日本三大霊場の一つ、東北の民間信仰の聖地、所謂心霊スポット、他地方の人間からも様々に語られる下北半島の霊場恐山であるが、本州の北の果てにあるという地理的に行きづらい条件も、謎めいた場所である説得力を持ち続けている。
しかし実際に恐山までやってくると拍子抜けするくらいに観光客だらけで、異界の地に足を踏み入れたというゾクゾクするような感覚には見舞われる事はない。入山料500円を受付で支払い境内へ。
連休中にやってきたこともあって観光客が非常に目立つ境内だが、その一方で供養のために参拝する地元の人々の姿も見かけられる。至る所にお地蔵様の傍らには石や風車が積まれ、独特の景色を見せる。
山門を手前にして左側に菩提寺本堂。境内の建物の中ではここが最も古いようで、他の建物はおおむね建て替えられたのか、殊の外綺麗である。
霊感といったものとは何の縁もない我々日本DEEP案内取材班だが、もっとアングラめいた雰囲気が漂っているかと勝手に想像していたものとはかなり違っていた。
菩提寺の境内に入って真正面が恐山山門。周囲は火山ガスが溢れていて常に硫黄臭い。
山門を潜った突き当たりが本尊の延命地蔵菩薩が安置されている地蔵堂がある。
恐山というとどうしてもイタコがセットでイメージに浮かび上がるものだが、イタコが居るのは7月下旬の恐山大祭か、10月初旬の秋詣りの時だけという。
イタコには盲目の女性が若い頃から弟子入りして修行を積み…という話もあるが、それも昔の話で、実際は盲目でなかったり、男性のイタコも居るそうだ。
地域ごとにイタコ組合というのがあって、恐山の夏と秋の祭りに津軽方面から十数人のイタコが「出張」して境内にテントを張るという。
恐山山門付近には数ヶ所こうした掘っ立て小屋が建っている。これらは参拝者が無料で入浴出来る温泉である。
場所が寺の境内ど真ん中だけにこんな所に温泉があるのかと思うと非常にシュールでもあるのだが、境内右側に新築された宿坊「吉祥閣」もあり、ここでも温泉があって宿泊だって出来る。
あくまで宿坊なので、決まった時間に食堂に集まって、食事は精進料理、就寝・起床時間も決められているが、場所柄にそぐわずやたら綺麗なホテルになっていて、意外に思う。
地蔵堂の左側から、所謂「地獄」と呼ばれる火山岩に覆われた岩場が広がっている。
ひたすら荒涼とした岩場が連なる「地獄」、昔からテレビ番組や寺山修司の映画「田園に死す」などでも広く知られている風景である。人々が思い描く異界、死後の世界。
振り返ると恐山菩提寺の境内が見える。所謂「地獄」と、この先に続く宇曽利湖畔の「極楽浜」はかなり広大で、ゆっくり見て回ると1時間くらいは掛かるだろうか。
死後の世界に思いを馳せるかのごとく地獄に足を踏み入れる。
もっとも周りには観光客がいっぱい居るので、それらしい雰囲気もあったものではないが…