静岡県という土地は東西にひたすら長い。東海道線で18きっぷを使った貧乏旅行をしていても、東名高速で走破しても、この静岡県の区間の長さに毎回あくびが漏れる。しかし最近になって新東名高速道路が御殿場と引佐(浜松市)という静岡県の東西両端部の区間に開通し、そのだるさが若干軽減された。そんな静岡県の最東端部、東京からわずか80キロ圏の位置にある富士山麓の高原都市、御殿場市へやってきた。東名高速を使うと東京インターから僅か1時間。近い。
東名高速ですっ飛ばしてきたものの、向かったのはJR御殿場線御殿場駅前。ここは小田急線直通の特急あさぎりが停車する駅でもある。富士登山客の出発点でもあるため観光客がやけに多い。なおさら富士山が世界自然遺産に登録されてしまったものだから、景気が良さそうな地域である。そんな御殿場だが、東富士演習場や自衛隊関連施設が多数ある関係で「軍都」としての側面も持っている。
今回は御殿場の街をひたすら歩き回る事が目的でやってきたのだが、まず駅前の商店街を通り抜けて「新天地」と呼ばれるスナック街を目指していく事に。まず駅前の「マイロード商店街」に入ってみる。一歩駅から離れると観光客の姿も消えて、なんだか寂れた佇まいとなる。
御殿場と言ったらプレミアムアウトレットだの何だの、おスイーツ要素が強い街だと勝手な先入観を持っていたが、駅前風景は鄙びた中華料理屋やパチンコ屋があるなど総じて男臭い。だって軍都だもの。
駅前一等地に君臨するパチンコ屋の建物に同居する映画館「マウント劇場」が気になってしょうがないですね。パチンコ屋のネオン看板と映画館の看板が一体化してますよ。目の前に富士山があるからマウント劇場なのか。安直なネーミングだけど、隣のパチンコ屋も「パチンコマウント」(MAUNTO)だった。しかもローマ字表記。
さすが軍都と思わせるのは映画館の入場料金の区分に「大高生・自衛官 1500円」という項目がある点だ。場所柄自衛官御用達だったんでしょうか。それはいいんだけど、表に「コクリコ坂から」の映画ポスターが貼られたまま営業休止している件。「都合によりしばらく休館致します」の張り紙まである。一応ここ、御殿場市内唯一の映画館だったらしい。タッチの差で潰れてしまったか…
そんなマウント劇場の脇から路地裏酒場が突然現れる。高原都市御殿場と聞いていたけど軽井沢あたりのイメージとは全くもって真逆な街並みでした。昼間なのに居酒屋はガンガン営業中、オッサンどもが酔っ払って奇声を発していました。
御殿場市や隣の裾野市は工業都市でもある。東名高速道路が走っている関係もあって工場誘致も盛んで、駒門工業団地をはじめ市内にはいくつも大規模な工場が立ち並んでいる。そう言えばアキバ無双をやらかした加藤智大が住んでいたのも隣の裾野市にある人材派遣会社の借り上げ寮だった。あいつは自動車工場で派遣社員やってたんですね。
そういうブルーカラーでガテン系な街なので盛り場も男臭くならない訳がないという事か。ともかく街の規模に対して飲食街はかなりでかい。これは期待できそうですねお父さん。
そんな飲食街の路地の電柱に貼り付けられた、一見イラストはほのぼの系のようで書いてる事が厳しい注意書き看板が存在感を示している。
「みんなが見ている 街をきれいにする人は慕われるが、街を汚す人は罰せられるよ。」
同じ静岡県でも車社会な東海地方の息がかかった浜松あたりとは違って駅前を中心にしっかり発展している街並みは首都圏のそれに近い。御殿場駅から特急あさぎりや高速バスを使って新宿まで1時間40分で出られてしまう。御殿場は実質「関東近県」です。