逃亡犯が長期潜伏していた島は無人化目前の限界集落だった…「オーハ島」上陸記 

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人並み外れた身体能力で警官の追っ手から逃れて市川市行徳からやってきた一人の男はこの場所で何を考えて暮らしていたのだろう、そんな事が気になりだしたらしまいにはオーハ島を実際にこの目で見なければ気が済まなくなってしまった。もはや市橋ガールズを笑えない野次馬根性である。

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オーハ島の集落…とは言ってもアマゾンの未開の部族の村とさほど変わらないようなワイルドな草っ原の生活道路を歩いて行くと、ようやく人が生活している民家を発見した。

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既に家族で住んでいる、といった雰囲気は皆無で、年老いた主人の一人暮らしか何かだろう。テレビかラジオの音だけが静かな島の集落に響いている。裏手には申し訳程度な井戸があるくらいで、所帯染みたアイテムを見かける事もない。まさに清貧ここに極まれりといった生活スタイルだ。

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人家の裏手には沢山の貝殻が捨てられていた。もしかして宗教的に何か意味でもあるのかと思ったが、単に常食してきた貝の殻を同じ場所に捨て集めているだけかも知れない。付近の森にも貝殻の山が落ちている。

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人間の姿は全く見かけないオーハ島の集落に居たのは、やたら派手でケッタイな格好をした野鳥だった。

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普段は人っ子一人寄る事もないであろう、隔絶された限界集落の奥地に我々のような部外者が紛れ込むと村人もさすがに気づくはずだが、それでも出てこないというのは面倒なだけなのか。そう思って先程の人家を素通りして、さらに集落の奥に入っていく。

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生活道路の途中で開けた四つ角の真ん中に、古井戸が顔を覗かせていた。なんだかシュール過ぎる絵である。まるでドラクエの村が現実世界に現れたかのような錯覚に陥った。

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古井戸の底には、しっかりと水が溜まっていた。これがもし飲み水に使えるのなら、市橋くんはわざわざ隣の島までペットボトルを大量に担いで泳いで調達しに行かなくとも、ここで済ませられたはずなのだ。やっぱり、村人に会いたくなかったのだろうかね。

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そんな古井戸を覗いていたら、唐突に村人に挨拶されてしまった。「第一村人発見!」とやりたかったのに、逆に発見されてしまったオチである。しかし警戒されているのかされていないのか分からないが、村人の爺さんは我々馬の骨の探訪を歓迎してくれた。

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爺さんに招かれて来たのは、本人の自宅だった。ここも簡素ながらちゃんとした家屋が建てられている。

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かなりの年季を感じさせる琉球家屋の縁側に案内された我々を出迎えてくれたのは、やはり年老いた主人の奥さんだった。なぜかお茶と菓子までご馳走になってしまった。

オーハ島には島民が1人しかいないと書いているサイトがあったがそれは調査不足である。我々が行った時に確認した限り、少なくともオーハ島には3人は住民がいる。

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恐縮してしまうくらいにもてなされてしまった訳だが、ここでは老夫婦が2人で住んでいて、我々が東京から来た事を告げると、自分の子も東京で暮らしているんだと語った。

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居間と台所が繋がった平屋建ての家は、下手くそな沖縄ネタの映画に出てくるベタな琉球家屋以上にリアルな生活臭が漂う素敵な空間だった。

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庭先にはノニの木が生えていた。恐らくは大昔から何十年も変わらない形で暮らし続けているのだろう。刺激と欲望に満ち溢れた東京での暮らしと、自然以外は何も無い島での暮らし、どっちか幸せなどと推し量るのは野暮な事だ。

老夫婦に市橋くんの事も聞いたが、確かに何度もこの家の前を若い男が行き来していて、声を掛けたりもしたそうだが、それが市橋くんだというのはニュースで初めて知ったらしい。

「まさかあれが犯罪者だったなんて…」とつぶやくご主人。

ちなみにこの奥に市橋くんが潜伏していたコンクリート小屋(米軍の監視小屋らしい)があるのだが、険しい道程なので怪我するとマズいし、やめておいた方が良いと釘を刺された。

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…と言ってる間に待ちぼうけていたらしいボートの船頭から早く戻れと電話が掛かってきた。慌てて集落の生活道路を辿って、浜辺に戻った。その途中にも廃墟と化した家屋が一軒。このオーハ島は近いうちに無人島になるかも知れない、そんな事がふと頭をよぎった。

市橋くんが云々と興味本位で訪れた失礼な我々に色々もてなして頂いて、ネットなんかやってなさそうだがこの場でお礼を言っておきたい。オーハ島への上陸は最高の沖縄土産になった。

※追記:オーハ島は2014年現在、住民が全員島を離れて暮らしているので無人島になってしまったらしい。

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市橋 達也
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新日本DEEP案内およびDEEP案内シリーズ管理人兼編集長。2007年「大阪DEEP案内」開設、2008年「東京DEEP案内」開設、2009年「日本DEEP案内」開設、2010年「世界DEEP案内」開設、2013年「新日本DEEP案内」開設。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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