口之津 – 石炭輸出で栄えた港、与論島からの移住者、芋扱川遊郭、からゆきさん…戦前日本の暗部 

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口之津町

有象無象の労働者が集住してきた明治時代の口之津には当然ながら遊郭も開かれていた。「芋扱川(おこんご)遊郭」と呼ばれていたものがあって、資料館にはその事も随分詳しく展示がなされている。遊郭通りに妓楼が10軒。万福楼やら花月楼やら色々あったみたいですね。

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しかし笑えるのが「ある旦那の豪遊のあと」と書かれ遊郭の帳簿や明細までちゃっかり展示しちゃってる所である。遊郭の存在を闇に葬る事もなく、歴史資料として展示しているというのが素敵。

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口之津最盛期にあった「ある料亭の看板」。いやはやこういうのが残っているのが生々しいですな。しかしこの資料館に展示されているものは遊郭の事だけではない。別館の2階に移動しましょうね。

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この資料館にわざわざ訪れた理由というのも「からゆきさん」コーナーが目当てだったからだ。からゆきさんというのは、明治時代の主に島原半島や天草などからの貧しい農村の娘が女衒に騙されて東南アジアに売り渡されて何とかかんとかという人々の事ですね。戦後日本となると「ジャパゆきさん」の方が有名になっちゃいましたが、戦前は逆パターンもあった訳だ。

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からゆきさんに関しては昭和47(1972)年に出版されたノンフィクション作家山崎朋子氏の「サンダカン八番娼館」があるくらいで、この女性達がどこで何をしていたか、もう明治時代の事なので殆ど分かってはいないのだが、現在のマレーシア・ボルネオ島のサンダカンに行った人の話があって、ビデオ上映されている。現地にあるからゆきさんの墓とか娼館跡の事とかかなり詳しく説明されていた。

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からゆきさん関係でもう一つ、島原市街地にある弁天山理性院大師堂も忘れてはならない。ここの初代住職がシベリアやインドに巡礼に行った際に行く先々で出会ったからゆきさんに話を聞いたり施餓鬼を施すなどして心の救済を行った、その御礼としてからゆきさんが多額の寄付を行い天如塔の建立に携わったという話がある。大師堂に行くと今でも朱色の字で刻まれた玉垣の数々があり、外国の地名と共に彼女らの名前が刻まれている。

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からゆきさん関係の資料を展示しているのは全国どこを探しても口之津歴史民俗資料館だけ。戦前日本の恥部と言われたような話で、今の時代でもおおっぴらになる事もない歴史の闇。遊郭の事もだけどそのへんの難しい事情をこの資料館は実にオープンに展示している。

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からゆきさんとして生きて現地で死んだ女性の写真や遺品の数々、それに女衒・村岡伊平治の写真などが展示されている。何も知らない女性を騙して密航船に乗せてそのまま外国へ売り渡すという手口で、船底に閉じ込められたまま死ぬ者もいたり、運良く辿り着いても莫大な借金を背負わされて働かされた。それから日本の土を再び踏めた人間は殆ど居ない。100年前の話だが、かなり壮絶。

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クアラルンプールとシンガポールにある日本人墓地の資料まであった。東南アジア方面には明治時代から多くの日本人が進出していたのだ。戦時中は軒並み日本に占領された時期を経験して、戦後は日本人墓地だけが荒廃しながらも残されたという話。その後わざわざ現地に見に行ったんですが、綺麗に整備されていた。からゆきさんの墓というのも沢山あるんですよ、向こうには。

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最後に、おこんご遊郭があった所が今どうなっているかチラ見してきました。歴史民俗資料館から1キロちょい離れた一画に島鉄バスの「おこんご」バス停がある。今来てみると町外れの何の変哲もない場所でしかないんですが。そりゃ明治時代のものが今まで残っている方が不思議なくらいだわ。

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…と、結局資料館しか殆ど見れなかったんだけど、明治時代の富国強兵、イケイケドンドンな時代の日本の、割とダークな側面が色々見られたのが良かったかも、と思えた今回の口之津でした。これを見て与論島や東南アジアにも実際行くきっかけにもなったし。マレーシアやシンガポールの日本人墓地も行ったんですが、まあそこらへんの話はおいおい綴る事にする。

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新日本DEEP案内およびDEEP案内シリーズ管理人兼編集長。2007年「大阪DEEP案内」開設、2008年「東京DEEP案内」開設、2009年「日本DEEP案内」開設、2010年「世界DEEP案内」開設、2013年「新日本DEEP案内」開設。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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