どうやら唐津高島イコール「宝くじ」となったのは、昔この島にある宝当神社にお参りして高額当選した人が居たらしく、その噂が1990年代から徐々に広まり今に続いているという。んで、島の船着場から既にこのような観光客向けのゲンキンな店が並んでいるという始末。
一番目立つ所にある店「宝当海の駅」に足を踏み入れる。「ゴッドハンドの開運かあちゃんの店です!」などとドン・キホーテのゴテゴテな内装を彷彿とさせる黄色と赤の派手派手しい看板が掲げられている。宝くじの当選券などが一緒に飾られている棚には1個3000円の開運グッズらしき巾着袋が有難そうに売られているのだ。なんじゃこりゃ。
これ見よがしに置かれた「3億円分の札束」も来島する観光客の射幸心をやけに煽ろうとしてくる。しかしよく見たら見慣れた一万円札の見本ではなく、この間偽札騒動で使われたような「見本銀行券 百万円札」の束だった。
もう一軒、島民向けに食料品や酒などを販売している地元の「野崎酒店」。やはりここも野崎さんだったか…宝当神社に向かう道すがらにあるんですが…
店の玄関先にはまるでパチンコ屋の開店を待つかのようにそこらの野良猫さん達が今か今かと待ち続けていたのである。何なんだここは。宮城の田代島もそうだったけど離島は猫の天敵になるものが居ませんからね。彼らの独壇場ですわね。
後の開店時刻に店にお邪魔すると…店の中にも猫が沢山…さっきから小便っぽい異臭が漂うんですけど、食料品店なのに大丈夫なんでしょうか。まあ、島の基準では問題ないようです。
さらに店の玄関横もまた大量の張り紙が…ここでも謎の開運グッズ「宝当黄金袋」を販売しているようだ。「高額当選しました」と手描きで書いてあるだけの紙のコピーとか、いつかの新聞記事の切り抜きで立ったまま両前足を合わせたポーズを取る「お祈り猫」の写真だとか色々と胡散臭げで笑える。
こうした店が狭い高島の中に数店舗ある。うち一軒は宝くじの販売も行っているようだ。ここも「宝当の館」とまたストレートな店名の店舗である。宝くじやtotoの看板が店の前に並んでいて、またしても来島者の射幸心を煽る。
どうでもいいがこの店の前にはオリジナルソング「祝!唐津高島宝当音頭」とやらの歌詞が書かれた脳天気な看板が張り出されているんですが…一番から五番までよく歌詞考えたなとは思うけど作詞者の名前もやはり「野崎さん」でした。
しまいには「不景気(麸ケーキ)をブッ飛ばそう」とまでオヤジギャグ全開で来られるものでいちいち反応に困ってしまうのである。本当に宝くじが当たるかどうかは知らんがめでたい気分になる島であるのは間違いないようだ。
この唐津市高島も「宝くじで島おこし」という変な特徴が無ければ、今後ますます高齢化・過疎化していくだけの地方の離島の一つでしかない。集落の一角で島民の婆さんに声を掛けられて、しばらく立ち話に付き合った。子供はやはり島を離れて、東京に引っ越してしまったまま帰ってこないらしい。
あとは保育所と診療所が島にあるくらいで、集落には空き家となった家屋も点々と見かけられた。島には小学校はあるが生徒数は僅か8人、中学校はとっくに廃校となり島の中学生は船で本土側にある学校に通っているそうだ。この高島、将来も変わらず宝くじと開運グッズを売り続けていられるのだろうか、一抹の不安を覚えつつ島を離れた。