行こか戻ろか長崎思案橋の路地裏横丁 (1)

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遠い遠いと思いつつようやく暇を見つけて長崎まで行く事が出来た我々取材班。九州新幹線が全通して鹿児島は近くなったけどこっちはまだ感覚的には遠いよなあ…という事だがそうも言っていられない。

長崎というのは観光地で、とりあえずグラバー園とか再現した出島とか新地中華街とかお約束の観光スポットを回るような人がいっぱいやってくる場所でもあるが我々はとにかく猥雑な場所が見たいという訳で真っ先に思案橋にすっ飛んできた。繁華街のアーチ看板がこれですよ。まあハイカラですこと。伊達に鎖国時代に出島があった土地柄だけの事はある。



日本三大遊郭の一つに数えられる丸山遊郭の手前の玉帯川(現在の銅座川)に架けられていた「行こか戻ろか」で有名な思案橋、文禄元(1592)年から戦後の昭和31(1956)年に撤去されるまでの350年余、何度も世代交代しながらこの地にあった。

今では銅座川が暗渠化してしまい思案橋跡の碑があるだけだが、思案橋の地名は長崎を代表する夜の歓楽街の代名詞として現在も使われている。すぐそばに入口がある「思案橋横丁」もそう。

思案橋跡の碑が建っているのは長崎電気軌道の路面電車が走る春雨通り沿いの思案橋交差点。ここから南に入っていった所がかつての丸山遊郭なのだが、その周辺には夥しい飲食店街が形成されている。

特に春雨通りに面して連なる戦後のドサクサ風味が濃厚な長屋的横丁の風貌を呈する「長崎思案橋商店街」の存在は、我々取材班のDEEPアンテナがいの一番にビンビン反応する一画。長崎に土地勘はなかったけど、見るからにモロだろこれは。確かに一つのまとまった建物なのだが二階建てなのか三階建てなのか各自階数も高さもバラバラである。

戦後に暗渠化した銅座川というのはこの春雨通りに面する思案橋商店街の真下を通り抜けている。戦後の昭和23(1948)年、運休中の電車軌道を不法占拠した闇市が一夜にして突如出現、その後の路面電車の再開を前提とした都市計画で戦時中に建物疎開で拡幅されていた春雨通りの歩道に露店を置く市当局の計画を知った闇市業者達は一斉に土地を占領しだすなど混乱が続いた。

そこで闇市を退かせる目的で側を流れる銅座川が暗渠化されて、闇市は川の上に移り路面電車も昭和28(1953)年に元通り、全て丸く収まりましためでたしめでたしという流れらしい。その闇市の成れの果てが川の上に作られた「思案橋商店街」や「銅座市場」だというのだ。ほらやっぱり。確かに「長崎市本石灰町1番地」の航空写真を見りゃこれは一発で分かるよな。

春雨通り沿いのオンボロ長屋風味な思案橋商店街と思案橋横丁との間に伸びる路地裏空間…それっぽい名前がついた看板は見当たらないが一部では「ハモニカ横丁」と呼ばれているらしい。吉祥寺のアレと同じ名前だが戦後のドサクサ感と陰鬱な空気は数百倍こちらの方が濃い。

ハモニカ横丁とは言うものの殆どビルの裏側みたいな場所なのであんまり店っぽい店もなく古びたスナックの看板があっても既に廃業して店はやっていないというパターンが多い。たまにこうした韓国系らしき居酒屋が点在している。戦後のドサクサ物件にはお似合いのロケーション。

裏手の思案橋横丁に立ち並ぶ中華料理屋のダクトの風がまともに来て美味しそうな臭いがしたり油やドブの悪臭が漂ってきたり様々な種類の臭気が混濁している。視覚に加えて嗅覚までもあまりにカオス過ぎて脳がやられそう。あちこち油でギットギトです。

そして廃業したスナックか何か知らんが椅子が道端に不法投棄されているという始末。あまりに滅茶苦茶な光景に言葉を失う。これが長崎の一等地なのか…

ただでさえ狭い路地裏横丁、飲食店のダクトやら何やらで普段からこんな感じだが夜には従業員の原付バイクも増えてさらに狭くなる。

バイクの路地裏駐車が問題になっているのかして駐車禁止の張り紙だらけになっている箇所がある。ちょっとこれは張りすぎだと思う。日本語読めますから。

そんな素晴らしすぎるハモニカ横丁とやらの目玉は思案橋商店街組合員専用のトイレ。手書きの看板で大きく単刀直入に「トイレ」と書かれている。

トイレのドアの近くからはぶらーんと垂れ下がる昔懐かしいハエ取りリボンが…ハエだけでなく髪の毛にくっつくとエライ目に遭うトラップである。通行の際は気をつけましょう。

トイレは夜になると青い光でライトアップ、幻想的な空間へと生まれ変わります。あらやだ、稲佐山の夜景よりもこっちの方が素敵だわ。そう言ってくれるパートナーを連れて「長崎さるく」したいものですね。

残念ながらトイレは鍵が必要です。商店街加入の飲食店で鍵を借りるしか方法はない。建物の構造を見て思ったのだが、組合事務所とトイレは一緒のドアから入るんだな多分。

トイレの横からは春雨通りに出られる秘密の抜け道。またしてもゴミ捨てに関する張り紙がアホ程壁にベタベタ貼られている。管理人さんの気質がよく知れる光景でございます。大変ですね毎日。

濃厚過ぎる抜け道から春雨通りに出てきた。思わず深呼吸。長崎の底の深さをのっけから体感する羽目になった。一応標識立ってるのね「歩行者用通路」って。20時から3時までの時間限定らしい。昼間は駄目なのかよ…

雨の思案橋
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新日本DEEP案内およびDEEP案内シリーズ管理人兼編集長。2007年「大阪DEEP案内」開設、2008年「東京DEEP案内」開設、2009年「日本DEEP案内」開設、2010年「世界DEEP案内」開設、2013年「新日本DEEP案内」開設。2017年6月15日に単行本「『東京DEEP案内』が選ぶ 首都圏住みたくない街」(駒草出版)を全国発売。首都圏を中心に飛ぶような売り上げを記録し増刷決定。
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