人口の16％が外国人登録者という驚異的な自治体がある。日本最大のブラジリアンタウン、群馬県邑楽郡大泉町だ。大泉町の中心地である西小泉駅の近くに、日系ブラジル人が集まるショッピングセンターの存在がある。
それは「ブラジリアンプラザ」というそのまんまな名前の施設。2階建てのこじんまりとしたショッピングセンターなのだが、この場所が大泉町の在日ブラジル人社会の中心的存在であることが、この建物の中に入ってみると分かるはずだ。
店の前にもブラジル人の姿がちらほら。あまり日本人客が来ないからなのか、我々が店に入ろうとすると初老のスタッフであろうお爺さんが「2階に行けば色々食べる所ありますよ」などと気さくに話しかけてきた。
建物1階は電器屋やら土産物屋やらが入っているが、ポルトガル語OKのスタッフがいるのでブラジル人も安心して買い物が出来るといったところだ。
入口右側に2階へと続く階段とエスカレーターがある。「ブラジル風ハンバーガーショップ ボン・バーガー」の看板が置かれている。見てみると日本語でメニューが書かれている。案外、我々のようにひょっこりブラジリアンタウンの噂を聞きつけて来るような日本人客が多いのかも知れない。
「申し訳ございません。階段を上って来て下さい。」などと書かれている通り、エスカレーターはあるものの使われていなかった。この建物、元は普通のスーパーだったのだろうか。
階段を上った先には全く季節外れな「Merry Christmas」のネオンがぶら下がっていた。その横には大泉町と太田市の案内図がポルトガル語で記されている。
電器屋やらがある1階と比べて2階は食料品店やらバーやら飲食店やらが雑多に置かれている。MATSUMOTOとあるのは経営者の名前であろう。中に入るとブラジルで買える食料品はだいたい揃っている感じだ。
考えてみれば日本からすればブラジルは地球の裏側にある国だ。そんな遠い国にありながらブラジルと日本は戦前の開拓者移住の歴史から繋がっている。ちなみにブラジルに移住した日本人のうち沖縄出身者が半分を占めている。
2階中央部はフードコート兼日系ブラジル人の憩いの広場となっている。たまたま訪れた日が休日の午前ということもあるのだが結構人が多い。顔はそのまんま日本人だが言葉はポルトガル語だったりして奇妙である。ブラジルとの混血が進んだ顔立ちの人も珍しくない。一通り見回したんですが我々以外全然日本人がいません。
中にはブラジル料理食べ放題バイキングの店まである。1000円で食べ放題ならコストパフォーマンスええやないかと一瞬考えたものの、並べてある料理を見るといまいち微妙だったのでやめた。ブラジリアンな方々は皆一様にテンション高めな感じで行列してましたが。
広場の真ん中にドラムセットが置かれていて、ライブでもやるのかといった所だが、その横にはビンゴゲームの景品らしきものが置かれている。ブラジルの国民的ドリンク「ガラナ・アンタルチカ」が景品にあるのはさすがといったところだが一方で自転車があったりするのもなんだか実用的な景品のチョイスだ。
キティちゃんのぬいぐるみが大量に置かれていると思いきやアルファベットで日本の女の子の名前がそれぞれ付いている。なかなかインターナショナルなセンスである。
2階の一番奥には、1階で看板を見た通りのハンバーガーショップがあった。ブラジル風ということで普通のハンバーガーとは一味違うのだろう。期待を込めてオーダーをする。
一応ここは日本国内なので「日本語でおｋ」だそうだ（笑）
思いっきり日本語でシュラスコバーガーを注文してみた。
やってきたハンバーガーは自分でケチャップ・マスタード・マヨネーズをお好みでかける形式。シュラスコバーガーはまさに「肉を食っている」感触だ。どこぞのマクダーナルでは体験できぬ。ちなみに飲み物には先ほどのスーパーで買った「ルクマ」という謎のジュースを選んだ。飲むと栗の風味、後から柿のような味がする。微妙にミルクセーキっぽくもある。これは南米でもペルーあたりでしか食えない果物である。
フードコートの片隅には日本とブラジルの交流を紹介したパネルが展示されている。
やはり大泉町は日本における日系ブラジル人社会の最先端地区のことだけはある。言葉が通じなくともお互い違う立場の人間同士のコミュニケーションが成り立たなければ必ず禍根を残す。例えば自動車産業で乱雑に労働移民を受け入れた東海地方では教育インフラの整わないブラジル人家族の子供がグレて不良化したり色々と問題が起きている。
トヨタショックで外国人労働者も職にあぶれてしまっているのでなおさら大変な事になっているだろう。日本人でさえ不況で首を吊ってしまうご時勢、さらに立場の弱い彼ら日系ブラジル人を取り巻く環境も決して良好とは言えない。
