エレベーター向かいに設置された「駅前ビル店舗住宅案内図」というのを見て欲しい。ここは店舗であると共に住宅でもあった。2階から4階の緑で示された部分は個人宅となっていた。店舗部分も飲食店や旅行代理店以外はサラ金業者ばかりだったり、個室ビデオ店なんかもあった。それからスナックも多数あり。なんというか大阪駅前ビルやニュー新橋ビルなんかに通ずるいかがわしさだ。
この高岡駅前ビルができた昭和36(1961)年というのはまだ東京五輪の前にあたる。当時の感覚で言えば最先端のシャレオツビルだった建物であるに違いない。新幹線すら出来てなかった時代の産物だが、時代が変わり、今度は北陸にも新幹線がやってくる。東京から富山は片道最短2時間7分で繋がる事になる。
2階から上の住人の日常生活とはいかなるものだったのか、住人が部屋を明け渡して居なくなった今ではその様子を知る事はできない。既に壁や天井などに崩壊の兆候が見られる。夜な夜な地元のヤンキーがたむろってたりするかも知れない。あんまりそういうイメージないんですけどね富山って。
2階へ登ってみた。共用廊下の所まではなんとか立ち入れる状態だが既に空き家ばかりで誰も居ないしあんまりウロウロしすぎるのもアレなので戻ります。
どうせ来たなら地下も見てみたい気がするのだが、残念ながら地下へ降りる階段は完全にベニヤ板で封鎖されていてどこから行く事も出来ない。
特徴的だった螺旋階段もこの通り完全にカバーされてしまっていて人の立ち入りを拒んでいる。
改めて2階部分から階下に積まれたゴミ溜めを眺めて「高岡駅前ビル」の見納めを終わりたい。最初で最後でしたね…切ない。もっと早く高岡に遊びに来れば良かった。ほんと。
どうでもいいけど、ギョーカイ人的な言い回しをすればトマソン的な扉があんな高い所にあるんですが、あそこから扉開けてうっかり足踏み外したら死ねますよね確実に。
高岡駅前にあるペデストリアンデッキから遠目に眺めると、高岡駅前ビルの背後にそびえる「アドニスビル」のネオン看板が何気に存在感を示していて凄い。サウナにパチンコですからね。これであとは屋上に自由の女神像でもあったらそのまんま赤羽状態ですが…昭和の駅前一等地らしい光景である。
このアドニスビルもかなり古臭さが際立っている。高岡駅前ビルとはやはり兄弟分なのだろうか。ふらふらチンピラが徘徊してそうなやさぐれた空気が濃密に漂ってはいるが、でかいパチンコ屋の看板だけがあるが店は無いっぽいし、他にある上階の店舗もやってないっぽい。
アドニスビルの名前の通り、ビルの1階には「レンタル衣装」と喫茶店が一緒になった「アドニス」という奇妙な店舗がある。喫茶店がレンタル衣装をやっているという組み合わせも珍しいけど店の前に置かれたライオンの銅像もなんだか昭和の趣味で素敵。今は亡き井の頭ホテルの匂いがしますね。やっぱりここも営業してないみたいだけど。
そんなアドニスビルを遠目から全体像で。古臭くてたまりません。高岡駅前ビルよりも高い5階建てで最上階に1800円で泊まれる「サウナプラザ」が入居していたようだ。
そしてオヤジがいかにも好みそうなナイトシアターとやらもあり。飲む打つ買うがワンセットになってるアドニスビル、さすが。ドラゴンボールだとか孫悟空だとか書いてますが高岡市民の元気玉はもうこれ以上集まりそうな気配がないですね。
何にしても入居してる店舗がパチンコ屋やサウナの他にも雀荘、スナック、それに「シミュレーション・ゴルフカフェ」なる店までが。そのうちここも高岡駅前ビル同様解体されるのかも知れない。「高岡駅前の怪しい一帯」括りで運命共同体として、真の「昭和の終わり」を共に迎えるのか。
だがこのゴルフカフェとやら…「シミュ」と「シュミ」を間違えるあたり完全にオヤジセンスである。まあゴルフ自体オヤジ趣味ですけどね。元パチンコ屋の空き店舗活性化のため2011年にオープンしたばかりの店らしいが…
…という訳で高岡駅前から「昭和の駅前風景」は跡形もなく消えていく事になりそうです。世代交代の流れは止められそうにないけど、高岡駅前にドラえもんのキャラがオブジェとして飾られているのは藤子・F・不二雄が高岡出身だかららしい。ドラえもんの声優も世代交代して同じアニメなのに訳がわからなくなるように、数年後の高岡駅前も全く別物に変わって訳がわからなくなるのだろうか。