新潟県という土地は地元にゆかりのある人間でもなければ派手な観光名所がある訳でもないので来るきっかけもなく新潟を中心に存在する「油臭系」というジャンルの温泉がマニアの間では有名という話も実際に新潟に来るまでは知る由も無かったのだが、県北部の胎内市にある「西方の湯」という温泉施設はある種の都市伝説かと思うような噂に包まれている。
「とんでもなく臭い」「うんこ臭い」「日本一臭い」「とにかく臭い」「全体的に胡散臭い」と臭い臭いの連発。NAVERのまとめにも散々な事が書かれている。とにかくこの温泉施設がどれだけ臭いものなのか臭いものには目がない我々日本DEEP案内取材班が実際に現地に足を運んで確かめるしかない。という訳で行ってきた。胎内市の旧中条町にあたる中村浜という地区にその施設は立地している。
日本海の海岸線に近い国道113号を新潟市内から村上方面にぶっ飛ばしていくと突如として現れる不躾にも「温泉」としか書かれていない看板が目印。あまりに地味過ぎてカーナビが無ければ思わず素通りしてしまいそうな程の場所だ。周りには何もなく特に温泉街という訳でもない。
看板に従って敷地内に車を突っ込んでみると確かに正面には「総合会館西方の湯」と建物の壁に直書きされているのが見える。間違いない、我々が探していたのはここだ。
しかしこの場所に来た瞬間から既に「臭い」のである。それも物理的な匂いというより、言い様もない程のこの場の得体の知れない雰囲気。だだっ広い駐車場には温泉施設らしく停まっている車の姿はない。本当に営業しているのか不安になる。
しかしよく見ると正面の塀を越えた先の所が駐車場になっていた。分かりづらい…何やら放置気味な感じで陰気臭くもある。臭い臭いと噂が立ちまくるのも納得させるだけの理由がある。
この西方の湯は宗教法人が経営している施設という事もあって「越後の里 親鸞聖人」と表札が掲げられているのが見られる。温泉施設は広大な敷地を誇る宗教施設の一部という事になっている。
そして敷地内にあるのは何故か寺の山門のような建物。まあ宗教施設なので山門くらいあっても不思議ではないのだが何故か人が通れるはずの部分にはロープが張られている。
山門の内側を見ると鉄格子に窓口らしき隙間が作られているのが分かる。中は物置のようになっているが…昔はここで料金を徴収していたのかも知れませんな。当初は観光地化を目指していたのだろうが、今では随分くたびれて荒れ果てております。
その山門の向こう側から巨大な親鸞聖人像がそびえているのが見えるであろう。何やら急にスケールがでかくなってきた。高さは40メートルもあるという。かなり本格的な立像である。今では人知れず立ちすくんでいるという感じ。
親鸞聖人像の御尊顔を拝見する。形にはなっているがどこか素人臭さが漂っていてお世辞にも精巧であるとは言えない。ちゃんと業者を呼ばなかったのか?と思ったのだがどうもこの施設の創設者が個人で殆ど製作したものらしい。なお親鸞聖人像の成り立ちについて果敢にも西方の湯に宿泊された方のブログに詳細が書かれているので是非読んで頂きたい。なんだか途方も無い話になってきたぞ。
かつては親鸞聖人像の足元から入って「胎内巡り」が出来たそうだがそれも閉鎖されたままになっている。もったいない。せっかく胎内市にあるんだし胎内巡りくらいしたいよね。
まあでも温泉施設の中にいるオーナーに一言言えば開けてもらえるらしいんですが、今回は時間の余裕も無かったので外観を見るだけにしておいた。親鸞聖人像の周囲はお堀が巡らされていて入口には橋が掛かっている。
橋の欄干に記された日付には「平成元年十月吉日」と書かれていた。そんなに大昔という訳ではなかったようだ。バブル期のノリでやっちゃった系ですかね。
そして奥の方に目をやると正体不明のドーム状の鉄骨、その足元には乱雑に積まれた木材やクレーンつきトラック、ユンボ等が置かれている。高さ40メートルの立像を個人で作っちゃう程の所だからそのくらい建設機械があっても何ら不思議ではない。
この謎のドーム状建築物は一体なんの意味を持つオブジェなんだろうか、建設途中で放置プレイをかまされてるような印象だが…よくみると建築中のビルで見かけるような足場が組まれている。
その向こうには「陶芸教室」と看板が掲げられた建物が見えているのだがもっぱら資材置き場に使われている感じ。屋外タイプの業務用冷凍庫らしきものが何台か並んでいるがこれらの用途も不明。