信州軽井沢。言わずと知れた日本を代表する別荘地。ここには首都圏をはじめ色んな地方から金持ち趣味な人間が集まり別荘地を所有し、束の間の夏休みを漫喫する。
日本随一の一大避暑地・軽井沢にやってきた目的は、森の中のカフェでスイーツ(笑)などではなく、今から40年も前に日本におけるテロ組織「連合赤軍」が凄惨なリンチ(山岳ベース事件)で仲間内を12人も殺害した挙句に山中を逃げ惑い、辿り着いた場所…
…あさま山荘事件の舞台、南軽井沢の別荘地「レイクニュータウン」を訪れるためだった。
軽井沢の中心街から車で10分程度の場所にその別荘地は未だに残っている。
レイクニュータウンは昭和36(1961)年に開発が始まり、足掛け半世紀にも及ぶ古い別荘地である。玄関口のご立派なゲートを見るなり「さすが別荘地!」と息を呑むのも束の間、中に入ると表通りに並ぶブティックなどが入居していたと思しきショップ群の建物は軒並み廃墟化していて、見るも無残な姿となっていた。
バブル経済が破綻してはや20年。「兵どもが夢の跡」と言おうか「立つ鳥跡を濁しまくり」と言おうか、金持ち趣味は長続きしないものである。本当に酷い有様。
昭和の時代にはここレイクニュータウンのブティック街も旧軽銀座に次いで人通りの多い場所だったという。今からではとても想像すら出来ない。十年一昔とは言うけれど。
昔これらのブティック群に加え百貨店の三越が巨大な白亜の城「ファッション館」を建てて営業していたが、それも撤退。城も取り壊されてすっかり存在しない。
閉ざされたままの店の扉。もう二度と開く事はないのだろうか。
並んでいる店もブティックや高級雑貨と思しき店もあれば、家具&インテリアの店もある。共通しているのは金持ちをターゲットにした店ばかり。しかしどの店も屋号を残したまま撤退。痛々しい廃墟となっているだけ。
日本における高度経済成長の破綻の縮図が、ここにはある。
廃墟化したブティック街の裏手にはレイクニュータウンの名前通り、人造湖が広がっている。この湖が「レマン湖」だそうだ。
全盛期にはこの湖のほとりで思い思いの時間を過ごす人々の姿でごった返していたそうだが、殆ど廃墟化してしまったブティック街は軽井沢の観光ガイドからも存在を抹消されてしまっている。
「あさま山荘」の因縁がそうさせたのだろうか。
廃墟ブティック街の並ぶ痛々しい表通りを進むと向かいには「軽井沢ロイヤルホテル」と書かれた古いホテルの建物がそのまま残っている。しかしここも例外なく廃墟である。
現役時代には沢山の金持ち連中がこのホテルに泊まっていたのだろうか。我々は意図せず南軽井沢の地で日本の栄枯盛衰の形を見た。ところで「あさま山荘」はどこにあるのだろう。ひとまず別荘地の奥へと車を走らせる事にする。