遠方に取材旅行が出来る見通しも立たないコロナ禍に入って二年目の“夏休み”…しょうがないので昔訪れた場所の写真をヤキモキムラムラしながら見ておりますが、今まで訪れたところの中で“旅情を誘う土地”というものを挙げろと言われたならば、その昔に海上交易で栄えたものの今となってはすっかり取り残されて激寂れになった港町みたいな場所を思い起こすもので、まだ書ききれてなかった土地があった。
2013年春、我々は九州周遊取材を企てて至るところを訪ね歩いていた。やってきたのは熊本県の天草諸島だ。長崎・島原と並んで、日本国内で最もキリスト教文化が浸透し、隠れキリシタン集落を多く抱え、“からゆきさん”などと呼ばれた女性など、東南アジアへの出稼ぎ移住者が住んでいた土地。天草諸島のうち主要地域を成す上島と下島は九州本土からは橋で繋がっているものの、これから紹介する場所は天草諸島・下島の南端部にある「牛深」という港町。