【ほぼブラジル】愛知県知立市・ブラジル人出稼ぎ労働者が多数派になってしまった「知立団地」を見に来た

人口減少社会に突入したと言われて久しいこの日本、島国である事もあって日常的に「外国」を意識して暮らす機会のない日本人も多いわけだが、もはやこの国の社会が“外国人労働者”の存在なしでは成り立たなくなっている現実は、保守派の安倍政権下においても海外からの単純労働者の受け入れを認める事実上の「移民政策」に方針転換した最近の動きから見ても否定しようがない事である。

で、そんな外国人労働者が多く暮らすのが“保証人不要”で身元の不確かな人間でも比較的楽に入居できるUR都市機構の団地なのであーる。今回やってきたのは愛知県知立市にある「知立団地」。名古屋の郊外、知立市の東部に位置し、高度経済成長時代真っ只中の昭和41(1966)年に日本住宅公団が造成した古い団地だ。

ここも豊田市の保見団地同様、入管法改正後の90年代からじわじわとブラジルなど南米系出稼ぎ労働者が古い住民に変わって入居し始め、現在では約6,300人が暮らしている団地住民の半数近くが外国籍ではないかと言われている。 団地の誕生から既に半世紀が過ぎて当初の住民も世代交代しているが、若い世代はブラジル人ばかりという事らしい。

知立団地自体は名古屋駅から名鉄で片道30分余りで来られる最寄りの牛田駅から徒歩圏内にあるが、ここはトヨタ自動車を頂点とする自動車産業の集積地、西三河エリアの中にある。住民の多くが自家用車所有がデフォとなっている土地柄だが、非正規雇用に甘んじる低所得者層の中には自家用車を所持できる経済力もなく、公共交通機関を利用する者も多い。

去年2018年3月には近隣の名鉄三河線三河知立駅構内で殺人事件が起きたが、その犠牲となったのがこの西三河地域の自動車部品工場に勤めるベトナム人の派遣労働者で、犯人として捕まった男3人も同じベトナム人だった。まさしく社会の最底辺を外国人労働者に依存している、工業県・愛知の闇である。

“古い団地あるある”な、お宅の窓が公明党か共産党の掲示板になっているパターンもこちら知立団地ではバッチリ見られる。しかしこの団地の住民のその多くが選挙権とは無縁の外国人労働者となってしまった。いずれこの光景も「窓からブラジル国旗」に代わるのだろう。

保見団地でも見られたように、この知立団地内にあるゴミ集積場や駐車場などの注意書きの札なんかもいちいちポルトガル語併記が徹底されている。人口7万人余りの小さな街である知立市は、その人口の6%にあたる約4,300人が外国人(2017年現在)。県内トップクラスの多国籍自治体である。

“新入生49人のうち41人が外国籍”の衝撃、知立東小学校

そんな知立団地の外れにある「知立市立知立東小学校」。団地と同年代に開校し、同校の学区には知立団地のある昭和地区が含まれている。一時期は生徒数1,400人を越えたマンモス校でもあった学校だが、現在の生徒数は290人。今年2019年度の新入生となる見込みの49人の児童のうち、41人が外国籍であるという衝撃的な報道があった。2018年度の時点で生徒290人中172人が外国籍らしいので、既に日本人は少数派である。

団地の恒例行事でもあった夏祭りの盆踊りがサンバに変わってしまった、という話まで聞く、日本最強クラスの移民だらけの団地を歩くと、確かに通り掛かる人々も高齢者以外は“ほぼブラジル”感満載である。もはやパスポートなしで地球の裏側に飛んできた錯覚すら感じるわけですが…

団地住みの児童が集まる「昭和児童センター」の駐車場も日本語とポルトガル語併記。ここで育ったブラジル人の子供達は将来どんな人生を送るのだろうか。大抵は自らのアイデンティティの曖昧さに苦悩すると聞く。昔に遡れば中国残留孤児の子孫からなる「怒羅権」だとか、最近全国的にやたらと増えてるネパール人だって、東京ではその不良少年らがグループ化して「ロイヤル蒲田ボーイズ」とか言ってるし、今後はああいうのがどんどん増えていくものだろう。

完全にブラジルの“Mercado”化してます、知立団地商店街

せっかくなので、かつてのマンモス団地の中央に佇む商店街「知立団地商店街」にも訪れておこう。ここも見た目には何の変哲もない団地の商店街にしか見えないかも知れない。しかし一歩中に入ると全くその様子が違うことがわかるだろう。

