静岡県奥大井の秘境・寸又峡温泉で起きた金嬉老事件の舞台「ふじみや旅館」の現在 (全2ページ)

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昭和の戦後犯罪史の一つに残る「日本初の劇場型犯罪」の典型例として挙げられる「金嬉老事件」をご存知だろうか。昭和43(1968)年2月20日に当時39歳だった在日韓国人二世、金嬉老が起こした事件である。静岡県清水市(当時)の歓楽街・旭町にあったクラブ「みんくす」の客席で、借金をしていた暴力団から返済を求められ面会をしていた最中、居合わせた暴力団員2名をその場で射殺、翌日には山に逃げ込んで、奥大井山中の秘境・寸又峡温泉の旅館に立てこもり、経営者や宿泊客13人を人質に88時間に渡る籠城の末逮捕された一連の事件だ。

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当時この事件は「在日韓国・朝鮮人への差別問題」をも絡めたセンセーショナルな報道となり、金嬉老への同情の声も挙がる一方で韓国でも何故か「差別と戦った英雄」などと報道される始末。金嬉老本人は「二度と日本に入国しない事」を条件に1999年に韓国に強制送還される形で仮釈放、その後の人生もオチが酷いものだが、2010年3月に釜山で死去。享年82歳だった。

静岡県川根本町 寸又峡温泉

で、我々はそんな金嬉老事件の舞台となった奥大井の秘境「寸又峡温泉」へ向かっていた。とにかく遠いんですよここ…新東名高速道路島田金谷インターから下道に降りて、山道をグネグネ片道60キロ、一時間半掛けてようやく辿り着けるという場所である。伊達に秘境とは申しません。来るのもなかなか覚悟が要る土地だ。

静岡県川根本町 寸又峡温泉

そんなこんなでようやく辿り着いた寸又峡温泉。「すまたきょう」の読みに別にいやらしい意味はなくともニヤけてしまいそうな名前だが何故このような山奥に金嬉老は逃げ延びたのか、ともかくここまで来ると奥の奥、その先は行き止まりで来た道を戻らなければ帰れない、そんな最果ての場所でもあるのだ。

静岡県川根本町 寸又峡温泉

しかし、夏場にこの土地にやってくると、これだけの山奥であるにも関わらず観光客の姿が多く、意外に車を停める場所に困る事にもなる。有料でも良いのでなるべく温泉街の本体に近い場所がいいと何気なく選んだ駐車場がちょっと変わった所だった。

静岡県川根本町 寸又峡温泉

確かに有料駐車場で、普通車500円(町営露天風呂利用の場合は300円)が必要な場所だが、無人で管理人はおらず、料金は掘っ立て小屋の前に置かれた「駐車料金箱」と書かれた廃自販機のコインを入れる穴に各々入れて支払う形式を取っている。かなり昔のダイドー自販機である。「おつりは出ません」と念を押されるのは、完全に自販機としての役目を失い、単なる料金箱となっているからだ。

静岡県川根本町 寸又峡温泉

この掘っ立て小屋の中も「奥寸又峡紹介写真展」という展示コーナーがあるようなのだが、締め切られていて中に入る事も出来ない。秘境のそのまた奥の世界、静岡県の地図を見ると南アルプスの山々に大きく突き出た超秘境じみた場所なんかがあるが、奥寸又峡や奥大井の最奥部はマジで一般人が足を踏み込めないような領域である。気になるのに見たいのに見れない写真展にモヤモヤしながら、とりあえず温泉街に出る事にする。

静岡県川根本町 寸又峡温泉

寸又峡温泉の中心部であるバス発着場の前まで降りてきた。一応ここまでは大井川鉄道の路線バスが運行していて、車が無くとも来ようと思えば来れる場所でもある。レトロな趣きのバス発着場周辺は結構多くのお土産店が連なっており川根茶やら何やら色々と売られている。

