広島駅前大須賀町・戦後のドサクサ的飲食街

愛友市場のような戦後のドサクサ的市場が未だに残っていたり、戦後の香りが色濃く残る広島駅前。広島駅近くの大須賀町にも戦後に建てられた飲食店街が見られる。

広島駅前を西に歩き広島東郵便局の裏側に回ると目当ての物件がある。3階建ての住居兼店舗の長屋が細い路地に面して整然といくつも並んでいるのだ。ただならぬ気配が漂う。ちょっと入ってみよう。



表側から見ると5つの路地が長屋の間から口を開けている。これだけでも相当インパクトがある光景だがその中でも最も線路側に近い一番右側の路地がそそられる。

その路地へ足を踏み入れる。古い長屋は長屋でも3階建てともなると圧迫感が違う。しかもこの路地だけ一段と狭くなっていた。傍らには公明党のポスター。ほのかに漂う戦後の香り、それは貧困の時代の残り香とも言える、なんとも言えぬ負の香り。

待ち受けていたのは人もすれ違うのに気を使う程の狭い路地の両側にひしめくスナック街の看板達だった。この場所だけ時代の流れから抗うかの如く風景を留めている。ここは一体何なのだ…

そしてこの渋すぎるスナック「恋鳥」の店構え。まさしく赤線地帯と言わんばかりのテンションである。

いや、これは戦後の赤線地帯に違いないだろう、そう思ってネット上で調べたら昭和27年の参議院会議録情報なるものが出てきた。そこには「大須賀特飲街」とはっきり明記されている。

当時の会議録を掻い摘んでみると戦後すぐの頃から街娼が溢れるようになった広島駅前、そんな中で出現した特殊飲食街という事らしい。一部以下に引用する。
第013回国会 厚生委員会 第27号」より

広島駅前を囲繞する散娼は終戦後新らしく営業され、年々その数を増加したもので、駅前通りは勿論、列車ホームにまで進出する状態となつたのでありますが昨年の国体開催を機として駅前浄化運動が起り、駅前の散娼を一括して集娼地帯に移転し、都市計画に伴う駅前敵娼地域の消滅を期したのであります。


この集娼地帯をどこに作るかで揉めて、旧練兵場(基町)、西遊郭(小網町)等の候補地が上がったものの決定打がなく結局大須賀町に作る事になった。地元では婦人団体までも押しかけて大きな反対運動も起こった。広島駅前に散在する街娼を大須賀特飲街にまとめて風紀的問題を解決すべきであるという市当局や警察の見解と、特飲街の設置そのものに反対する地元住民や婦人団体等の意見との間で揉めていた事が伺える。

で、この胡散臭さ全開の飲食店街が当該の大須賀特飲街の成れの果てなのかという事実を結ぶ確たる証拠は今ひとつ掴めない。住居表示が変わってさえなければ今の大須賀町の区域でそれっぽい場所はこの一ヶ所しかない訳で、殆どビンゴだと思うんですがね。

まあさすがに今はこうして普通にお好み焼き屋があったりもする場所ですしね。

飲食店街のゴミ集積場には各店舗毎に決められたゴミバケツが整然と並べられていた。なんかちょっと異様な光景ですなこれも。

他の路地にも入るとやはりスナック街がメインに使われている。洗濯物も干されているしそれなりに住んでいる人もいるっぽい。これだけの規模があれば何か固有名詞はないものかと思うのだが、特になさそう。大須賀町の飲食店街と言うしかない。

戦後の建築らしい、2階部分がせり出した構造。狭い土地を少しでも広く使う為にこうなってる訳ですな。他の路地裏横丁でもよく見ますねこういうの。

飲食店ばかりかと思っていたらそうでもない。歯医者さんもいるようだ。しかしそれにしてもこんな渋い歯科医院の玄関口、なかなか他ではお目に掛かれない。

オンボロ飲食店街の背後にそびえるのはホテルニューヒロデン。近くの城北通り沿いには代ゼミだの何だのちょっとした予備校銀座になっている。駅裏的な風情が強い。

飲食店街の西側入口。廃業した散髪屋のテント屋根やアーチ看板の残骸などが残る。こっち側から見ると特飲街というよりも商店街っぽいんですがね。

で、こちら側にもやたらめったらお好み焼き屋が多いというのがいかにも広島らしい特徴なのであった。昔の大須賀町はドヤ街だったとかアレだったとか色々ネット上には書かれているけど実際どうだったんだろうね。

北側の線路に面した一画は駐車場になっていた。遠目に眺める飲食店街の建物もなかなかの壮観。確かに長屋のようだが窓の位置や外壁などはてんでんばらばらになっている。

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新日本DEEP案内およびDEEP案内シリーズ管理人兼編集長。2007年「大阪DEEP案内」開設、2008年「東京DEEP案内」開設、2009年「日本DEEP案内」開設、2010年「世界DEEP案内」開設、2013年「新日本DEEP案内」開設。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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