※この物件は2013年訪問時には既に撤去されていたのを確認済。現在は見る事はできません。あしからず。写真は2011年当時のものです。
若狭海浜公園のトイレは沖縄らしく琉球瓦の屋根にコンクリート壁のあずまやのような作りをしている。そこに寄生するかのごとく巣を張るホームレス。そしてまるで蜘蛛の糸を張り巡らすようにトイレの外壁やその周辺に刻まれた電波落書きの数々が凄まじい。
電波強度があまりに強すぎるので途切れ途切れのキーワードとなっているだけで文章にもなっていないというオチ。「全国ガンバレー」というのは東日本大震災後に書きこまれたものだろうか。
どうもこの落書きの主は一日中テレビかラジオを視聴しているようで、そう考えると落書きの内容もニュースに頻出するキーワードが多いような気がする。だが「家貸3万円入金済」（原文ママ）というのは何なのか意味不明。家賃払えるだけお金あるのか？その前になぜここでホームレスやってるんだ？
非常にニュース系の文言が目立つ電波落書きの数々だが「ＷＯＲＬＤ」と書かれているのも目立つ。「愛のメッセージ」だそうです。こう見えても地球市民で博愛主義者なんでしょうか。攻撃的な文言が全く見当たらないあたり、東京羽田の電波住宅とは趣きがだいぶ違う気がする。
旅行好きな主の性格は何となく掴めてきたが「鶴岡八幡宮」をやたらリスペクトしているみたいだ。鎌倉に行ったであろう時の思い出がよっぽど記憶に残っているらしい。
とりあえず頭に思いついたキーワードは書き留めないと気が済まない性格なのかも知れません。我々は今一人の野宿生活者の脳内世界を覗いているのだ。
文字だらけだと思っていたら珍しく魚屋か何かのイラストを発見。「タイ、イワシ、人参、ダイコン、キャベツ、うなぎ、トーフ、Ａパン、ミルク、米」もしかして主の好物だろうか？イラストの両脇には「正月」。
その下の「ＯＫＩＮＡＷＡ ＭＡＮＣＯ」は内地の卑猥な意味での生殖器の名称ではなくラムサール条約湿地の漫湖の事を示しているのだろう。
ただそんな温厚そうな電波落書きの主も那覇市の行政にはご不満をお持ちのようで「ＮＡＨＡ黒サギ師」だなんて書かれていたりもする。ホームレスと公園の所有者である行政は絶えず対立関係にあるもんですからねまあ。
でもそろそろ取材班も本来の小用を済ませる為にそろそろトイレの中に入ってみることにした。男子トイレの入口部分はさらに落書き密集率が高まる。まるで来訪者に声にならない心の叫びを目にして欲しいという主の意思の現れなのだろうか。
膨大な落書き群を一周見て回ると結構重複しているキーワードが多い事に気づく。アイスクリームとトヨタ、それに銭形平次も大好きなようです。
トイレの入口の縁にもびっしり。63年断酒国会儀事堂☆チャレンジャー（原文ママ）孤独に生きるとどうしても酒に溺れがちだが、えらいねこの人！
さすがにトイレの中は大丈夫かと思っていたが甘かった。電波落書きのテリトリーは容赦なくトイレの内部にまで浸透していたのだ。言葉にならない言葉の渦。
一体いつから若狭海浜公園のトイレがこんな状態になったのか、ネット上で他の目撃談がないか探したが、2006年のブログ記事が引っかかった。公園内の木の幹に「安全☆台風くるな」と書かれていたものの写真をアップロードしたブログ記事があった。つまり最低5年前からこの場所に住み着いているのではないかと思われる。
トイレで小用を済ませている間も絶えず見せつけられるホームレスの自己主張の数々。東京も大阪も京都も584回行ったんですね。旅好きですね。
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