この知立団地商店街でも古い店舗が軒並み廃業してシャッター街化してしまっているのは“車社会上等”な愛知県なので致し方ないのだが、その代わりに見られるものと言えば、ブラジル人が経営する店舗の数々や、外国人住民の便宜のために置かれたテナントばかりである。

団地内にはブラジル人住民向けの託児所もある。非正規雇用によって低収入に苦しむ懐事情から夫婦共働きも珍しくないブラジル人世帯の間では、このような施設に我が子を預けなければ生活もままならない事が伺えよう。

さらにこの商店街には「もやいこハウス」という知立市が設置した多文化共生センターおよび多目的交流センターまである。地球の裏側からやってきた異国の人々と長年日本しか知らずに暮らしてきた土着の老人とでは文化や言語の壁の隔たりがハンパなものではない。ここが“多文化共生”の最前線か。

そして商店街とその周囲にたむろして談笑していたり買い物しているのも、みんなブラジル人っぽい。ここは本場ブラジルの“Mercado”がそのままやってきたかのような生活空間。

商店街各所に掲げられた案内看板や注意書きの類も全てポルトガル語併記が徹底されていて驚くばかりだ。ポルトガル語のお勉強にもなること請け合いですね。「ポルファボール」と「オブリガード」しか言えませんけれども、ええ。

知立団地商店街で味わうブラジルの食文化

知立団地商店街の核テナントでもある「にぎわい市場マルス知立団地店」もちょっと普通のそんじょそこらのスーパーとは一味違っている。団地内唯一のスーパーだけのことはあって利用者も多いんですが…

店内各所に置かれている商品がいずれもブラジル人住民向けの南米フードの数々ばかり。ブラジルの国民的飲料「ガラナ」のくそでかいペットボトルも大量陳列されていて、いやがうえにも“現地感”を漂わせているのだ。

南米の食生活に見合った、でかい肉の塊だとか、ブラジル人の好物おやつ「ポンデケージョ」もでかい袋で売られていたりして南米食材の豊富さには目を見張るものがある。外国食材好きにはたまらない品揃えであろう。

しかしこのスーパー、そもそも店内からしてちょっとおかしいテンションの張り紙がベタベタと貼り付けてある件、“変な店”を自称している通り、独自戦略で他の大手スーパーとは一線を画する存在感を放ちたいそう繁盛している「マルス」。本店は東浦町にあり、知多半島と西三河に複数店舗を構える。

商店街の一角にブラジル料理を扱っている喫茶店「Cafeteria Familly」がある。ちょっとこのへんで一服しますかね。店の外観の“現地感”もさることながら、当然ながら店員も客もみんなブラジル人ばっかりです。

店内ではブラジル感満載な「肉が大量に挟まったサンドイッチ」が600円出せばあれこれ食える。「Pernil」は豚ももハムが、「Calabresa」はピリ辛ソーセージが、「Carne louca」はピリ辛に煮込んだ牛肉が挟まったサンドイッチという認識で良い。南米の食い物と言えばとにかく肉とパン、そういう印象しかない。

結局ガッツリ食べたいほどでもなかったので、ブラジリアンコロッケ「コシーニャ」やらブラジリアン餃子「パステウ」などと、あとはドリンクだけ頼んで食ってましたけどね。食卓の上も完全に“地球の裏側”仕様。

居合わせた団地住まいと思われるブラジリアンキッズもお食事を終えてご機嫌モード。地元の小学校にも馴染めているのだろうか…と一瞬頭をよぎったが、むしろ日本人の子供の方が馴染めずにいじめに遭ったりしないのだろうか、といった心配に気が向くところである。

愛知にはこちら知立団地や保見団地に加え、名古屋市の九番団地なども含めて外国人だらけになった団地が多数存在する。“多文化共生”といった綺麗事だけで済めば楽なものだが、その当事者は不安定な身分で暮らす事となるため“職業”をはじめとして何か一つ生活の足掛かりを失えば「闇落ち」する危うさを忍ばせている。

必要に迫られてはいても「移民を受け入れる」というのは、やはり覚悟の必要な行為なのである。未来の世代に禍根を残してはならない…って、今更そんな事言っても手遅れですかね。


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新日本DEEP案内およびDEEP案内シリーズ管理人兼編集長。2007年「大阪DEEP案内」開設、2008年「東京DEEP案内」開設、2009年「日本DEEP案内」開設、2010年「世界DEEP案内」開設、2013年「新日本DEEP案内」開設。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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