青森県の超メジャー観光地は”死者に逢える場所”…下北半島の霊場「恐山」 

青森県

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恐山の境内を外れると、そこには死後の世界を思い起こさせる火山岩の広がる「地獄」へと続く。

「地獄」は火山岩が白い為か、地面の照り返しがきつく暑い。それに加えて地面から湧き上がる火山ガスが常に鼻をついていて、人によっては長時間居続けるのは厳しそうである。特に真夏だとリアルで地獄と化すだろう。事前に水分補給はしておいた方が良い。

亜硫酸ガスが常に吹き出しているという事もあるので、当然タバコや火気はご法度である。あの硫化水素の仲間だし、下手にうろつき回るとリアルで地獄に落ちる事にもなりかねない。

地獄巡りを始めると、最初の方で現れる「納骨塔」では、参拝者が故人の歯などの小骨を納めるという。東北地方では分骨の風習があるとか。ついでにお菓子などをお供え物で出す為、この付近には常にカラスがうろついている。

岩場の至る所に置かれている風車は、水子供養の為のものだ。

恐山を中心とした東北地方の民間信仰は、とりわけ若くして命を落とした子供や、水子供養が際立つ。昔の東北地方では度々飢饉に見舞われると生まれたばかりの子供を泣く泣く「間引き」することが決して少なくなかったと言われる。

地獄の各所には地蔵菩薩像が置かれ、その周囲には大量の石が積まれている。

「地獄」各所には無間地獄だの何々地獄だの、立て看板が掲げられているものの、それらについての説明書きが一切なくミステリアス。地獄巡りにお決まりの閻魔大王もいるわけではなく、ひたすら荒涼とした風景ばかりが目の前に現れる。

重罪を犯した人はこの辺に連れて来られるようです。死者の姿も鬼の姿も見る事はなかったが、見える人にはきっと何かが見えるのだろう。

硫黄が混ざる火山岩は所々変色して黄色ないし茶褐色を見せている。

死後の世界の風景とはおおよそ想像も付かないが、恐山付近の地層には金鉱床が存在しているらしく、近年になって地質学者の注目を集めているが、しかし場所が場所だけに石や砂を持ち帰ると祟りに遭うなどと言われている。

地獄巡りの小路の傍らには参拝者によって積まれた小石や小さな地蔵が大量に並べられている。

小石の中には故人であろうか、人の名前が書かれたものもある。小石やお地蔵様だけに限らず故人のものと思われる家の表札まで置かれていて、実に生々しい。

言うまでもなく、それらの一つ一つが故人への思いを馳せたものだ。有名な観光地となってしまった今でも、恐山は死者と生者が交わる地として民間信仰の拠点となっているのだ。

「地獄」の片隅に置かれた「人はみなそれぞれ悲しき過去持ち賽の河原に小石積みたり」の石碑が、東北地方に生きる人々の恐山への思いを示しているかのようだ。

身近な人の死そのものは悲しい出来事のはずだが、「悲しき過去」というのは何を前提にしているのだろうか、しばし考え込んでしまった。

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