金沢の観光地「にし茶屋街」に隣接する金沢市増泉一丁目界隈。昼間は普通の住宅地にスナックの店舗がちらほら見かけられる程の場所だが、昔から遊郭があり、現役でちょんの間が続いているという話もある、歴史的に金沢随一のピンクゾーンとして名を上げてきた土地だ。
西茶屋検番事務所の正面から続く路地を少し歩くとスナック街が姿を表す。とはいえまだ昼間なのか人の姿を見かける事はない。やはり夜にならないと駄目だろうか。
まるでアパートの一室の玄関のような簡素な作りのスナック店舗。無駄に手の込んだ演出などはしない主義なのだろうか、石坂のスナック街はおおよそ普通の一軒家やアパート然とした作りの店が多い。
スナックばかりとは限らず路地には本当のアパートだってある。しかし外観の鉄筋の錆具合が凄いな。雨や雪が多い北陸の気候がそうさせるのか。こういう単身用アパートを見るとつい嬢が住み込んでいるのかと勘繰ってしまう。
さらに進むとT字路上に開けた空間が現れる。近隣のアパートの駐車場になっているようだが、その脇を見るとかなり趣深いスナックの建物がある。「石坂」はここからだんだん元遊郭らしい貫禄を顕にしていくのである。
角を曲がり先ほど辿った路地の一本南側に入る。角のスナックだらけの建物には「第三飲食街」の看板があった。だがここにもひと気がない。
中を覗き込んでみたが、スナックの玄関先を一目見ただけで既に廃業したままになっているのが分かる。今の「石坂」は寂れるに任された状態だと話には聞いていたが、やはり確かなようだ。
その近くにも廃業したようなスナックの跡がそのまま残されていた。入口が奥まっている所がまたまた怪しい。
その先の路地にはいかにも元遊郭な感じの古い長屋が連なる。概ね普通の住宅地になってしまっているようだ。
両側が取り壊され一軒だけ孤立した第三飲食街向かいの長屋。かなりくたびれた印象は拭えないが、2階部分の窓の不自然な大きさなどは妓楼の作りを思わせる。
路地に連なる長屋のうちの一軒も普通の民家になってはいるが、玄関脇には緑と黄色の市松模様のタイル。これはもう確定でしょう。
さらに足元を見ると3Dチックな模様に三色タイルが嵌めこまれていた。何気ない場所にも芸術的なセンスが光る。
この民家の玄関脇にも見えづらいが遊郭特有の三色タイル。戦後のカフェー街的なデザインが多いが、この一画も売防法施行前までは「現役」だったのだろう。
歯抜けになった向かいの長屋。もっと保存状態が良ければ「にし茶屋街」のような美観を保てていただろうに、こっち側にあるだけでアンタッチャブルにて放置プレイ状態だもんな。
ここもやはり個人宅だが玄関上には遊郭時代の店の名前がくっきり跡に残っているのが確認出来る。香花楼?
というわけで、相当くたびれているが趣きはかなり残されている「第三飲食街」並びの遊郭跡。だが金沢最強の赤線地帯「石坂」の本気はこれから。