静岡県川根本町 寸又峡温泉

寸又峡温泉と大井川鉄道千頭駅とを結ぶ路線バスの運行は1日8本。片道40分、料金は880円。東海道本線の駅がある金谷から千頭までの大井川鉄道が片道1時間10分、料金が1810円必要なので、普通に来るだけでも時間と金の浪費がでかい。

静岡県川根本町 寸又峡温泉

そして実際にこんな場所までやってくると特に夏場は避暑地としては最適で、なるほど遠路はるばるやってくる観光客も多い訳だと納得。しかし温泉街特有のごちゃごちゃした風情は皆無で、ひたすら雄大な山々を拝む事になる。

静岡県川根本町 寸又峡温泉

このような山の料理を食わせる店なんかもあって、わさびそばだの鹿刺だの、のっけから食欲をそそられそうになるが、何だか観光地然としていて、いかにもな観光客が食ってるのが見えたので、まあいいやと後回しにする。

静岡県川根本町 寸又峡温泉

傍らには「林鉄大間駅」と書かれた山小屋風の駅舎があり、昭和43(1968)年まで営業していた千頭森林鉄道のものらしい。一時期は観光客を輸送していた事もあったそうだが、元々や木材運搬や電力会社の発電所やダムの管理の為に使っていたものになる。

静岡県川根本町 寸又峡温泉

寸又峡温泉を訪れる観光客がこぞって向かう先には「夢の吊橋入口」と書かれたゲートがあり、その先には募金を収集するおばちゃんが待ち構えている。とりあえずここに行くのは観光的にはお約束らしい。おばちゃんに数百円の募金を手渡し中へ。

静岡県川根本町 寸又峡温泉

おばちゃんが居るゲートから先が結構長く、途中にはアホ程涼しいトンネルまであって、こりゃまた避暑には最高なのだが、このへんまで来るとそこらじゅうから流れている湧き水もそのまま飲めるし、自然の力って凄いっすね!という訳でスイーツ女子軍団がパワースポット(笑)と有難がって来るような場所にもなっている。だいたい「夢の吊橋 パワースポット」とググると香ばしい記事がいくつも出てきますが…

静岡県川根本町 寸又峡温泉

長いトンネルを抜けた先に「夢の吊橋」とやらの入口が。完全にイカニモ観光モードなんですが金嬉老の件はどこに行った?!それどころか仲良くお手々繋いでるカップルがキャッキャ言いながら階段を降りていく光景。平和な日本の休日です。

静岡県川根本町 寸又峡温泉

長い階段を下りきった先に、その「夢の吊橋」とやらが現れる。眼下に広がるエメラルドグリーンの湖面が眩しい。人の手が及ばない秘境でしかこの色の湖に出会う事はできないだろう。うーん、これは誰がどう見てもパワースポットですね!

静岡県川根本町 寸又峡温泉

湖面からの高さ8メートル、全長90メートルの吊り橋は、一度に渡れる人数が10人までと決まっていて、見ての通り二本の板が渡されているだけの所を歩いて渡っていかなければならない。この吊り橋の真ん中で女性が恋愛成就の祈りを捧げると、願いが叶うんですって。よかったですね。最近こういう観光PR多すぎで食傷気味過ぎませんか…

静岡県川根本町 寸又峡温泉

わざわざ寸又峡くんだりまでやってきた金嬉老が決して目にしなかったであろう奥大井の秘境の絶景。遠目に見ててもカップルばかりで何とも甘ったるい秘境でしたが、そう言えば金嬉老が立てこもった旅館はどうなったのか。とっとと元の場所に戻ろう。

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新日本DEEP案内およびDEEP案内シリーズ管理人兼編集長。2007年「大阪DEEP案内」開設、2008年「東京DEEP案内」開設、2009年「日本DEEP案内」開設、2010年「世界DEEP案内」開設、2013年「新日本DEEP案内」開設。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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