杜の都・仙台にやってきて、仙台で最大の歓楽街はどこかと言われたら「国分町」しかない訳なのである。そこはあらゆる夜のお店がここぞとばかりに密集する東北最大の解放区。
広瀬通沿いに歩くと北側に国分町と大きく書かれたゲートが現れるのですぐに分かるはずだ。仙台駅からも歩けない距離ではない。
国分町通りに入ると、居酒屋、牛たん料理、スナックからキャバクラ、ピンサロに至るまでありとあらゆる飲食店街が両側にひしめく。夕方頃から金髪頭のホストやキャバクラ嬢がうろつき回っていて雰囲気はまさしく夜の街そのもの。
行政地名で言う所の国分町のうち二丁目にあたる場所が歓楽街のメインとなっている。国分町二丁目の国分町通りの端から端まで歩くとおよそ350メートルちょい。東北最大とは言っても充分歩き回れる範囲で街を一巡することができる。
国分町にある飲食店ビルの数々はその規模もさることながら外観が奇抜な建物がやたら多い。壁一面に白と青が波打つ「ソシアルビル」。かなり年季が入っている。
東京の新宿歌舞伎町、大阪の北新地などと比べると、やはりどこかしら整然とした印象がある。国分町通り沿いには幅広の歩道が整備されていて、歓楽街独特の殺伐とした空気もさほど感じられない。
街中至る所にキャバクラがひしめいているので店探しも楽ではなさそうである。飲食店や風俗街などをまとめると国分町だけで約3000軒の店があると言われているが、バブル崩壊後の客足の落ち込みで廃業した店もあるので正確にはよく分からない。
キャバクラだけかと思ったらピンサロも紛れていたり非常にバラエティに富んだ歓楽街。仙台では国分町一ヶ所にこの手の店が固まっているので、ある意味分かりやすいわな。
定禅寺通りに近い「ライオンビル太陽館」の建物は国分町通りの中でもとりわけ目立つ存在だ。1階にはコンビニも入っているが、その上はびっしりとスナックやキャバクラ、いかがわしいセクシーパブなどが密集しまくっている。
ライオンビル太陽館の店舗一覧。ビルの名前の通り、頭上にはライオンの顔が掲げられていて、その下の店舗一覧看板は虹色に輝いている。まるで歓楽街国分町における百獣の王を自称するかのような佇まい。
しかしこのビル、元は仙台警察署があった所なんですね。この極端な転身ぶりにあんぐり。
国分町が今のような歓楽街となったきっかけが明治時代にある。幕末の戊辰戦争で仙台藩が敗れ、仙台城が明治政府に接収され軍隊が駐留するようになった事に伴ない、官軍の要請で国分町に遊郭が築かれたというのだ。
歓楽街の北端となる定禅寺通。この大通りも例外なくだだっ広い上に街路樹が整然と並んでいる。
国分町通りはそのまま北へ伸びて行くが、歓楽街の風情はすっかり抜けきってしまう。仙台は実にこじんまりとした都会である。牛たん定食の「旨味太助」など、飲食店が立ち並ぶ稲荷小路付近には怪しい風俗店がちらほらと建っている場所がある。
国分町通り寄りには飲食店に紛れて仙台で唯一となってしまったストリップ劇場「仙台ロック座」の店舗が昭和全開の懐かしい佇まいで残っている。
古びた店構えの仙台ロック座の玄関口。客引きと思われる暇そうなオヤジが一人で座っているが、その背後を見ると「小向美奈子特別公演」の張り紙があって思わず脊髄反応してしまった。まだ頑張っていたんだな。
仙台ロック座を中心にピンク色のオーラが街に漂うかのごとく、周囲には無料案内所などが点在している。ちなみに仙台には他にも「長町DX劇場」というのもあったそうだが、どうやら数年前に廃業してしまった模様。東北の地で仙台ロック座の存在は最後の砦なのだろうか。
仙台ロック座から稲荷小路にかけて無料案内所、焼肉屋などが並ぶ。
再び稲荷小路に入ると、沢山の飲食店の看板と、なぜかよくわからないタマホームの広告を付けた街灯が等間隔で並んでいる。
稲荷小路側にも牛タン屋ばかりに限らず「個室浴場」の看板を掲げる特殊なお風呂屋さんが2軒並んで建っているのが見える。
やはり他の店と同様客引きを店の前に配置しておらず見た目が非常に大人しい。仙台では客引き行為はNGなのだろうか。
そんな事を考えていたら警察による張り紙が雑居ビルの一角に貼りつけられている。「客引き=ボッタクリ」こんなにハッキリ書かれてしまったら客引き行為が逆効果になってしまいかねない。その思惑通りに風俗店の前から見事に客引きが居なくなったのだろう。
国分町にも非常にその手の店が多い事が分かるが、メインストリートの国分町通りを外して稲荷小路や虎屋横丁の雑居ビルにこっそり看板を掲げていることが多い。
虎屋横丁から国分町通りを跨いで西側に出るとそこにも怪しいお店が一軒。「団体様2名様より優待割引」の文字に釣られたのか知らんが、目の前を歩いていた男性二人組が吸い込まれるように地下へ降りる階段に入って行った。
そこから北側の路地に入るとディスカウントショップのドン・キホーテをインスパイヤ(笑)した「癒しの殿堂アロマホーテ」が現れる。
国分町界隈を歩いていると時折見かけるのが「ピンクチラシ禁止」の旨が書かれた警告看板。
10年ほど前、仙台国分町を中心に街中にピンクチラシが貼られまくり、国内最悪の密度を誇る事態となり、宮城県が罰則付きの「ピンクチラシ根絶条例」を制定し街中からピンクチラシを一掃したという経緯がある。
ピンクチラシを撒く以前にピンクチラシを所持している時点で罰則が適用されるという厳しい条例が功を奏したのか、今となってはピンクチラシはどこにも貼られていない。