激渋過ぎるナワテ横丁…信州の城下町「松本」のレトロな街並みを堪能する

長野県

続いて訪れたのは長野県下第二の都市、城下町松本市である。観光地としても有名な国宝松本城を中心とした歴史ある城下町だけに長野市との対立が強い訳だが、もともと長野県は昔の県北部の長野県と松本などの県南部の筑摩県に分かれていた事もあって、同じ信州でも文化や風土が少し違うようだ。

ひとまず松本に来たら松本城を拝まにゃならんだろうという事でやってきた訳だが、さすが現存十二天守の一つだけあって風格ある城郭が素晴らしいが、それはあくまで「つかみ」。今回松本に来た目的は、松本城周辺にあるレトロでバラックな街並みと、あの事件の舞台を訪れる為だった。

松本城の見物は観光客に任せておくとして我々はとっとと城の外をうろつき始めた。城下町松本はとにかく城の周りに一通りのものが揃っている。

城のすぐ東側に松本市役所庁舎がデーンと立ちはだかっている。平成の大合併で岐阜県飛騨地方と接する上高地だの北アルプス一帯まで市域に含めてしまったものだから広大な面積を持つ市に変わってしまった。

そんな松本市役所の庁舎裏手の城のお堀の上に、ちょっと風変わりな料理屋の建物がある。「割烹かき船」という老舗の牡蠣料理屋なのだが…

建物全体がなんと堀の上に浮いているのだ。なんか凄い事になっているがさすがに地元では有名な店らしく、約70年前に広島の船大工がこしらえたという屋形船がそのまま料理屋になっているというものだ。

玄関口は小さいながらもご立派な唐破風があって風情を醸し出している。さすがに屋形船みたいに動き出すような事もないらしく艀は固定されている。朝早いので店も開いていなかったが市役所にも近いので昼飯時には公務員な方々のランチタイムに重宝がられている事だろう。

「かき船」の前をずーっと下っていくと、上土(あげつち)通りと呼ばれている一角に至る。この付近は特に戦前から残るレトロ建築が多い。

上土通りの入口部分にはこれまたレトロなアーチが残っているのが見えるが骨組みだけになってしまっていた。傍らの「上土シネマ」は大正6(1917)年からおよそ90年間に渡って続いてきた老舗映画館だったが2008年秋に閉鎖してしまった(→詳細

通りに面する松本市下町会館。元々は老朽化で解体されるところだったが一転保存される事になり曳き家で今の場所に移転した後ファサード部に補強工事を行い現在に至っている。建物は昭和初期のもの。

下町会館を西へ入ると明治時代創業の老舗「ホテル花月」があってその向かいにもずらりと年季の入った建物が並んでいる。

看板建築風味なコンクリートのファサードが際立つ2階建ての家屋、一階部分はスナック&喫茶でございました。玄関が奥まった所にあってちと怪しげ。

他にも上土通り付近には戦前の名残りを留める建物が随所に残っている。どれも健全な使われ方をしているので、ああレトロだなあ、と感心しているだけだが、まあこれはこれで風情があって良い。

向かいの路地の角にもレンガ塀が際立つ和洋折衷風味の2階建てが鎮座している。明治21(1888)年に建てられた「山崎歯科医院」。築120年以上の古株である。

上土通り周辺には和洋折衷レトロ建築ばかりでなく昔ながらのごく普通の長屋も残っている。もう見るからにボロボロな感じだが1階が商店、2階は住居になっている模様。

さらに料亭と思しき大型建築物も。立派だなあと感心しながら写真だけ撮って、屋号を確かめるのを忘れていた。ともかくこの界隈はレトロ物件の宝庫でございます。これだけ戦前建築が残っているのも松本市自体が戦災に遭わなかった事が要因。

そんな街の至る所から湧き水がドバドバ出ている。北アルプス連峰から長年に渡って滲み出てきた山の恵み。この自然環境に加えて歴史のある街並みもあって観光地として名高い松本だが、今のところこの街の表の顔しか見ていない訳で、もうちょっと突っ込んでみないとね。

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