新開地の片隅にある「キングタコス金武本店」の店舗。最近移転したらしく真新しい店構えである。キングタコスは沖縄本島に複数箇所店舗を構えていてこの手のチェーン店では最も有名な存在。ちょうど昼時に来た事もあってか結構繁盛してますね。ここも元祖店舗を自称しているのだが、我々が食いに行ったのはここではなくもう一つの店舗である。

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キャンプハンセンの正面ゲートに近い側にもう一つ、下町のお好み焼き屋みたく懐かしい佇まいのタコライス専門店がある。やはり他の店舗同様玄関横にテイクアウト専用カウンターがあって持ち帰り客が並んでいる。店の看板には「元祖タコライス発祥の店 SINCE 1984」と書いてある。

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こちらは「パーラー千里」という屋号だが、実はここもキングタコスの店舗で、どちらも経営者は同じ。「キングタコス1号店」とも書かれているので間違いなくここが発祥の店らしいんですが、紛らわしいっすね…キングタコスという屋号を付ける前に初めて儀保松三氏が「パーラー千里」名義で店を開いたのがここ、という事らしい。

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そんなパーラー千里の「タコライスチーズ野菜」(600円)を実食。やはり米兵相手の店だけあって物凄い量を載っけてこられます。でかい皿にレタスとチーズがはみ出そうなくらいドッサリと盛りつけられるので日本人の胃袋にはかなりエクストリームな感じですが、これが金武町新開地で長年愛されてきた元祖タコライスである。テーブルの上にサルサソースがあるので適当に味を調節しながら食う。これだけで腹持ち良すぎて晩飯も控えめにせざるを得ない程だ。

米兵向けに考案されたコスパ重視の料理という当初の原則を実感できるパーラー千里の「元祖タコライス」…ご馳走様でした。


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