牧志公設市場周辺
国際通りのむつみ橋交差点からアーケード商店街に入ってしばらく歩くと第一牧志公設市場の建物が姿を現す。
「那覇の台所」としてこれ以上有名な場所はない生鮮市場である。地元民に混じって観光客がこれ見よがしに沖縄の郷土料理や海産物を食う場所だ。いかにもな感じがしなくもないが、那覇の商店街の戦後史がぎっしり詰まった場所でもあるので、ここは入らない訳にはいかない。
だがその前に公設市場の周囲一帯も同様に生鮮食品市場や土産物屋などがびっしり並んでいるので一通り見ていかなければ気が済まない。
この付近は観光客と地元民が半々といった感じで、なんとも沖縄らしいチャンプルー具合となっている。
公設市場の表に並ぶ乾物屋には沖縄料理でポピュラーなウミヘビの乾物(イラブー)が吊るされている。沖縄料理屋で出されているイラブー汁は蛇の身が一切れしか入ってないのに2000円くらい取られたりする。琉球王国の宮廷料理に端を発する高級料理だもん、しょうがない。
沖縄でもイラブー汁を出す店が年々少なくなっているらしく、ましてや内地ではまず食える店がない。もし東京とかにあったら教えて欲しいくらいだ。
戦後アメリカから持ち込まれた食文化の象徴、缶入りランチョンミートも大量に並べられている。シーチキンも沖縄料理では頻繁に使われる。調理の手間が掛からない缶詰は共働き世帯の多い沖縄県民の家庭料理では重宝がられる。シーチキンもスパムも箱買いが当たり前らしい。
八百屋はともかく果物屋の品揃えなんかは内地のものと大違いである。スターフルーツにドラゴンフルーツ、アテモヤ、カニステルと、沖縄に来なければ見られない果物ばかり。
公設市場の建物を離れるとアーケード街から外れて、容赦なく照りつける南国の太陽の下に晒される事になる。
その先に建つ古い店舗兼住宅のようなビルはすっかり廃墟化してしまい痛々しい姿を晒していた。那覇の中心地でも栄えている所といない所がはっきり分かれている。
置き去りにされたかのような市場の外れの一角にある食料品店の軒先には店番の猫が一匹。
なんか顔つきまで沖縄人っぽく見えない事もない、店の看板猫。客も来ないので暇そうな表情だ。
第一牧志公設市場の裏手に来ると商店ビルがアーケード街の隙間から姿を現す。「ちとせ商店街ビル」という建物だ。
商店街ビルに足を踏み入れると建物中央が吹き抜けになっているのだが、建物の形状が南国ならではの独特をしていて、なんだか日本にいるような気がしない。
2階から上は住居になっているようだ。このコンクリートの劣化具合や建物のセンスから見ても相当古いビルには違いない。
商店街ビルの中央付近は地元民向けな食い物屋や沖縄そば屋が店を連ねている。観光客の多くは第一牧志公設市場内で飯を食ってしまうので、地元民以外でここまで来る客はあまり居ないようだ。
ちとせ商店街ビル内の店舗で最も目立つのが沖縄そばの「田舎」。看板には宮古そばって書いてるけど350円でソーキそばが食えるという超庶民的店舗。やたら看板や張り紙にフレーズが書かれている。
「田舎」はマチグヮー周辺に複数店舗構えていてどの店も地元民でごった返している。こっちでは日常的に沖縄そばを食うんだから一杯350円が適正価格なんだろう。沖縄料理をファッションと勘違いしている東京あたりじゃ一杯700円取られますけどね。
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