無断放置の千羽鶴と偏向教育の現状…長野市・松代大本営跡「象山地下壕」 

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信州の城下町松代に戦後長らく封印されてきた、忘れ去られてた戦争遺構、本土決戦に備え天皇や政府省庁など国家中枢を極秘裏に避難させる目的で、わずか9ヶ月間の突貫工事で掘り尽くされた象山地下壕。

全長10キロに渡り碁盤目状に掘り抜かれた地下坑道の中のわずか500メートルの一般公開部分に我々は潜入した。坑内は一応ながら電線が敷かれていて、見学者は懐中電灯なしでも歩けるようになっている。

しかし、さすが突貫工事で掘られたというだけあって坑道のどこを見回してもグダグダ状態の岩盤が続く。昼夜を問わない過酷な環境で12時間2交替、それもダイナマイトを使った発破が作業のメインにあったというのだから、そりゃ死人がゴロゴロ出てもおかしくない訳だ。

岩盤の至る所に削岩機で削った跡やロッドの穴の跡が見られる事も、当時の様子がひしひしと伝わる。

そして削岩機のロッドが折れて岩盤に突き刺さったまま放置されている箇所もある。ロッドが折れても、長引く戦況で鉄すら不足していた当時では極力引きぬくようにしていたらしいが、それでも無理だったものが今でも生々しく残っている。

削岩機のロッドで岩盤に穴を開け、そこにダイナマイトを差し込み発破する。散乱した石屑(ズリ)はトロッコに載せて入口まで運ぶ。その作業が延々と9ヶ月間繰り返された。

この「ダイナマイトを差し込む」という危険な作業は朝鮮人が担当させられた、という記述があちこちにあるが、あちらのプロパガンダの混じった証言もあるのでいささか鵜呑みにはできない。

そもそも工事の全貌が極秘だったゆえに、数少ない「証言者」が居てもそれだけで確かな事は決めつけられないはずだが。

太平洋戦争における「日本が悪い、いや違う」という史観がいまだに真っ向から対立しているのも、そもそも「昔のことだしみんな死んでしまったのでよく分からない」という事実が立ちはだかるからであろう。

こういう施設に来て、一方的な「主張」ばかりを聞いて鵜呑みにするのは最も宜しくない。

象山地下壕の中は公開部分を除いて全てこのように金網でびっしり覆われている。非公開部分は戦時中に掘り抜かれた状態のまま、生々しく放置されている。半世紀以上タイムカプセル同然で封じられた坑道は、落盤のせいか大きな岩や石が転がり落ちている。

中には石屑(ズリ)を運び出す為に置いたトロッコの枕木の跡の凹凸までもがそのまま残されていたりする。このズリの運搬には地元住民が「勤労奉仕隊」として無償労働で作業にあたっていたという。

一方で最前線で働く労働者には日本人・朝鮮人関係なく賃金が支払われていたと言われる。

坑道の途中で「非公開部分に書かれた文字等の写真(実寸大)」と称して非公開部分の坑道にある岩盤の写真が掲示された看板が現れる。

そこには「大邱府大邱」と書かれた文字と、よく分からない記号の2つの写真。大邱というのは韓国の地名だという事は分かるが、朝鮮人労働者がここで過酷な労働に勤めていたという事を示しているのだろうか。

さらに坑道は奥へ奥へと続いていく。500メートルなんていうとかなりの長さだ。それが全部天井が狭くあちこちに落盤防止用の支柱で支えられた空間で占められているのだから、心理的な圧迫感がハンパない。

これでもし地震があったら生きて帰れないぞ、なんて思ったりもするのだが、意外に松代付近の地盤は丈夫で、これまでに大きな事故は起きた事がない。だからこの場所に大本営を移転させる計画が立ったのだろうが。

公開部分の坑道は半分程行ったところで一度左に折れ、さらに半分程進んだ場所で終わっていた。全長519メートル。端から端まで歩くのに約5~10分程度。三方を金網で囲まれた場所が終着地点。お疲れ様でした。

この先は我々一般見学者には見る事が出来ない。つまり巨大な象山地下壕の20分の1しか見ていない事になるのだが、一番奥まで来た時には500メートルも見たら充分、早く出たいんですけど…という気持ちの方が強くなってくる。

だがこの象山地下壕の最奥部には、封鎖された鉄柵一面に夥しい数の千羽鶴が掲げられている。見た目にも異様さが目を引く。

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新日本DEEP案内およびDEEP案内シリーズ管理人兼編集長。2007年「大阪DEEP案内」開設、2008年「東京DEEP案内」開設、2009年「日本DEEP案内」開設、2010年「世界DEEP案内」開設、2013年「新日本DEEP案内」開設。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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