復興が進む被災地・石巻市街地2012

東日本大震災によって甚大な被害を受けた宮城県石巻市。テレビ映りばかりを重視するマスメディアは海岸沿いの門脇地区の悲惨な状況ばかりを映したがるが、じゃあ実際中心市街地はどこまで復旧したのか状況が気になっていたのだ。

厳密に石巻にはこれまで2回来た事になる。1回目は震災4ヶ月後、仙台から仙石線を使って来るも途中の松島海岸駅から終点の石巻駅までごっそり代行バスとなっていたので片道2時間以上も掛かっていた。現在も仙石線は一部不通区間(高城町-陸前小野)が残っているものの、仙台駅から出ている高速バスの方が本数も多く便利なのでこれを使った方が良い。



震災1年4ヶ月後となる2回目の訪問では、地震と津波で滅茶苦茶になっていた中心市街地はかなり片付いていた。旧北上川に架かる内海橋の手前あたりの空き地にプレハブ建ての復興商店街「石巻まちなか復興マルシェ」が出来ていた。

石巻ではおなじみの仮面ライダー像も復興商店街に鎮座。こういう商店街が出来るだけでも気分的にかなり明るくなる。申し訳程度に屋台料理の店や喫茶店が軒を連ねているだけだが、あるとないとでは印象がかなり変わるよな。

復興商店街の真ん前を流れる旧北上川の中州地帯、中瀬地区に建つ石ノ森萬画館は「マンガの街」として街おこしをしている石巻市のシンボル的施設。津波で被災して長らく営業を休止していたのだが、2012年7月から本格的に復旧工事が始まり今年度中には再開させる予定でいるそうだ。改修工事に7億5千万円掛かる事から市民の間では意見が別れているそうだが…

この中瀬地区という場所は川の中州にあり、その形がニューヨークのマンハッタンに似てる事から生前の石ノ森章太郎が「マンガッタン計画」と危ないダジャレを一発かました結果ここに萬画館が建っちゃったらしい。その地理条件のせいで萬画館も津波をモロに被ってしまいそれ以外の建物はほぼ全て津波に流されてしまっている。

内海橋から石巻駅前へ通ずる立町通りを歩くとひときわ目立つレトロモダン建築「観慶丸商店」が現れる。石巻初の百貨店として昭和5(1930)年に建設された。震災前まで陶器屋だったが店舗のあった1階部分は津波に流されてしまい店を閉めたままになっている。

さすが昭和初期らしいモダンな作りだが特色すべきは豪勢なタイル貼りだ。壁にふんだんに盛り込まれた陶板タイルにもあるように廻船問屋から陶器商人になった須田家の商店として建てられたもの。

しかし街がこれだけの大災害を蒙っても見た目どこも崩れてないしさぞかし丈夫に作られたものだ。また有効活用されると良いのだが…と思った訳だが今年8月から1階店内が修復されて地元のNPO法人が復興ショップをオープンしたそうな。

観慶丸商店の向かいの角に建つ「第2SSビル」も負けずにレトロっぷりを見せつけている。こっちは自民党の事務所になってるけどな。ここも津波をまともに被ったはずだが外観は無傷。昔の建物の方が丈夫だよな。

アイトピア通りにある社福協ビルの前には著名な漫画家の直筆イラストが描かれたプレートがこれでもかと展示されている。マンガの街で街おこしをする石巻市の「石巻マンガロード」の一環。

そこには赤塚不二夫、水木しげる、松本零士、モンキー・パンチといった漫画界の錚々たる面々が連なる。だが展示板の右下隅に小さく「この展示物はパチンコ大将軍のお客様の募玉から寄贈させていただきました。」と書かれているのを見て脱力。

アイトピア通りをさらに進むと広小路を跨ぎその南側は坂下通りを名前を変える。こっちの方が盛り場に近く食料品店や飲食店街が中心になる。以前は津波でやられた建物があちこち残っていたが随分整理された。

坂下通りの脇道に入ると古い旅館が何軒か見られるが津波でやられて休業している所が多い。気仙屋旅館と書かれた看板が路地の先に見える。

年季の入った佇まいの気仙屋旅館は1階部分が浸水してベニヤ板で玄関口を塞いでいる。同じ旅館が経営する寿司屋は高台の日和が丘に仮設店舗で移転営業再開しているが旅館の方は今しばらく再開に時間が掛かりそう。

旅館の左隣の家屋。見た限りでは戦前からありそうな建物だが浸水した1階部分は玄関も開けっ放し。

坂下通りの西側に並行することぶき町商店街はさらに歓楽街色が強まる。スナックビルなんかもちらほら建っているのだが、やはりここにも津波が来ている。閉鎖したままの店舗もまだまだ多い。

飲食店の壁に津波の到達水位がマジックペンで引かれていた。この場所はかなり海から遠ざかるはずだが、それでも高さ2メートル半くらいの所まで来たようだ。旧北上川を津波が遡上してきたので川の両岸は結構上流までやられている。

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