国頭郡本部町「伊豆味ドライブイン」 – うなぎが名物、店の天井を突き破る木、謎多きレストラン

本島北部

沖縄本島北部の本部(もとぶ)半島と言えば「沖縄美ら海水族館」がある海洋博公園をはじめ今帰仁城、古宇利島などの観光名所が点在し、休日ともなると那覇方面から観光客が運転してくる「わ」ナンバーのレンタカーが大挙して押し寄せてくる土地だ。本部半島のほぼ中心部、本部町伊豆味地区には観光客に人気の沖縄そば屋「山原そば」があるが、その隣にとんでもない迷店舗が存在していた。

本部町 伊豆味ドライブイン

その店の名前は「伊豆味ドライブイン」。建物だけを見ると、荒々しく伸びきった樹木に遮られて「なんだ廃墟か」の一言で通り過ぎてしまいかねない風貌をしている。しかしこの店はこう見えてもバリバリの現役。店の玄関の隣には建物の高さの3倍近くに生長した木がそびえており、独特の存在感を放っている。隣の山原そばと間違えてここに来てしまう客も…まんざら居なくはないように思える。

本部町 伊豆味ドライブイン

沖縄ではよく見かけるコンクリートに直書きされた店名や文言、それらも伸びきった木々に遮られてよく見ないと何と書かれているか気づかない程だ。見た目通りにかなり昔からやっている店舗なのだが、沖縄では珍しく「うなぎ」の三文字が。あえてここで「うなぎ」をプッシュしている理由とはこれいかに。まあ一見の観光客ならこんな危うい店に入らず隣の山原そばで食って帰るんでしょうが、我々は敢えて危うい店に入りますよ。

本部町 伊豆味ドライブイン

外観と同様、「営業中」の札がでかでかと置かれているとは言えども、やはり入店を躊躇いそうになる玄関口。コンクリートの庇の部分に店名が直書きされているが、一部掠れて読めなくなっている。ここもそうだが、本土と較べて沖縄の古いレストランには「ドライブイン」の名称が付けられているケースが多い。アメリカ統治時代の名残りみたいなもので、ドライブインという名称自体がシャレオツだった昔のセンスが今に生きているのだ。

本部町 伊豆味ドライブイン

少し立て付けの悪い玄関扉を開けると、店内は案外広い。70代くらいのオバーが一人で店番をしていた。愛想も良くて好感。しかし昭和40年代くらいのセンスが見られる古びた店構えはともかくやたら私物が多い。商売しているのかどうか不安なので、思わずオバーに「ご飯食べたいんですが大丈夫ですかね?」なんて聞いてしまった。

本部町 伊豆味ドライブイン

店の歴史はよく分からないが、このボロさから考えても海洋博が開催されていた1975年頃から恐らくあったと思われる。きっと昔は店名通りドライブインとして繁盛していた事だろう。今は廃墟寸前の個人宅みたいになってる。店の奥は生活スペースなのか家人の洋服がぶら下がったハンガーとか靴とかが置いてあって、すこぶるアットホームな感じ。

本部町 伊豆味ドライブイン

唐突にテーブルの上に載せられた布団と蚊帳。去年ご家族に赤ちゃんが生まれたらしく、赤ちゃん用のベッドがこしらえられているようです。店内スペースの半分以上はこのような私物置き場となっており、客が座れるテーブル席は店内左側の4席しかなかった。しかもそのうち1席は雑誌置き場に。

本部町 伊豆味ドライブイン

そして店の天井をぶち抜いて生えている木。植物の力強さを感じさせられる光景である。観葉植物を置きっぱなしにしたら天井を突き破っちゃったという訳でもなく、元からこんな状態だったらしい。木がめり込んでいる接合部には、雨漏り対策を施してるっぽい。野趣に溢れ過ぎです。

本部町 伊豆味ドライブイン

他にも使われなくなったアイスクリーム用冷凍庫だの、聖書や宗教関連書籍の類が多い本棚だの、年代物のレジだの、色々気になる所も見つつ…

テーブルに置かれたメニュー表を見ると、店の表にも書かれていた「伊豆味そば」はともかく「うなぎ定食 1500円」「うなぎセット 1000円」「まむしセット 1000円」「うな重 800円」「うな丼 600円」「ちらし風うな丼 500円」とうなぎ系メニューが6種類もある。うなぎセットとまむしセットの違いがよく分からないが後は載せられるうなぎの量が値段の違いに反映されているのか…

…と思いつつも一番安い「ちらし風うな丼」をオーダーしようとすると「うなぎはほんの少しだけ、あとはきゅうりしか載ってないから、おすすめしません」などと返されてしまう。まあ良い。ここは一番高い「うなぎ定食」にしてみるか。

本部町 伊豆味ドライブイン

注文を聞いたオバーは早速厨房の中に入って調理開始。店内をうろうろしながら10分くらい待ったら出て来ました。これが伊豆味ドライブイン最高額メニュー「うなぎ定食」(1500円)。

病院食のプレートみたいな皿に、どう見てもアンギラ種の冷凍ものだろうと思えるうなぎの蒲焼が二切れ載っているのだが、オバーが一人でやっているんだもの、最初から本格炭火焼のそれは期待していなかった。食べてるうちにうなぎの皮が風呂の後のふやけたサロンパスのようにペロンと剥がれてきて、アンギラ種らしさを実感できる。

付け合わせにタレの乗ったご飯、フーチバーにサウザンドレッシングが掛かったもの、きゅうりの浅漬け、沖縄そばが少し入った汁物、それに何故か小さめの照り焼きチキン。お味の程は想像にお任せします。そんな事より店内の雰囲気を楽しむだけでお腹いっぱいだ。

ちなみにうなぎではなく「そばだけ食べたい」と言うと店主に「隣の山原そばの方が美味しいから」とあっさり勧められてしまうそうです(笑)

本部町 伊豆味ドライブイン

ついでなのでトイレもお借りしてみた。店内のトイレも男女別に2つあったようだが、1つは故障したまま使われていないようでドアに「故障」と紙が貼り付けられ封鎖。今後も修理するつもりはないのだろう。用を足したくなったら女性客の方も男性用トイレでどうぞ。

本部町 伊豆味ドライブイン

男性用トイレは戦後沖縄庶民の生活様式を垣間見せる開放的なレイアウト。大小2つの便器が並んでいて和式便座に段差も設けられておりません。掃除しやすそう。

ちなみに食事と会計を済ませた後、店のオバーに何故か板チョコをお土産にもらってしまった。板チョコ美味しかったです。

伊豆味ドライブイン

昼総合点★★★☆☆ 3.0

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